不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Il fiocco

2004-06-03 23:50:02 | 日記・エッセイ・コラム
イタリアの都市部ではたいていのおうちが「集合住宅」。
建物の入り口に大扉があって、
その先の各階に各家の扉がずらりと並びます。
我が家の入っている建物の大扉に
昨日大きなピンク色のリボンが取り付けられました。
そして今日は階下(二階)の、ある扉にもピンクのリボン。

イタリアでは子供が生まれたときに
近隣の皆さんに生誕をそれとなくお知らせするために
男の子ならブルーの、女の子ならピンクのリボンを
それぞれ自宅の扉につける習慣があります。
もちろんそのために、
そういうリボンを売って商売にしている人だっているわけです。

我が家の階下でも女の子が生まれたのですね。
そのおうちは私がここに暮らし始めた9年前には
気むずかしいおばあちゃんが一人で暮らしていました。
そのおばあちゃんが昨年の夏に亡くなり、
娘さんがやってきて部屋の片づけをしたのは昨年暮れ。
表面的にはその後しばらくは何の動きもなかったのですが
そのおうちは売りに出されていたのですね。
今年春頃から改装工事が始まって
つい先日工事が完了したばかり。
そこへ若い夫婦が越してきたなと思ったら昨日のリボン。
おめでたです。

昨日には大扉にだけ派手な大きなリボンがついていて
さて、どこで子供が生まれたのかなと思ったのです。
私もこの家に暮らして9年にもなり、
各フロアのどこに誰が住んでいるのか
十分把握しているつもりでしたが
最近出産を間近に控えた人がいたという記憶は
特になかったのです。
思い巡らせて
最近新しく引っ越してきた世帯が二つあったので
そのいずれかだろうと思っていたら
今朝には2階のそのおうちの扉にリボンを発見。
そちらには生まれた子供の名前も記されていました。
きっと名前が決まってから
名前入りのリボンを取り付けようと思っていたのでしょうね。

人間の営みって不思議だなぁと思います。
もちろん、昨年までそこにいたおばあちゃんも
今そこに越してきた若夫婦も私にとっては他人ですが
まったく無関係な私の周りで
命の新旧交代が繰り広げられているというのは
なんだかとても神秘的な気がしたのでした。