テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

真昼の死闘

2010-01-30 | 時代劇・西部劇・歴史劇
(1970/ドン・シーゲル 監督/クリント・イーストウッド、シャーリー・マクレーン/105分)


 マカロニ・ウェスタンには全然興味が無かったものですから、これが何かのパロディなのかは分かりませんし、俺にマカロニ擬きを作らせればこんなもんさとシーゲルさんが仰有ったのではないか、なんて全く勝手な想像ですが、そんな事も考えてしまいました。イーストウッド&シーゲルコンビの「マンハッタン無宿」に続く2作目。この後、大ヒットの傑作「ダーティハリー」が生まれます。

 マカロニ時代と同様の髭面のイーストウッドが流れ者のガンマンに扮し、ひょんな事で知り合った尼さんのシャーリー・マクレーンと荒野を旅する話。シャーリーが尼さん?、と双葉さんなどは最初っから眉に唾してご覧になったとか。何やら訳ありげな、別の言い方をすると胡散臭い尼さん。時々聖職者らしからぬ言動をチラチラと見せまして、そのおとぼけ具合もシャーリーさんならではの味があり、彼女には珍しい西部劇でもあり、40年ぶりの再会が誠に懐かしいBS放送でした。

 舞台は南北戦争後のアメリカの隣国、メキシコ。
 ラテン系アメリカのメキシコだから、スペインの支配下にあったことは容易に想像していましたが、アメリカが南北戦争をやっている頃は、メキシコはナポレオン三世時代のフランスに侵略されていたとは知りませなんだ。その後、アメリカの支援を受けてフランスから解放されることになるわけですが、丁度、そのフランスの騎兵隊vsメキシカンゲリラの闘いまっただ中の時代のお話であります。

 荒野を旅する流れ者ホーガン(イーストウッド)が三人のならず者に乱暴されかかっている女を助ける。半分脱がされかかっていた衣服をきちんと着ると、なんと彼女はサラ(マクレーン)という布教中の尼僧であった。女が一人でこんな荒野を?とホーガンが訝っていると、暫く前までは北部の町チワワの教会にいたが、メキシコのゲリラのために募金をしたカドでフランス兵に追われているとのこと。ホーガンはチワワのフランス部隊にあるであろう軍資金を狙ってメキシコ人の仲間と落ち合う予定でもあり、サラがチワワの様子に詳しいこともあって、彼女と行動を共にするのであった・・・。

 ガラガラ蛇にインディアンの襲撃、尼さんの乗っているラバが脚を故障したりと一難去って又一難。途中の村人からフランス軍の列車がゲリラ対策用の爆薬を積んで発車したと聞けば、待ち伏せして陸橋ごと列車を爆破する。
 公開時コピーは<烈風すさぶ荒野の果て! ダイナマイト抱いた 不死身の奴!凄絶無比のアクション大西部劇! >
 確かにダイナマイトの扱いは手慣れたホーガンでしたが、このコピーには偽りありですな。おまけに、「真昼の死闘」などというタイトルも(大いに)“看板に偽りあり”です。
 マカロニ風に簡単に人が死んでいきますが、“死闘”らしきもんは殆ど夜中でありました。

 凄腕ガンマンの無頼漢が美人の尼さんには興味津々だが流石に手がさせないというおかしみを漂わせながら、シーゲルさんらしくハラハラ、ドキドキもがっちり作る。終盤のクライマックスでは、フランス軍対メキシコゲリラの銃撃戦を、弟子のペキンパー擬きの残虐ショットも織り交ぜながら見せるというサービスあり。
 サービスといえば、冒頭にはノーブラ、ノーパンのシャーリーさんにもお目にかかれますぞ。
 時にシャーリーさん30代半ば、イーストウッドは40歳という男盛り、女盛りの作品。娯楽アダルト・ウェスタン(注)の佳品であります。

 原題は【Two Mules For Sister Sara】。シスターサラと二人の頑固者。頑固者とはラバとホーガンのことでしょうな。
 音楽はエンニオ・モリコーネ。クリントさんのお声掛かりでしょうか。ラバの鳴き声に似せた音を入れてとぼけた味が出ております。トレーラーじゃないけれどコンパクトに纏まった動画(↓)で流れる音楽は、映画のものではないようです。




(注):アダルト=“大人”の意。AVにあらず。

・お薦め度【★★★=一見の価値あり】 テアトル十瑠

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8 コメント

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観ました。^^ (vivajiji)
2010-01-30 17:14:45
ほんと、題名が大げさというか意味不明(- -)

一筋縄じゃいかない男と
体力・知力・艶力あふれるオナゴの珍道中。
「出逢い」系シーゲル版ウエスタン?^^

お陀仏ガラガラヘビのあのような使い道や
イーストウッドの台詞も面白かったですね。

それにしても化粧濃い尼さんでした。

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「出逢い」系 (十瑠)
2010-01-30 21:12:40
なるほど、「出逢い」系の男女のようでもありますな。
ふふ。
化粧の濃いのも眉唾尼さんだから許しましょうか。
あの煙草の吸い方とか、ロバとの交換を思いつく辺りのシャーリーさんの表情の面白いこと!

殆ど主役の二人の活躍ばかりだったのも、「出逢い」系でしたね。
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大げさなコピーだったんですね (宵乃)
2010-01-31 09:57:00
どちらかというと珍道中の部分が印象に残っているので、コピーを聞いただけじゃこの映画のものだとわからなそうです(笑)

シャーリーさんには、途中まですっかり騙されてしまいました。もはや彼女の見せ場しか覚えていません。
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宵乃さん (十瑠)
2010-01-31 11:12:02
男女の珍道中には面白い作品も数々ありまして、これもそんな一品。
BGMがピッタシでしたよね。

>もはや彼女の見せ場しか覚えていません。

ハハハ。すっかりのちの名監督もくっちまいましたか
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Unknown (Kiki)
2010-03-06 00:53:51
十瑠さん。これ、ほんとダメダメな邦題で損してる映画ですよね。原題の、シスター・サラの2匹のラバのうちの1匹は、間違いなくホーガンの事ですね。(笑)
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kikiさん、いらっしゃいませ (十瑠)
2010-03-06 09:00:00
>ダメダメな邦題

内容に合ってないという意味ではその通りですが、西部劇ファン向けの思いっきりのPON引き根性丸出しのネーミングですね。
当時は監督と主演の二人を目当てに観に行ったものですから、観終わってから変なタイトルに気付きました。^^
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シャーリーが可愛かったです (mayumi)
2010-04-26 00:54:18
十瑠さん、こんばんは。
シャーリー・マクレーンのシスターぶりが可愛かったです。彼女がラバの代わりに手に入れるロバがまた可愛くて(笑)。およそ西部劇らしくなかったですね。
それにしても、十瑠さんも書いてらっしゃいますが、本当に邦題はなんじゃこりゃですね・・・。何故真昼・・・。
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なんじゃこりゃの・・・ (十瑠)
2010-04-26 09:17:29
邦題の件ですが、要するに彼の名作「真昼の決闘」にあやかっただけでしょう。実に映画ファンを馬鹿にしてますよね。
クリントファン、シーゲルファン、その他諸々馬鹿にしております。コレはコレで面白いんだから
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