かれこれ40年近く前でしょうか、最初に観たのは。その後とんとお目にかかる機会もなく、しかしながら、「地下水道」というタイトルも、真っ暗で臭そうな下水道を必死で逃げる人たちの姿や、マンホールを上って地上に出たところで周りにはドイツ兵がうじゃうじゃなんていうシーンもずっと忘れずにいました。
今回はNHK-BSではアンジェイ・ワイダ監督のドキュメンタリーも同時期に放送していて、そちらも面白い内容でした。合わせて観ると、ドキュメンタリーで紹介されたポーランドの歴史により、描かれていない「地下水道」の政治的な背景も分かり感慨深いものがあります。撮影当時、社会主義体制でソ連の影響下にあったポーランドでは映画製作にも検閲があり(反ソ連的な表現は御法度であった為)、特に政治的なテーマが多いワイダ監督の苦労話も興味深いものでした。
「地下水道」は第二次世界大戦末期のポーランドが舞台。
NHKの解説では<第二次大戦末期のワルシャワほう起における対独レジスタンスの戦いを、全編の3分の2を占める地下水道を舞台とした悲惨な極限状況の中に描き出す。当時、弱冠31歳だったワイダによるドキュメンタリー・タッチのリアルで冷徹な映像は圧巻。カンヌ映画祭審査員特別賞受賞。>
ドキュメンタリーによれば、ワルシャワ蜂起の背景にはソ連軍のポーランド進駐=ドイツ軍の撤退という計画図があったようですが、ソ連軍はワルシャワのすぐ側まで来ていながら、レジスタンスと協調することなく、むしろドイツ軍に好き放題にさせた。そこにはスターリンの非情な思惑があり、結局、愛国心の強いポーランド人たちが20万人も見殺しになってしまったわけです。
「地下水道」にはそういう反ソ連的な思想も製作の裏側にはあったはずですが、出来上がったものは悲しい戦争の記録であり、反ソのムードは全然出ていません。
「灰とダイヤモンド」よりも登場人物の心情はわかりやすく、男女の恋愛も絡んでおり、タイトルから想像されるほど無味乾燥なドラマではありません。単調になりそうな下水道でのシーンも、逃げる人々を色合いの違う3班に分けて描いた為に緊張がとぎれないものとなっています。ちょっと、尻切れトンボ風のところもありますがね。
お薦め度は★★★から★★★★。
レジスタンスには民間人もおり、音楽家も出てきます。前半では彼が民家でピアノを弾くシーンもあり、まさに「戦場のピアニスト」でした。
ドキュメンタリーでは、カンヌで一躍注目された時の面白い話も出てきました。当時、西側の映画人たちは「地下水道」のストーリーを架空の話だと思っていたそうです。
(1956/アンジェイ・ワイダ監督/タデウシュ・ヤンツァー、テレサ・イジェフスカ、エミール・カレヴィッチ、ヴラデク・シェイバル/96分)
今回はNHK-BSではアンジェイ・ワイダ監督のドキュメンタリーも同時期に放送していて、そちらも面白い内容でした。合わせて観ると、ドキュメンタリーで紹介されたポーランドの歴史により、描かれていない「地下水道」の政治的な背景も分かり感慨深いものがあります。撮影当時、社会主義体制でソ連の影響下にあったポーランドでは映画製作にも検閲があり(反ソ連的な表現は御法度であった為)、特に政治的なテーマが多いワイダ監督の苦労話も興味深いものでした。
「地下水道」は第二次世界大戦末期のポーランドが舞台。
NHKの解説では<第二次大戦末期のワルシャワほう起における対独レジスタンスの戦いを、全編の3分の2を占める地下水道を舞台とした悲惨な極限状況の中に描き出す。当時、弱冠31歳だったワイダによるドキュメンタリー・タッチのリアルで冷徹な映像は圧巻。カンヌ映画祭審査員特別賞受賞。>
ドキュメンタリーによれば、ワルシャワ蜂起の背景にはソ連軍のポーランド進駐=ドイツ軍の撤退という計画図があったようですが、ソ連軍はワルシャワのすぐ側まで来ていながら、レジスタンスと協調することなく、むしろドイツ軍に好き放題にさせた。そこにはスターリンの非情な思惑があり、結局、愛国心の強いポーランド人たちが20万人も見殺しになってしまったわけです。
「地下水道」にはそういう反ソ連的な思想も製作の裏側にはあったはずですが、出来上がったものは悲しい戦争の記録であり、反ソのムードは全然出ていません。
「灰とダイヤモンド」よりも登場人物の心情はわかりやすく、男女の恋愛も絡んでおり、タイトルから想像されるほど無味乾燥なドラマではありません。単調になりそうな下水道でのシーンも、逃げる人々を色合いの違う3班に分けて描いた為に緊張がとぎれないものとなっています。ちょっと、尻切れトンボ風のところもありますがね。
お薦め度は★★★から★★★★。
レジスタンスには民間人もおり、音楽家も出てきます。前半では彼が民家でピアノを弾くシーンもあり、まさに「戦場のピアニスト」でした。
ドキュメンタリーでは、カンヌで一躍注目された時の面白い話も出てきました。当時、西側の映画人たちは「地下水道」のストーリーを架空の話だと思っていたそうです。
(1956/アンジェイ・ワイダ監督/タデウシュ・ヤンツァー、テレサ・イジェフスカ、エミール・カレヴィッチ、ヴラデク・シェイバル/96分)
>本が出版されたのが1946年で(すぐ絶版処分になったけど)ワイダも読んだのではないか・・・と想像する人もいるみたいです。
なるほど、そういうこともあるかも知れないですね。
ワイダの最新作「カティンの森」の裏側についても放送されていまして、とても観たいのですが、まだです。
今回が初見だったので前半が微妙にあやふやなんですが、抵抗三部作の中では一番分かりやすくて、すぐに入り込めました。
あの音楽家は「戦場のピアニスト」を思い出しますよね。
本が出版されたのが1946年で(すぐ絶版処分になったけど)ワイダも読んだのではないか・・・と想像する人もいるみたいです。
なんだかポーランドの歴史を少し勉強してみたくなりました。(アンジェイ・ワイダ監督のドキュメンタリー、再放送しないかな?)
確かに後半の下水道のシーンは、映画館で観るとそこまで余裕を持ってられないかもです。
マンホールに仕掛けられた爆弾を取り除くシーンなどは巧かったですねぇ。
映画館で観た時は、観ている当方がその現場に居合わせているような息苦しさを感じたものです。
だから、苦労の末にやっと外に出たらドイツ兵が立っていた、というエピソードには、こちらの腰もへなへなになりましたよ。
TVではそこまでの衝撃はありませんが、却って客観的に観られますね。十瑠さんの評価も妥当な感じがします。