音信

小池純代の手帖から

雑談31

2021-10-24 | 雑談


 月のひかり満つれば、
 常盤樹はいよいよ暗し。

 冬夜空、高ければ、
 その姿、いよいよ深し。

 風みちよ、ざわめき明り、
 その葉ずれ、いよよひそけし。
 
 粉の雪の、散らふ明りに、  粉:こ
 あはれ、葉の冴ゆる一むら。

     玉城徹「常盤樹:ときはぎ」詩集『春の氷雪』より


画像は『玉城徹作品集』(1981年刊)から。
『春の氷雪』は1947年刊。
昭和18(1943)年から21(1946)年までの作品を
収めたもの。

特に定型の美観ゆたかな「常盤樹」を引いてみたのだが、
くらべてみれば「萵苣 長歌一首ならびに反歌」(2002年初出)
の種子、原型、成分といったものがすぐそこに見えてくる。

これも、

 薔薇ノ木ニ 
 薔薇ノ花サク。

 ナニゴトノ不思議ナケレド
           白秋「薔薇二曲」より

というものだろうか。



  『玉城徹作品集』
  

  
  玉城徹『枇杷の花』「萵苣」所収

どちらも「徹」のサインが本体の装幀に使われている。
大きな違いはないが、別もの。
そのときそのときの筆跡と思しい。



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