テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

真昼の決闘

2013-09-09 | 時代劇・西部劇・歴史劇
(1952/フレッド・ジンネマン監督/ゲイリー・クーパー、グレイス・ケリー、ロイド・ブリッジス、ケティ・フラド、トーマス・ミッチェル、ロン・チェイニー・Jr、ジャック・イーラム、ハリー・シャノン、リー・ヴァン・クリーフ/84分)


(↓Twitter on 十瑠 から

夕べ、ぽつと空いた時間にDVDを観た。1コインDVDがブックオフで更に半額になって売ってた「真昼の決闘」です。タイトなストーリーに、緩急のメリハリが利いた演出。ラストシーンで、あぁこれはやっぱり「ダーティハリー」に影響与えたに違いないなと再確認しました。お薦め度は当然★五つだ!
 [ 9月 2日 以下同じ]

フレッド・ジンネマンって昔っから巧い人だけど、この人の色が今だに良く分からないな。「ジャッカルの日」とか「ジュリア」とかのサスペンスも良いし、昔だと「尼僧物語」とか「山河遥なり」とかの人間ドラマも印象深い。ユダヤ系ドイツ人の両親はホロコーストで亡くなったとウィキには書いてあった。

最近、継続的にウォーキングをしていないのが原因だと思うけど、長い文章、纏まった文章が浮かばない。今日、一週間ぶりに「真昼の決闘」の2回目を観たけれど、紹介記事が・・・。徒然に書こうとしても、それでもなんだかつまらないので、いっそのことツイッターで呟こうかと思っとります。
 [ 9月 9日 以下同じ]

監督のジンネマンについては1週間前に書いたので、今回はプロデューサーについて。スタンリー・クレーマーは後に社会派の名匠といわれるようになる人ですね。「手錠のまゝの脱獄 (1958)」とか「ニュールンベルグ裁判 (1961)」とか。あと、「渚にて (1959)」とかね。

「真昼の決闘」も、西部の小さな町を舞台にしたガンファイトもある西部劇だけど、困難に直面した時に見せる一般市民の利己的な反応を批判的に描いてみせている。なるほど社会派のクレイマー作品だなぁと思わせるお話でありました。製作者としても「チャンピオン (1949)」とかの話題作も多い。

映画の冒頭が町外れの街道脇でならず者が誰かを待っているシーンで、この男が後にマカロニ・ウェスタンで有名になるリー・ヴァン・クリーフ。なんと、この映画が彼のデビュー作らしいです。デビュー作といえば、ヒロイン役のグレース・ケリーもそうなんですよね。彼女まだ23歳!

グレース・ケリー扮するエイミー・ファウラーと結婚する保安官がウィル・ケーン。演じたゲイリー・クーパーは当時51歳。この後9年後に前立腺ガンで亡くなる。51歳と23歳の新婚さんて・・・まるで親子^^。

映画の冒頭でならず者達が町に入っていき、その町の保安官事務所ではケーンとエイミーの結婚式が執り行われていて、ならず者達の姿を見た町人達は、そそくさと家の中に入ったり、胸の前で十字を切ったりする。男達はそのまま鉄道の駅に向かう。お昼に到着する列車にならず者の親分が乗っているのだ。

昼の列車に乗ってくるのは5年前にケーンが逮捕して死刑を望んでいたフランク・ミラーで、どうやら東部の裁判所で釈放されて戻ってくるらしい。町の裁判ではミラーはケーンや判事への復讐を宣言していたので、早速判事は荷物を纏めて町を出る。ケーンは逃げても追ってくるだろうからと迎え撃つのだ。

新妻のエイミーはクエーカー教徒で争いを好まない為にケーンに一緒に逃げることを薦めるが、ケーンは一旦は出て行った町に戻り、ミラーを迎え撃つ道を選ぶ。エイミーは、未亡人になりたくないので一人列車で町を出ると言う。冷たいなぁと思うけど、クエーカーが平和主義なのと彼女の半生にも訳がある。

群像劇の様相も見せるこの映画。上映時間が85分だが、お話のスタートも日曜日のお昼前の10時半くらいで、終了も12時過ぎだから、ほぼ同じ時間なんだ。町の中を助っ人を求めて歩き回るケーンを追ったカメラが自然光での撮影みたいで、リアルな感じが出ていたのも印象深い。

そうそう、クーパーはこれで2回目のオスカーを獲得している。1回目はハワード・ホークスの「ヨーク軍曹 (1941)」。孤立無援になってなお、アル中の老人や少年の助っ人志願をやんわりと断る正義の男を見事に演じておりましたな。51歳の新婚さんは少し違和感はあったけど・・・。

オリジナル脚本だと思っていたけど、ジョン・W・カニンガムという人の原作があるらしい。本の原題は「The Tin Star (1947)」。保安官の鉛製のバッジのことですな。法の番人は誠実にやっても、世のはみ出し者には憎むべき対象で、平和そうに見えるこの町にもケーンを嫌う者はいた。

ケーンの元カノで、その前はミラーの女だったメキシコ女へレン・ラミレスを演じたのが、メキシコ出身のケティ・フラド。ゴールデン・・グローブで助演女優賞を獲ったらしいです。への字になった口元に意志の強さを感じさせる人。へレンは酒場か裏商売のお店の女将なんでしょうか。

ケーンの保安官助手で、今のヘレンの男ハーヴェイを演じていたのがロイド・ブリッジス。「恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ (1989)」で兄弟を演じていたボーとジェフのブリッジス兄弟の実の父親ですね。既に40歳頃のロイドさんですが、エミリオ・エステベスに似た若者でした。

時限サスペンスと人間ドラマを巧く融合させたタイトな脚本を書いたのは、デビッド・リーンの「戦場にかける橋」でオスカー受賞のカール・フォアマン。この映画でもノミネートされ、町人の色々な反応を描いていてお見事なのに、赤狩り真っ只中という空気が影響したのか、票が入らなかったようです。

冒頭のタイトルバックから流れるのは、アカデミー歌曲賞を受賞した歌(作曲:ディミトリ・ティオムキン、作詞:ネッド・ワシントン)で、唄っているのはテックス・リッター。♪Do Not Forsake Me, Oh My Darlin・・・。全編にメロディーが流れるので印象的です。

アカデミー賞関連でいえば、編集賞も獲っているんだよね。列車が到着する12時直前の緊張感がグンと高まっていくシーンでは、町の人々の表情や、街角の風景や、時計のアップなどが、煽るようなBGMの中で繋がれていって、突然の列車の汽笛で無音になる。とても印象的な編集でした。

ある映画サイトでは「ダーティハリー」がラストシーンでこの映画へのオマージュを捧げていたと書かれていました。確かに、オマージュという表現の方が正確かも知れません。

保安官事務所の牢屋の中に深酒のせいで収監されている男がいますが、これが若きジャック・イーラムでした。若い頃から彼って酒好きが似合う役者なんだよねぇ。

*

 出演者関連で、トーマス・ミッチェルを忘れていました。ジョン・フォードの「駅馬車」にも出ている名脇役ですね。
 彼を含めて、冒頭の結婚式ではケーンをニコヤカに祝っていたのに、いざならず者のミラーが帰ってくると分かった後には、困っているケーンを見殺しにするような態度をとる。ミラーはケーンを怨んでいるのだから、ケーンは町を出て行けばよかったんだと。そうすれば、町には何の影響も無いのだから・・・。





・お薦め度【★★★★★=大いに見るべし!】 テアトル十瑠

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