融通無碍なる留学生活

~豪に入っては豪に従います~

ピアノと脱力

2007年07月19日 | 音楽

長年培ってきたもの、これが「正しい」のだと思って突き詰めてきたものが、「けっこう違うからシフトしましょうね」ということになって、あらまぁどうしましょう、大変、でもシフト先の方が世界が深くて楽しそう・・・ってなってます。


津山にあるピアノ工房アムズの松岡さんから、ドイツ製などの「よく鳴るピアノ」をいかように弾くかというお話を伺った。指を高く上げて、一音一音しっかり弾きましょう、手は卵を包むように・・・とかいう戦後ピアノ教育の「フォーム」の作り方は、ある種の神話に過ぎなくて、それは「よく鳴るピアノ」にとっては甚だ迷惑、壊れちゃうし、第一うるさいのだよ、と教わった。

「よく鳴るピアノ」で、うるさくなく甘い音が出せるようになることは、ものすごい勢いで力を抜かなきゃならないのだと。だって、すぐにスコーンと鳴っちゃって、あっという間に「うるさく」なるから。
とある「よく鳴るピアノ」のオーナーからも、弾くたびに「脱力せよ~」と再三言われてはおったのですけど、どうもピンと来てなかったし、わかるけどわかんない・・・みたいな。5歳から刷り込まれ、二十歳くらいまでの「ピアノ道」的苦難の課程で身につけたフォームは、精神的にも容易に崩れないやっかいなもの、みたいですよ。

「理屈からすると、よく鳴るピアノで脱力することに慣れちゃったら、例えば一般家庭用のアップライトピアノなんかを弾こうとするときに、力が入らなくてそれこそ鳴らせなくなっちゃうのでは?」という質問に、松岡さんはもの凄い勢いで「そんなことないです」と。「いいピアノでいい音を出せるようになることは、個々のピアノに対して柔軟に自分のタッチを合わせられるようなるということ。どんなに鳴らないピアノでも、逆にいい音が出せるようになりますよ。ヨーロッパの一流ピアニストがなぜ一流かといえば、彼らはどのピアノにも自分を調整して合わせることができるから」なのだと。まじっすか??でも力を完全に抜くって、難しいし、なんかちょっと勇気がいる・・・。


とにかく自分の耳本位に弾くということ。
自分がピアノを弾こうとするのでなくて、
ピアノの音そのものに導かれるように・・・。


「だまされたと思ってやってみる」というと、ピアノのオーナー氏は語る。「だまされてないっ。いいピアノは出せる音のレンジが広いんだから、それでppを出す訓練をよ~くしておけば、脱力の仕方わかるよ」だって。

なるほどねぇ。
がんばらないように工夫しないと。
って、ここ十年くらいずっと、
このテーマを掲げて生きてるような気もする(笑)。