音信

小池純代の手帖から

元政の詩 1

2020-05-26 | 日記

 

 廬 並序    元政    

   廬懐友也 吾友久不来 
   吾亦 病而不能往 思而作是詩也

 竢君於廬乎而
 黙黙少娯乎而
 此日又欲■乎而  ■:日+甫
 竢君於門乎而 
 黙黙無言乎而 
 此日又欲昏乎而
 竢君於路乎而
 黙黙獨歩乎而
 此日又欲暮乎而


「序」は、
「庵で友を思つた。友はしばらく来れぬまま。
わたしは病で行けぬまま。そんな思ひの詩がこちら」といった意味。
詩の方はこんなふうな意味。 

   部屋

 部屋に居てきみを待ったよ
 黙ったままでつまらなかった
 この日も外が暗くなったよ

 門に出てきみを待ったよ
 黙ったままで言葉が失せた
 この日も夜が近くなったよ

 路に来てきみを待ったよ
 黙ったままで歩きつづけた
 この日も暮れが深くなったよ

 †

元政は江戸前期の学僧。いい人そう。
表記は新仮名にして翻案してみた。
つられて浮かぶ一首が、こちら。

 古畑の岨の立つ木にゐる鳩の友呼ぶ声のすごき夕暮れ 
                     西行






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