融通無碍なる留学生活

~豪に入っては豪に従います~

指揮者 海老原光さん のこと

2007年07月08日 | 音楽

昼間のアマオケ公演とは思えない、もの凄い熱気の演奏会でした。

練馬交響楽団の定期演奏会(於 練馬文化ホール)、
指揮は海老原光氏。
曲目は
リスト/交響詩「レ・プレリュード」
R.シュトラウス/交響詩「死と変容」
ベートーヴェン/交響曲第5番「運命」
アンコールにヴァグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の前奏曲


とりわけ5番は、熱いけれども決して重くならず、始まりから終わりまで一気に疾走していった。ためらい無く疾駆する響き。個々の音質がどうこうというのでなく、音楽が流れてしまって流れてしまって、どんどん引き込まれてしまう演奏。力強く、素晴らしかった・・・。

演奏後の会場の熱気は圧巻。実際この日は満遍なく二階席まで人が一杯で、明らかに聴衆もオケも、火照ったような空気に包まれていたと私は感じたが、どうだっただろうか。

一体感とか、勢いとか、熱さとか、そうした空気感はもしかしたら、アマチュアオーケストラによって生み出せる、ある種の強みなのかもしれないとも考えられる。でも、この日のそれは、指揮の海老原光氏によってさらに上昇気流に乗った、という印象だ。

この人は席巻力のある指揮者。見せる/魅せる人。
引っ張る、鳴らす、見せる/魅せる、驚かす、作りこむ・・・
音楽の作り方や指揮そのもののみならず、ステージ上でのこの指揮者の立ち居振る舞い(曲入りのタイミング、観客の拍手への応え方や、アンコール曲紹介時の発声まで)全てが、おそらくオケの演奏者だけでなく聴衆の身体性をも喚起させ、演奏会全体を指揮していた。言ってしまえば、最高のエンターテイナーだ。本当に楽しかった。

聴衆の「楽しい」は、拍手のタイミングや「ブラボー」という叫び声ばかりでなく、例えば私の後ろに座っていた女子中学生3人組みたいなのが、「きゃあ素敵」モードに入ってはしゃいでいた様子などからもわかって面白い。

海老原氏も、今後音楽の作り方や、演奏者・聴衆への「魅せ方」はどんどん変わっていくかもしれない。でも、どの時点でもきっとこの人は、本当に「多くの」人を席巻する力を発揮されていくのだと思う。
つまり、「スター」性みたいなのを持ち、「ファン」層みたいなのを獲得できる人。これは侮れない才能、そしてそうそういないと思うんですよ。一方でまた、この指揮者の「根のマジメさ」みたいなものは、信頼できる勤勉さを示してくれるので、聴き手の側には誠意のようなものとして伝わってくるように思う。

クラシック音楽だって、どこの業界だって、その当事者が、音楽などの彼/彼女の向かう対象に真摯に対峙したその結果、そうした供給と需要の大きなうねりを作れるのであれば、誰も無視することは出来なくなるんだろう。私個人が過剰にこの指揮者を応援したいと感じているのだとしても、それを差し引いたとしても、そんな構図が思い浮かんで、わくわくしてしまう。

あんな演奏会は初めてですよ。心から楽しく、本当に感動しました。演奏会にはまた足を運びますよ。今後の更なるご活躍を心から応援しています。