会津の旅人宿 地域との交流・旅人との交流が盛んな【会津野】宿主ブログ

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【会津野】秘境地域とインバウンド

2016年03月14日 | 宿主からのブログ

おはようございます。旅人宿 会津野 宿主の長谷川洋一です。

週明けは、気温1℃、雨の朝を迎えた会津野です。

3月に入り、外国人のお客様の割合が多くなっています。外国資本の予約エンジンに積極的に登録したからか、それとも旅行者の構造変化なのかわかりませんが、やっと福島にも外国人の目が向いてきたのかと、これからの展開を楽しみにしたい今日この頃です。

さて、3月12日土曜日に金山町で行われた「奥会津シンポジウム」を拝聴してまいりました。

会津大学短期大学部の高橋先生の只見線利用促進事業の発表からはじまり、東洋文化研究者のアレックス・カー氏による徳島県祖谷谷のインバウンド誘致事例などのお話を伺いました。

奥会津でインバウンド? 不便すぎやしないか? と最初は思ったものの、祖谷谷を25年ほど前に泊まったユースホステルから自転車や徒歩で「修行」と称した旅をしたことを思い出し、いくら不便でも魅力あふれる地域を歩いて感動したことを思い出しました。

今はもうそのユースホステルは存在していませんが、お寺であったがゆえに、おしょうさんが夕食後に地域の魅力を紹介し、「若者よ修行に出なさい!」と、5種類の日帰り修行コースと銘打った徒歩や自転車で地域をめぐるコースを用意していました。5種類すべての修行を終えると、人間国宝の称号が与えられ、いまでも私の宿にそのときの賞状を飾っています。

講演では、その祖谷谷をリノベーションし、魅力を活かしながらインバウンドの旅行者へ宿泊やレストランを提供する事例が紹介されました。ハードウェアとしては、古民家のリノベーション。ソフトウェアとしては、外国人にとっての非日常である日本の暮らしを体験するというのがその要旨です。おしまいに、不便とは言っても、奥会津は祖谷谷ほど不便ではない。充分にアクセス可能な魅力有る地域であるとのことでした。

25年前に経験した日本人である私が日本の秘境を旅したときに提供されたプログラムは、「旅の魅力」を地域文化とうまくマッチさせてくれるもので、都市で暮らしていた私に地方の文化を強く感じさせてくれるものでした。しかしそれからの25年は、地方が目指す東京化のベクトルが進み、もうかつての地方文化がかなり薄まってきていると感じます。それは奥会津でも同じこと。

ただ、奥会津の文化は、奥会津書房が出版する会津学という書籍で文章化が図られ、東京化のベクトル以前からの文化を知ることが出来ます。この書籍のなかから、都市部の人々が非日常として楽しみたいだろうと思うことや、外国人が非日常として楽しみたいだろうことを探し出してみることが、近道なのかなと感じました。

この他に、只見線の魅力についてのお話もありました。災害からの全線復旧と存続を目指すには、何としても利用を促進しなければならないというのがその論調でした。

やはり私が若い頃、西武鉄道がJRの列車をレンタルし、スキー列車を走らせたことがありました。在来線の夜行列車が利用の減少とともにどんどん廃止されていくなか、西武鉄道がスキー客用の夜行列車を臨時列車として仕立て、チケットは西武鉄道が誘客、運行はJRが行うというもの。

JRは、現在の利用客の動向を元に、ダイヤ編成することは避けて通れないので、旅行者にはこのうえない不便さを与えてしまうのが実情です。

なので、JRに頼るよりも、地域の観光組織が行政の支援を受けて観光用臨時列車を都市部発着などの区間で企画し、その販売までは着地型観光で行い、上野発会津川口行きのような列車をJRには列車借上げで運行していただく。利用実績を伸ばすために、会津川口~只見間の運行も、「JRへ」バス借上げ運行を委託しても良いでしょう。以前は、上野発着で東北各地へ向かうディーゼル急行列車が走っていたので、いまでもそれは出来る。この他にも、会津鉄道のディーゼルカーが東武鉄道へ乗り入れしている実績もあるのだから、これをうまく利用して、浅草発会津川口行きの運行を、会津鉄道のディーゼルカー借上げで運行出来るかもしれない。

お話を聴きながら、こんなことを考えました。

この4月から発売されるインバウンド向けのJRのフリー乗車券に「JR East - South Hokkaido Pass」というのがあります。この外国人向けフリー乗車券は、フリー範囲のJR路線の他に、日光や鬼怒川へ新宿駅から東武鉄道へ向かう列車でも利用できる仕組みになっています。これは、JRそのものが「日光・鬼怒川」という、自社で運ぶには弱い観光地向けの需要をアウトソーシングしていることの現れです。

この点からも、JRにとって需要の弱い奥会津への列車運行経費と、チケット販売において、奥会津の着地型観光組織へのアウトソーシングと、それを支える行政からの支援(地方創生?)をセットにすれば、実現ができるのはないだろうか?

地域内のハード整備、ソフト事業については、地域でできるものの、そこまでのアクセスは他者に頼らざるを得ません。いままでは、この頼る相手方をJRにばかり求めすぎたのかもしれません。

アクセスチケットと地域の宿屋、地域の体験事業を販売する着地型観光としてのDMO組織を早く立ちあげなくてはなりませんね。

今日も素晴らしい一日をすごしましょう。

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