弁護士早瀬のネットで知財・法律あれこれ 

理系で特許事務所出身という経歴を持つ名古屋の弁護士があれこれ綴る雑記帳です。

「チュッパチャプス事件」~ネットショッピングモールの商標権侵害~

2014-06-25 22:44:32 | 意匠・商標

毎日暑いですね。
でも、夜や朝はまだエアコンつけるほどでもなく、蒸し暑さもなくて過ごしやすい気がします。
本当に梅雨なんでしょうか…

 

今週金曜日にようやくロースクールでの授業が終わります。
3週間に1回とはいえ、毎回問題作成し、問題解説と判例解説のレジュメを作成し、答案添削することは結構大変です。

ようやく終わりだーと、思っていたら、突然、恩師であり実務家でもある先生から、「定期試験の問題作って採点してくれんか?」と電話連絡

 

さて、ぼやきはこんなくらいにして、本日は、毎月弁護士有志で集まってやっている「知財勉強会」の日でした。
本日の題材は結構面白い事件が多く、とても勉強になりました。

そのうちの一つ、「チュッパチャプス」事件(知財高裁平成24年2月14日判決)を取り上げたいと思います

この事件の概要はこうです。
楽天のショッピングモールに、棒付きキャンディで有名な『Chupa Chups(チュッパチャプス)』の商標を無断で使った帽子とかマグカップが出品されていました。
問題となった商品は、例えばこんな感じのもの。

 

                
               

 

そこで、「Chupa Chups」商標の商標権者であるイタリアの会社が、楽天に対して商標権侵害を理由に、商品販売等の差止めと損害賠償請求を求めたというものです。

 

ここで、んっ?なんで楽天に?商品販売者(モールの出店者)が相手じゃないの?と思った方、その通りなんですよね。

この事件では、上記の商品販売が商標権侵害にあたり、商品販売者に対して、原告が販売差止めや損害賠償請求できることに争いはありません。

でも原告は楽天を相手にしました。
原告としては、商標権侵害する出店者にいちいち警告書等を送るのは面倒だし、運営者の楽天に請求できれば請求先も一元化できて商標管理も楽になりますもんね。

でも、楽天からしてみれば、自分はショッピングモールの運営者にすぎないんだし、そんなの出店者に言ってよってことになる。

ですから、果たして楽天が商標権侵害の主体になるのか?っていうところが大きな争点となりました。

 

第1審の東京地裁は、現に商標権侵害の行為をしている者が侵害者なんだと厳格に考えて、原告の主張を認めませんでした。

ところが一転、控訴審の知財高裁では、商標権侵害を理由に、運営者に対して差止めと損害賠償請求できる余地を認めました。

判旨はこう言っています。

「ウェブページの運営者が,単に出店者によるウェブページの開設のための環境等を整備するにとどまらず,運営システムの提供・出店者からの出店申込みの許否・出店者へのサービスの一時停止や出店停止等の管理・支配を行い,出店者からの基本出店料やシステム利用料の受領等の利益を受けている者であって,その者が出店者による商標権侵害があることを知ったとき又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるに至ったときは,その後の合理的期間内に侵害内容のウェブページからの削除がなされない限り,上記期間経過後から商標権者はウェブページの運営者に対し,商標権侵害を理由に,出店者に対するのと同様の差止請求と損害賠償請求をすることができると解するのが相当である。」

これによると、楽天のような運営者が商標権侵害の責任を負うのは、次の①②を満たす場合です。

① 運営システムの提供・管理・支配を行い、出店料やシステム利用料の利益を受けていて、かつ
② 出店者による商標権侵害を知ったか、知ることができたといえる時点から合理的期間内にウェブページからの削除しない場合

①は、楽天を含むショッピングモールの運営者なら、通常はあてはまるでしょうね。
でも、本件の楽天は、6日~8日という合理的期間内にページを削除していたので、②をクリアしました。
その結果、原告の請求は棄却されました。

 

今日の勉強会では、

理屈が理解できないなーとか、

原告の商標権者は、結論で負けても、楽天などの運営者の責任を認める余地ができたから、そもそもの思惑は達成したよね

なんていう話で盛り上がりました。

 

 

話しは変わりますが、この事件の控訴審判断、飯村判事(今となっては元判事ですが)の裁判体が出したものです。

飯村判事、つい先日、退官されたばかりですが、アップルvsサムソンの大合議事件が最後の大仕事(花道?)になった感じですね。

今後、おそらく弁護士登録されるのでしょうが、どの事務所に行くのか、ちょっと(大いに?)興味あります。
大手事務所が争奪戦を繰り広げているんだろうなー。

 

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