(1972/キャロル・リード監督/ミア・ファロー、トポル、マイケル・ジェイストン/93分)
ネタバレあります。
anupamさんとか、viva jijiさんとか、ブログ仲間にもこの映画のファンは多いんですよね。
日本公開は73年だから、35年前に観た映画だけど、未だに『♪フォ~ロ~、フォ~ロ~』というジョン・バリーのメロディーは忘れていない。それほど、テーマ曲と内容がピッタシ合った映画だった。
結婚はゴールじゃない。妻と夫になっても恋心を失ってはいけない。そんなミア・ファローの台詞が、大昔に観た時には半分絵空事に聞こえていたが、配偶者と何十年も暮らしていると、ちょいと思い直してみたくもなる、そんな作品です。恋とか愛とかいうよりは、思いやりっつうヤツですかな。
『恋愛時代には相手に自分の宝を見せていたのに、結婚した途端に与えることを忘れてしまう』 (なんか、ちょっと痛いな)
生まれも育ちもロンドンで、仕事は公認会計士。見るからにお堅い英国男性チャールズは、なかなか女性運がなく、顧客の娘さんや友人の妹などを紹介されて付き合ってもすぐに別れてしまう。そんな彼がふと見かけたレストランで、ウェイトレスをしているベリンダと知り合う。カリフォルニア出身で両親は離婚、世界を旅する途中だという彼女は、チャールズの博識に興味を持ち、彼から色々なことを教わるのを自分の楽しみと出来る女性だった。
育ちも習慣も違う二人が、互いに惹かれ合い結婚する。
ところが、結婚後しばらくしてベリンダは昼間から頻繁に外出し、夜の約束にも遅刻してくるようになる。妻の浮気を疑い始めたチャールズは、探偵事務所を訪れ調査を依頼するのだが・・・というお話。
夫婦ネタですが、「孔雀夫人」のようなシリアスなものではなく、コメディです。ドタバタではなく、ほんわかとしたロマンチックなコメディ。英国の巨匠、キャロル・リード監督の遺作でもあり、全編にちりばめられたロンドンの風景は、監督の優しい眼差しが選んだに違いないと思わせる素敵なものでした。
ベリンダに扮したのがミア・ファロー。ヒッピーの割には素直で思いやりのあるという、ミアのピュアな雰囲気が生きた役柄でした。
お堅いチャールズのマイケル・ジェイストンも文句無し。
実はベリンダと似たもの同士のような探偵、クリストフォルーに扮したのがトポル。前年のミュージカル大作「屋根の上のバイオリン弾き」で主人公の老人を演じて話題になった人ですが、ホントはこんなに若かったんだということでも話題になりました。
グルッと大きな眼(まなこ)にたっぷりの鼻髭。真っ白のハンチングに白いズボン、おまけに真っ白なレインコート。およそ探偵に似つかわしくないスタイルが笑わせる。ついでに追跡に使うスクーターも白だ。まるでサンタクロースみたいに、いつも抱えているバッグまでが白だったりする。
依頼されたとおり人妻を尾行する探偵。浮気現場を掴むのが目的だが、人妻はロンドンの街中をアチコチぶらぶらするだけで誰かと逢う気配はない。テムズ川の遊覧船に乗り、ハイドパークを散策し、映画館に入る。その内に探偵は気付く。彼女は寂しいだけなんだ。孤独なんだ。満たされない心を抱え、何かで隙間を埋めようと歩いているだけなんだと。
探偵は、段々大胆になる。自分がこの人を癒してあげよう。わざと見つかるような行動をとり、街の中を案内する。しかし、声はかけない。
人妻の方も最初は奇妙な人と思うが、不思議と危険は感じない。その内ヌーボーとした表情の男の優しい眼差しに癒されている自分に気付く。
この映画は三角関係を描こうとしたのではなく、夫婦のあり方を描いたものだから“男性”を感じさせないトポルのようなキャラクターが合っていたんですね。
原作、脚本が、この12年後に「アマデウス」でオスカー受賞のピーター・シェイファー。この作品でも、構成の上手さと“二度聞き”したくなる含蓄ある台詞が名脚本家の片鱗を見せています。
