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子不語の夢 その3 国枝史郎の嫉妬

2011年09月28日 | ミステリ
「子不語の夢」ではヒール役の国枝史郎ですが、
昭和2年に耽奇社を結成したころから小酒井不木に急接近して、
住居まで名古屋西区から知多市新舞子に移して住み、
新舞子では不木の別荘と隣あわせに住むつもりだったそうです(不木の急逝で実現せず)。

新舞子は明治末から海水浴場として発展した町で、
神戸の舞子に風景が似ているので「新舞子」という名前になったそうです、

時代伝奇小説の分野では傑作を何篇もものにしている国枝史郎は、
じつは乱歩が登場する以前にも探偵小説を書いているし、新青年にも探偵小説を書いています。

急逝直前の不木が乱歩へ出した手紙には、
国枝史郎が酔いにまかせて「不木や甲賀三郎の小説は幼稚で、
(乱歩より先にオレのほうが探偵小説を書いているのに)
乱歩がみなからチヤホヤされるのが気に食わない」と書いてあり、
世話をする不木の気苦労がしのばれます。

男の嫉妬は見苦しいですなあ。

そして脚注によれば、乱歩は「心理試験」についての論争で耽奇社結成以前に国枝と論を交わしており、
「探偵小説に愛情を持たない高圧的批評」が乱歩をして国枝を探偵小説作家とは認めさせなかった、
うがった見方をすれば、乱歩批判のせいで国枝史郎は当時の探偵小説ゲットーに入れなかったということでしょうか。
そのせいかどうか、国枝史郎の探偵小説のまとまった紹介は、
作品社の「国枝史郎 探偵小説全集」が出る2005年まで待たなければなりませんでした。
この本は限定1000部、わたしも持っていません。
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