融通無碍なる留学生活

~豪に入っては豪に従います~

意味と形式

2006年07月31日 | 気付いたこと築いたこと
シドニー北西部に位置するM大学。ここでは通訳・翻訳のための専門の大学院があり、私はそこで学んでいるわけであります。

通訳・翻訳というと、かなり職業としての実践的な訓練が色濃くモノをいうのだと思いますが、こちらの大学では、いわゆる「理論重視」なところがあるらしく、学問的にものごとを捉えることに慣れ親しむ経歴がある私としては、適したところに入学できたかと思っています。私のこれまでの専門分野は音楽学です。音楽を学問としてとらえるということの妥当性については若かりし頃、さんざん考えてきました。若さゆえのギモンだったと思いますが。

今日初めてこちらのコースのテキストを開いてみると、翻訳という作業が、新しく専門あるいは学問分野としての地位をいかに確立することができるか、そしてそのためには、いかにアカデミックな姿勢をも重視せねばならないかということに関心がもたれているのだということを知りました。とても興味深く思います。

Baker, Mona. In Other Words: A Coursebook on translation. London: Routledge, 1992.

今日目を通したところで面白く感じたのは次の記述。

...text is a meaning unit, not a form unit, but meaning is realized through form and without understanding the meanings of individual forms one cannot interpret the meaning of the texst as a whole.

「テクストは意味の単位であって、形式の単位ではない。しかしながら意味は、形式を通じてこそ実現されるのであり、個々の形式の意味の理解なしには、全体としてのテクストの意味を解釈することはできない。」

「個々の形式の意味の理解」というあたりが、なんだか、「絶対音楽の理解とはなんぞや」みたいなギモンの感覚を思い出しました。話はシニフィアンとかシニフィエとかみたいなことまで考える必要はなくて、極めてシンプルに受け止めればそれでいいんだと思うけれど、ついでにいろいろ考えてみるのも面白いかなとも思います。

でもまぁそんなことより、日常の英語力不足を、なんとかしなきゃあならないが(苦笑)。

青空と図書館と

2006年07月30日 | 気付いたこと築いたこと
日曜日の今日、キャンパスにはあまり人気がありません。
いよいよ明日の月曜日から授業が始まります。
それにしても、この青空。つきぬけるような。何も考えられなくなる。
「勉強」するモチヴェーションはきちんとあがるだろうか。
これは極めて怪しいなぁ。

いやしかし、こちらの大学図書館が恐ろしく充実している。この図書館を遊び倒すだけも、1年半という我が留学期間は短いような気さえする。

東京の大学研究センターのスタッフだったころ、鍵かけてしっかり管理していたような類のマイクロやマイクロリーダーなんかが、ポンッと、「つかえば?」みたいに何箱も何台も一見無造作に置かれているのをみるにつけても大変興奮。いやはやすごい。

ワイアレス環境もいいし、コネクト箇所もいくつも設置されている。ブースにわかれた院生専用デスクもコネクト可。いたるところにオンラインのカタログがあるし、自分の検索した資料結果をネット上の個人ポータルに保存可能だ。資料数豊富はもちろんのこと、スタッフも半端なく親切だ。ああ、遊ぼう遊ぼう。この図書館で遊ぼう。

とはいえ、やっぱり青空だ。これを逃すのは、惜しい。

相殺劇場

2006年07月30日 | 気付いたこと築いたこと
寮での生活のポイント。そう。ここは相殺劇場だ。

共同生活者たちとちょっと生活上のリズム感やポイントがずれたとしても、それはありふれたこと。もし気になったら「あ、でも昨日カレーご馳走してくれたしな。」とか「あ、さっき図書館のあの資料持ってきてくれたしな。」とか心の中でつぶやいて、「気になること」を相殺してゼロにしてしまうこと。それが効果的と気が付いた。相殺劇場に乗れないと、人は非常に苦しそうになる。

文化間の相違なのか、ほんの日常レベルの感覚の違いなのかとか、問題には濃淡があるだろう。ときに濃淡の分類をうまく利用しつつ、自分の立ち位置を必要以上に意識することなく、ただただ工夫して生きていきたい。

それにしても「相殺」って、字面は怖いなぁ。

日差しがこわい

2006年07月29日 | 気付いたこと築いたこと
シドニー。本日の日中の気温はおそらく20度くらいか。「冬」のはずがとても暖かいです。午前中はダウンジャケットを着ても違和感ないですが、午後はTシャツの人たちもちらほら。

予想はしていたのですが、こちらの日差しの強さには驚きます。冬の朝だというのに、その光線の眩しさ・強烈さといったらありません。「カーッ!」とまっすぐに伸びて、突き刺さってくるような光線です。夕方でもそうですよ。おそろしいことです。

青空の下、涼やかな空気。だれもこちらでは日傘なんてさしていません。
でも・・・どうする私?
ここでUVに負けている場合ではないはずだ。32だ。クレイジーだと思われても、やっぱり日本から持ってきたUV99%カット日傘を使うべきだろうか。

このささやかな悩みを、どう解決するか。
いずれの方向であれ、フッきれるしかない。

手続き会話

2006年07月28日 | 言葉を織り成す
一週間と一日じゃ、どうにも上達する由もない。そんな私の英語です。

さて、ここシドニーの大学内では、どのスタッフもみんな恐ろしいほどに親切だ。そんな中で諸手続き会話みたいなのは、おかげさまでうまく回っている。

「あのね、Web上から自分のIDがもらえるってあったから、やってみたんだけどうまくログインできないのはどうしたわけだろうか。ちゃんと番号も名字も入れたよ。」とかそんなのね。

