Akatsuki庵

日々と向き合って

能と樂茶碗

2018年05月30日 00時30分15秒 | 美術館・博物館etc.
★楽美術館 サイト
 『開館40周年記念特別展 能と樂茶碗 幽玄と侘び ? 形の奥にある美意識』
 ※6月24日(日)まで

楽家のお茶碗につけられている銘はお能の演目に因むものも多いようだ。

今回はそういうお茶碗を集めて、合間に能面も展示して、雰囲気を演出した~という感じ。

能楽については詳しくないので、感覚的な感想しか書けないと思うので、そこはご了承のほどを

まず、個人蔵の展示品が多かった。
だから、いつもの歴代ごとの特徴が掴みにくかったかなぁ。

道入の黒楽茶碗「唐衣」はやっぱノンコウの作だなぁと思ったけど。

長次郎の赤楽茶碗「道明寺」はナルホドなとナットクする形(フォルム)。

口造の反り方が梵鐘のそれと似ている。
想像でお茶碗を伏せてみると、確かに能「道明寺」で清姫の亡霊が鐘の下に飛び込んで、
再び鐘が上がった時には鬼女に返信するとゆ~あの場面が思い出される。

伝説では大蛇となった清姫が鐘に巻き付いて摩擦で鐘が熱で真っ赤になって、
大蛇も中に隠れていた安珍も焼け死んでしまう。
その場面も浮かんでくるような、オドロオドロしいほどの、暗い赤。

いずれも個人蔵。
一期一会の鑑賞。

道入の黒楽茶碗「須磨」と一入の赤楽茶碗「明石」が一対で保管されてきたという説明←ともに個人蔵
左入の黒楽茶碗「姨捨黒」と了入の赤楽茶碗「姨捨」の対比展示も興味深かった。

第2展示室が面白かった。
惺入(せいにゅう)作の翁面。
紐とかもろもろ他の千家十職とのコラボされている。
でも、そもそも重そう。この面をつけて舞った能楽師さんは存在するのだろうか。

了入、旦入、慶入の式三番叟茶碗。
了入の喜寿のお祝いに3人で造ったそうだ。(天保3年=1832年)

77歳の了入は白楽茶碗。熟練した感じ。(1756-1834)
了入より39歳若い旦入は黒楽茶碗。38歳、当代の吉左衛門として脂がのった頃。(1795-1854)
慶入はまだ15歳。もう養子に入っていたんだぁ。初々しい赤楽茶碗。

9代、10代、11代が重なって作陶活動を行った時期があったというのが純粋に驚いた。
(祖父、父、子だから当然と言えば当然なんだけど)

より技巧的な作風が目立つ慶入の若々しい茶碗が珍しかったためか、
やたら慶入が気になった。

生きたのは1817年~1902年。
11歳で養子になり、25歳で旦入の娘と結婚。

弘入が生まれたのが1857年だから、40歳でようやく跡取り誕生。(弘入 1857-1932)

慶入が「吉左衛門」を名乗ったのは1849年~1871年の22年間。
32歳で襲名し、54歳で14歳の息子に跡を譲って、85歳で亡くなるまで31年間が「慶入」。

結果論だけど、現役より隠居生活の方がかなり長い。
隠居として、のびのびと造ったからあぁなるのかしら?
とか思った。

来年、15代の吉左衛門さんは長男の篤人に代を譲るとのこと。
16代吉左衛門の誕生だ。

そして、15代は「○入」となる。○に何が入るのかが楽しみ。
来年は年号も変わるしね。

御当代は1949年生まれ、来年は70歳となるからその区切りで代替わりするのかも。
(いつまでも、お若いと思っていたけれど、もう古希でしたかぁ)

隠居して、また作風が変わるのかしら? それも楽しみ。

そして、16代吉左衛門さんの活躍も楽しみだ。



★楽美術館バックナンバーリスト
 2018年1月 『開館40周年 樂美術館 新春セレクション』
 2017年11月 『名碗 ロシアを旅した樂 樂美術館版 エルミタージュ、プーシキン美術館帰国展』 
 2017年7月 『楽って何だろう』
 2017年4月 『茶碗の結ぶ「縁」』
 2017年1月 『茶のために生まれた「樂」という、うつわ展。』
 2016年10月 『三代 樂道入・ノンカウ展』
 2016年6月 『樂歴代~長次郎と14人の吉左衞門~』
 2016年1月 『樂歴代 優しいすがた』
 2015年10月 『本阿弥光悦 光悦ふり・様式と展開』 
 2015年3月 『樂歴代 装飾への荷担・抑制と解放』
 2014年12月 特別展・宗入生誕350年 パート2『初源への視線 樂家五代宗入と三代道入、四代一入、九代了入、十五代吉左衞門』
 2014年9月 『元禄を駆け抜けた雁金屋の従兄弟ども 「樂家五代宗入と尾形乾山」』
 2014年7月 『親子で見る展覧会「シリーズ 樂ってなんだろう」―手捏ねと轆轤制作―』
 2014年5月 『定本 樂歴代』
 2014年2月 『樂歴代 干支・動物たちの新春 日常の風物、いろいろな物語、干支、吉祥の動物たち』
 2013年10月 『利休/少庵/元伯/千家の時代 と長谷川等伯「松林架橋図襖」修復完成記念特別展示』
 2013年3月 『楽歴代名品展 楽家歴代が手本としてきた伝来の茶碗』
 2013年1月 『楽歴代 春節会』(第二、第三展示室)
 2013年1月 『楽歴代 春節会』(第一展示室)
 2012年10月『工芸 肌をめでる。樂茶碗の陶肌 茶の湯釜の鉄肌 一閑・宗哲の漆肌』 
 2012年8月 『季節を感じよう!! 夏祭りと茶の湯』
 2012年3月 『樂歴代の名品 秘蔵の長次郎を見る』
 2012年2月 『京の粋 樂家初春のよそおい』
 2011年10月 『樂と永楽そして仁清 京の陶家 「侘と雅」の系譜』
 2011年8月 「樂焼のルーツは、なんと! カラフルな中国の焼き物」
 2011年5月 「樂美術館コレクション-樂歴代とその周縁」
 2011年2月 「特別展樂吉左衞門還暦記念� 個展「天問」以後今日まで」

 2010年11月 『楽吉左衛門還暦記念展』
 2010年5月 春季特別展『楽歴代展』
 2009年11月 重要文化財新指定記念特別展『長次郎二彩獅子像+勢揃い京の焼き物 侘と雅』
 2009年8月 「『楽焼のはじまり、そして今』親子で見る展覧会/シリーズ「楽ってなんだろう」
 2009年5月 春期特別展『樂歴代』 
 2008年10月 開館30周年記念特別展『長谷川等伯・雲谷等益 山水花鳥図襖&樂美術館 吉左衞門セレクション』
 2008年8月「楽茶碗を焼く」
 2008年5月「楽家の系譜」
 2008年3月「動物の意匠」
 2007年11月「元伯宗旦」

 2017年4月 『茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術』 東京国立近代美術館
 2017年1月a> 『茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術』 京都国立近代美術館
 2016年7月 『吉左衞門X 樂吉左衞門 樂篤人 樂雅臣  ― 初めての、そして最後の親子展 ―』 佐川美術館
 2010年11月 特別展『千家十職 楽家の茶碗-極められた赤と黒の美-』 表千家北山会館
 2006年9月 「赤と黒の芸術 楽茶碗」(三井記念美術館)
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