音信

小池純代の手帖から

日々の微々 220601 

2022-06-01 | 歌帖


 息を吐くやうにつくうそ息を吸ふやうにみるゆめ 雲のゆふぐれ

 みし夢をことばにすればうそに化けわすれてしまへばうたにか化くる

 そこなしとはてなしとはかなしの差にそこはかとなく思ひを致す
      *
 亡き親はゆめに住まひす刺身ほか氷を添へて持たせくれたり

 亡き父も亡き母もともに機嫌よく暮らしたまへるゆめのなかの家
      *
 あまねくも嘘八百の雨がふるスピーチバルーンの雲をしぼつて

 ああゆめでよかつたと目をさますのがそれが死といふものであらうか

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