でも家に帰ると、今日もやっぱりJさんに、うまく話せず愕然とする。同じコースの同期であるJさんに、私が言いたいことを翻訳してもらってるんだから情けがない。「時が経てば大丈夫」と励まされた。みんな優しいなぁ。

そしてこれはごくごく私見ですけど、周囲の皆様、親日です。

毎日自分が実験台

2006年07月27日 | 言葉を織り成す
こちらに到着して早一週間。メインで発する言語は当然のことながら英語だ。
人はどうやって母国語意外の言葉をある程度までモノにすることができるのか。このブログに私自身が実験台となって、自分に起こってくることを少しずつ記してみます。



私は今まで外国で生活した経験はありません。旅行や出張などで外国を訪れたことはあっても、そんなのはほんの数日のこと。英会話学校などに通ったことはなく、いわゆる「受験英語」だけをがんばった方だと思います。

今回の留学はTOEFLという試験の受験勉強だけをがんばった末に、こっちにやって来てしまった。恐ろしいことにコースは翻訳・通訳だ。どうしよう。。。まぁどうにかなるだろう。



・・・ぐらいのバックグラウンドであります。

さて、この一週間、主に行動をともにしていたのは中国人のルームメイト「J」さん。私より一つ年上で、中国では英語の先生をしていたということもあって、かなりきれいな英語を話す美人です。意思疎通は絶対に英語でなければならないけれど、彼女も英語が母国語でないだけに、私のスローな語りにきちんと付き合ってくれるし、いろんな言い回しを二人で考えたりして、結局かなりの訓練になってます。

そんな一週間目。昨晩、寝つきが悪く、何やらアタマの中でぐるんぐるん英語が回り出してました。変な感覚です。目覚めたときに、「あ、ここシドニーだった!」と驚かなくなったのは今朝が初めて。ベットから起きたときも、少しアタマの中は英語っぽい感じだったかな。 Oh, I must be hurry...みたいな。

なんとなく自分で笑えるのが、昨日あたりから、いわゆる「ブロークン・イングリッシュ」のオンパレードです。つまり、きちんと文にならないで、単語ばっかり発してしまうんですよ。これはなんだろう。数日前の英語力より劣化してる感じ。脳疲労なんだわ~と勝手に解釈。あまり気にしていません。

でも挙句の果てには、ついさっき、ともにお買い物中のJさんに、「歯ブラシと歯磨きチューブを入れておくようなコップが欲しいんだよ」と伝えるのに、アホな旅行者のようにジェスチャーで語っている自分がいた・・・。これはさすがにマズい。あと、「階段のところのライト、切れてたのがちゃんと修理されたみたいだね!」とかをウキウキで伝えたいのに、こんな簡単なことも言えなくなってる自分もいます。脳疲労重症。でも、ま、いいや。ケ・セラ・セラ。


様々なバックグラウンド、様々なモチヴェーションを抱えた人が、きっとこの大学院に入学しているはずだ。軽やかだったりシビアだったり、いろいろな人たちにまみれながら、来週からの授業に臨む。さて、私はどうなることやら。この「どうなるか」感もまた、ここでの生活の貴重なテーマの一つだ。

これがなかなか

2006年07月25日 | 愛するモノたち

小さなことでも初めてだとうれしかったりする。
アパートタイプの寮に備え付けの洗濯機で、今日はお洗濯をしてみた。ルームメイトが薦めてくれた柔軟材。かわいいし、なんといっても香りがいい。ふんわりしあがった。これは日本製をしのぐよさかもしれないな。

眠さと心地よさと

2006年07月25日 | 気付いたこと築いたこと

とにかくこちらに来てから眠い。
シドニーと東京の時差は1時間。時差ぼけなんて発生しようがない。

眠いのはおそらく、この始めの5日間、英語ばかりを使うせいで脳が疲労してるんじゃないかと思う。英語だけで長時間過ごすのを強いられるのは、なにしろ始めてのことだから。

朝、窓からの眺めがいい。ユーカリの木々が見える。

初日の朝目覚めたときには、東京での雑然とした眺めや騒音とのギャップに、なぜか笑いがおこった。

鳥の声で目覚めて、こんな景色。笑うしかない。

時間の流れが変だ

2006年07月24日 | 気付いたこと築いたこと
おかしい。あまりにもおかしい。
20代後半のあたりから、時間なんていうのは飛ぶように過ぎていたものだが、ここシドニーに到着してからの5日間は信じられないくらいに長い。まだ一週間も経っていないのか、となぜか愕然とする。

授業が始まるのはもう少し先。始まったら少しはルーティンな感じが出てきて軌道に乗るだろう。

お金もないのに買い物くらいしかすることがない。延長コードを買った。昨日の日曜日は、ルームメイトとその友人たちに連れられてシドニー中心部の「シティ」に繰り出し、65ドルでプリンタ、28ドルでiPodにつなぐスピーカーなど、いろいろ安く購入できたから、今日はそんなものをいろいろつないで遊んだりしていた。

ルームメイトたちのおかげで、取り残されるような寂しい想いはしていない。香港、インドネシア、中国からの彼女らと、なんとしてでも英語で意思疎通をはからなければ、というのはいい環境だ。

少し痩せた。というか、やつれた。「これでもか」というようなお菓子の袋をスーパーで見かけただけで、すっかり食欲が失せるというもの。

きっと気持ちはヘルシーだ。きっとそうだ。まだ自分が感じていることを、きちんと整理できていないと思うのだけれども。