横浜27団ローバー隊

ローバー隊の現スカウトや近況とOBとの連絡所

旗揚げ式の前に   小山康次郎

2007-01-09 23:38:33 | 投稿

1月7日旗揚げ式に行く前に、患者である15歳の芝犬が朝方亡くなったというので、9時前に飼い主の自宅に行って見届けた。12月中旬ごろ突然、両眼眼振と歩様不安定になり、脳腫瘍を疑っていた症例だった。徘徊がひどくて最近は玄関の土間に簡易テントを作った中に入れて飼っていたのだが、正月過ぎてから首が右側に斜頚したまま歩行困難になり、食欲も落ちていたのだった。

3日前に往診で、もうすぐランディング(私流の臨終のこと)の段階に入りますと予告していたので、家族にも大きな動揺は見られなかったが、横たわった側で、なんとなくぼんやり立っている小学3年生の坊やが、なんともいじらしかった。泣いているわけでもなく、ただぼんやりと愛犬と私を見ているのだ。ポケットから毛筆が出ていたので習字の宿題を始める前だったのだろうか。

芝犬の死亡を確認して説明し、今後の段取りを説明した後、              私がこの坊やに                                        「ケンタは、今夢の中で、ありがとうと言っているよ。君もありがとうだよね」と言ったら急に泣き始めた。                                       両親もおばあちゃんも泣き始めた。私も涙が落ちてきた。               丘に面した宅地の端のこじんまりとした家だったが、緑の板にアルミのロールマットを貼り付けた犬小屋のある庭からひゅうっと木枯らしが、日影の玄関をとおして吹いてきたが、誰も一言も発せず、ティッシュを取り合っていた。