文化の日を含む三連休は悪天のスタート。
台風21号から変わった低気圧の影響で西日本は新幹線が一時運転見合わせになるほどの大雨に。
そんな雲行が心配される中、午前中に日本橋三越本店に行ってきた。
久しぶりの美術特選画廊。
楽家十六代 楽吉左衛門展。
ご当代になってからの個展は2回目で三越で開くのは初めてだそうな。
ちなみに襲名記念の個展が日本橋高島屋で3年前の今頃の時期。→当時のブログ。
あの時はコロナ禍の最終にもかかわらず、賑やかなで混み具合がすごかったので、
それを思うと今回は気が進まなかった。でも、めったにない機会だし!と気持ちを押し出して会場へ。
エレベーターを降りた途端にずらっと並ぶ胡蝶蘭にビビった。
(茶の湯に見識のある芸能関係の方を始めとする著名人からのお祝い花)
その分、画廊の入り口はシックな感じ。
内部も黒くて細い紐状のバックカーテンの前に照明を落として、
右側に黒楽茶碗、中央に灰色の今焼茶碗、左側に赤楽茶碗がケースなしに展示されていた。
もっとも茶碗を置いてある台の前には「これ以上は立ち入り禁止」の足止めが設置されていた。
雰囲気がね、京都の楽美術館ととても似ていて落ち着いて鑑賞できた。
(雨の影響なのか、土曜日の午前中だというのに来場者が少なくて助かった)
動線的に黒楽茶碗から鑑賞し始めた。
パッと感じた印象は「釉薬の色合いが四代・一入さんと似ている」。
黒赤い独特な黒い釉薬は一入の茶碗で何度か拝見した。
一入は利休没後から100年後に活躍したので、利休回帰というのか、形の上で利休方の筒状の作品がよくあるけど、
そこは違うかな。
正面に白い釉薬で模様を描いたデザイン性は三代・道入さんぽいし、
ぽってりした釉薬は十四代・覚入さんぽくもある。
特に赤楽茶碗の雰囲気は覚入さん、それから八代・得入さんの優しい感じもあるように感じた。
形はいろいろ冒険しているというか、試行錯誤しているようだけど、先代の直入さんほどのアバンギャルドさはない。
でも、直入さんの十五代襲名からわりかし初期の作品である梨花っぽさを感じさせる形の茶碗もあった。
不思議だったのはザラっとしたキメが粗い灰色の釉薬で焼かれた「今焼茶碗」。
灰色は藁で使ったのだろうか。
直入さんがフランスの土で焼いた楽茶碗を発表したことがあるけれど、それと共通するような焼成のような。
直入さんの場合、焼貫で形が独特の、ほんと「どこに口つけて飲めばいいの?」という形で
もはや茶碗という用途では考えないほうが正解なような感じだったけど、
ご当代の灰色の茶碗は灰色のザラっぽさは「ん?」だけど、形はちゃんと利休形の筒型茶碗で
そこのアンバランスさ?が面白いなぁと思った。
並んでいるのは全て茶碗で点数も全部で30点くらい?(多くても50点ぐらいだったような)
ほぼ全てが売約済みか抽選待ち(赤か黄のシールがプレートに貼られていた)
そりゃそうだよなぁ。ご祝儀だもんねぇ。
値段こそついてないものの、それなりなんだろうなぁ。
でも、これから値段はどんどん上がっていくんだろうねぇ。
私には関係ないけど。
この会場にいる茶碗たちは買い手が決まっていて、それぞれに納まっていく。
本当に一期一会の邂逅。
でも、ハナから図録を買えるとは思っていなかったし、買いたいとも思わなかった。
一つ一つの茶碗は鑑賞しても覚えるのはムリだ。
この時期の当代の作風はこんな感じとざっくり印象を焼き付ければいい。
5年、10年、もっと歳を重ねれば作風は自ずと変わってくる。
その時に楽美術館でその過程が理解できたら嬉しいナ。
てなことで。