テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

ふたりの5つの分かれ路

2015-11-03 | ドラマ
(2004/フランソワ・オゾン監督・共同脚本/ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ(=マリオン)、ステファン・フレイス(=ジル)、アントワーヌ・シャピー(=クリストフ)、フランソワーズ・ファビアン(=モニク)、マイケル・ロンズデール(=ベルナール)、ジェラルディーヌ・ペラス(=ヴァレリー)/90分)


フランソワ・オゾン初体験の「ふたりの5つの分かれ路」を観る。現在から過去へと進んでいく映画。逆進って何か意味があるのか?むしろ映画を否定した映画だな。過去を行ったり来たりする映画もあるが、すべて過去の積み重ねに意味があるからやっているのに。
[11月01日(Twitter on 十瑠 から)]

*

 『映像は美しいが毒があり、語り口はドラマチックではなくミステリアス、別の言い方をすれば曖昧である』
 オゾンは観た事がなかったので他の人の批評もチラ見しかしたことがないのだけれど、チラ読みの印象をまとめるとこんなとこでしょうか。
 かつてよくお越しいただいていた北海道の作家でブロガーの“優一郎”さんが満点を付けられていたのを覚えていて、数か月前にレンタルショップで中古DVDが出ていたので買っていたものであります。

 ヒロインの名前はマリオン、彼氏の名はジル。この一組の男女の出会いから結婚、出産、そして離婚までのストーリーを五つの章に分けて描いた映画です。原題が【5×2】っていうんですが、何ともそっけないですなぁ。
 五つの章に勝手に簡単なタイトルを付けてみました。映画のように逆進ではなく順行時系列です。
 ①出会い、②結婚の日、③出産、④倦怠期のとある夜、⑤離婚(別れの日)てな具合。
 これが⑤から①に向かって話が進むんですからおかしな感じですよね。⑤の話が進んでいる途中に過去のエピソードが細切れに挿入されるんなら今までにも観た事がありますが、これはまさに逆進する時系列ですから前代未聞。
 事前情報無しで観た最初は、章が代わる度に情報がリセットされる感じがしてイラッとしました。なので、それぞれの章の始まりの時間をメモって、2回目は正規の時系列ではどういうストーリーになるか試してみました。どなたかが書かれていましたが、それぞれ短編映画として観ても宜しいような感じでしたね。

 さて、最後にもう一度オゾンさんの作ったもの(逆進)を再度最初から観ることにしましたら、情報がたっぷり入っているのでイライラすることはなく、新しい発見もありました。ツイートでは『映画を否定した映画』なんて書いてしまいましたが、普通の映画のように過去の積み重ねと情報の積み重ねが相乗作用となっていく事はないけれども、情報の積み重ねによる影響を見てみるという観点からは実験的に意味があるのかも知れません。とは言いながらも、僕自身は大きな意味は見いだせなかったですが。
 最初に痛々しい離婚の章を見たので、出会いとか結婚の日のエピソードが、見た目は100%ハッピーなのに、この二人にはやがて暗い運命が待ち構えているんだなぁと普段とは違う受け止め方をしているのが新しい体験でしたね。

 冒頭の離婚の章について少し書いておきましょう。
 弁護士事務所で事務的にことを進める二人の様子が描かれた後、驚いた事に離婚したばかりの二人はホテルの部屋に入る。何が始まるのかと見ていると、ジルの方がさっさと服を脱ぎ始め、マリオンも洗面所に入っていく。裸になった二人は一つのベッドに入り、マリオンが『抱いて』と声をかける。
 ウ~ん、これってどうなんでしょ?にわかには信じられないけど、案外こういう元夫婦もいるのかもって気にもなるけど・・・。

 二人の様子から感じ取れるのは、マリオン以上にジルの方に未練があるという事。別れ際に『やりなおせないか?』と言うくらいですから。
 でもマリオンにはその気はない。ただ、憎くて憎くて別れるのではない事は、この最後のベッドインにいやいや応じているわけでもないらしいことから察せられる。ジルが傷つきやすいという事もマリオンは知っているし、彼が自分(マリオン)を愛しながらも何処かで憎んでいることも知っている。
 さて、二人のこの関係はどうやって作られていったのか? 子供もいるらしいのに。

 映画的興味はこの後ふり返られる二人の過去に、離婚の原因を探っていく所にあります。
 ④の章で二人にはすでに倦怠期の匂いがしますし、嬉しいはずの③の章でさえも夫婦の繋がりの危うさが前面に出ています。ですから③の章まで『何故?』という思いを抱きつつ、尚且つ新しい『何故?』も増えていく事になります。
 全ての発端、それは②の“結婚の日”の章で明らかになりますが、これ以上はネタバレになりますので割愛します。個人的にはその出来事もあまりに常識を逸脱しているので、お話し的にどうなの?とも思うんですが、冒頭の離婚夫婦のベッドインと一緒で、人間の不可思議さなのかなぁとも思ったりするわけです。
 お薦め度は★二つ。お話が男女の性愛に特化し過ぎてるのと、意図的にスルーされてる肝心な部分が多過ぎじゃないかと。

 マリオンを演じたヴァレリア・ブルーニ=テデスキが、2004年のヨーロッパ映画賞で女優賞にノミネートされたそうです。
 出演時は30代最後の年のようですが、ナイスバディだし、色っぽい表情も素敵でした♪





ネタバレ雑感はコチラ

・お薦め度【★★=悪くはないかもネ】 テアトル十瑠

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