株と浮き世の話

身近な話題と終活の迷い道

杭打ち考

2015-11-09 18:31:17 | TV報道
基礎杭の施工不良について全国的な話題になっているが、昔の技術者として杭打ちの発展の経過を述べてみたい。
私は82歳になる元土木屋だが、初めて現場に出た昭和20年代後半は未だ「もんけん」で杭を叩いて打ち込む方式で、設計上は杭と地盤の摩擦で支持力を得る「摩擦杭」が支流だった。杭を打ち込む深さはせいぜい7~8mで岩着する「支持杭」は余程恵まれた立地条件の場所だった。
おそらく戦前に建設された著名な煉瓦造りの建て物も「摩擦杭」基礎が多いのではないかと思う。
特殊などうしても岩着させたい構造物(発電機やタ-ビン)は井戸の様に岩盤まで掘り下げ湧き水対策としては圧気して掘る潜函工法が用いられこれは大変だった。
忘れもしない昭和30年にディ-ゼルハンマ-(デルマック)が輸入されて基礎工法は一変する。
ディ-ゼルの爆発力でハンマ-を上下させ杭を打ち込むもので深さ30m位までは難なく打ち込めた。初期には杭の材質は鋼管杭で長さが足りなくなると溶接で継ぎ足しながら打ち込んだ。一本一本が荷重テストをしているような感覚があり理想的な工法で戦後発展した京浜・京葉工業地帯の軟弱地盤には大活躍した。
しかし市街地のビル建設にはディ-ゼルハンマ-の爆発音が大きく騒音問題から使用できなくなり、次第に現在主流のスクリュウ-で地盤をくり抜きその中に杭を挿入したりコンクリ-トを流し込む方式になった。
私はこの工法は好きになれない。杭は最後の1mだけでもカ-ンカ-ンと打ち込んで支持力を感覚的に確認したいと思う。
このような事を言うのは私も古い人間なんでしょうかねぇ- (^^;)