原作の舞台劇は一幕ものらしいですが、映画は大きく分けると4部に分かれています。3部までは過去話の挿入、最終章が現在進行形となっています。
冒頭で探偵事務所に出かけるチャールズが少し描かれた後、数日後のチャールズの事務所に、探偵クリストフォルーが現れます。最初に担当として紹介されていた探偵とは違っていたのでチャールズも気づかないわけですが、クリストフォルーも事故で降板した前の担当から詳しく事情を聞いていなかったので、調査の報告をする前に、チャールズ夫妻の馴れ初めなどを聞きたいと言います。
こうして、探偵にチャールズがベリンダとの出逢いや結婚に至った経緯、その後の夫婦生活などについて語るのが第1部となります。
その後、今度は探偵が調査の報告を始めます。ここが第2部。
チャールズが仕事に出かけた後、タクシーを拾って家を出ていくベリンダをスクーターで追うクリストフォルー。遊覧船に乗ったり、公園での尾行などを話します。あくまでも探偵の目として客観的に。チャールズがプレゼントした変な帽子をベリンダが公園のクズ篭に捨てた話は、彼を傷つけないように脚色をします。
結論は?と聞かれ、クリストフォルーは言います。確かに男が居ることには居るが、不倫をしている証拠はない。二人はキスをするでもなく、ただ静かに見つめ合い、心を通じ合わせているだけなのだと。チャールズは男の住所を聞くが、メモが見当たらないと言う探偵に、今夜知らせるようにと言って帰します。
気もそぞろのチャールズは、午後の顧客の予定をキャンセルして家に帰りベリンダを待ちます。やはり、今夜も外出から帰ってきたベリンダとチャールズは言い争いを始めます。そしてチャールズはベリンダに外出先で逢っている男について問いつめるのです。
『何故、彼のことを?』
今度はベリンダが男について語り始めます。ここが第3部です。
この後の流れはお分かりになりますね。
第4部は、初めて観た時にはお説教臭いとか、白々しいとか、そんな感想を持ったように記憶していますが、年をとって観ると、何故かしっかりと観ている自分に気付きます。
あんな男女が結婚するわけないとか、そんな事も思ったはずですが、今なら意外にありじゃないか、な~んてね。
イギリスでのタイトルは邦題と同じ【FOLLOW ME!】。何故かアメリカでは【THE PUBLIC EYE】と変えて公開されたそうです。
ネタバレあります。
anupamさんとか、viva jijiさんとか、ブログ仲間にもこの映画のファンは多いんですよね。
日本公開は73年だから、35年前に観た映画だけど、未だに『♪フォ~ロ~、フォ~ロ~』というジョン・バリーのメロディーは忘れていない。それほど、テーマ曲と内容がピッタシ合った映画だった。
結婚はゴールじゃない。妻と夫になっても恋心を失ってはいけない。そんなミア・ファローの台詞が、大昔に観た時には半分絵空事に聞こえていたが、配偶者と何十年も暮らしていると、ちょいと思い直してみたくもなる、そんな作品です。恋とか愛とかいうよりは、思いやりっつうヤツですかな。
『恋愛時代には相手に自分の宝を見せていたのに、結婚した途端に与えることを忘れてしまう』 (なんか、ちょっと痛いな)
*
生まれも育ちもロンドンで、仕事は公認会計士。見るからにお堅い英国男性チャールズは、なかなか女性運がなく、顧客の娘さんや友人の妹などを紹介されて付き合ってもすぐに別れてしまう。そんな彼がふと見かけたレストランで、ウェイトレスをしているベリンダと知り合う。カリフォルニア出身で両親は離婚、世界を旅する途中だという彼女は、チャールズの博識に興味を持ち、彼から色々なことを教わるのを自分の楽しみと出来る女性だった。
育ちも習慣も違う二人が、互いに惹かれ合い結婚する。
ところが、結婚後しばらくしてベリンダは昼間から頻繁に外出し、夜の約束にも遅刻してくるようになる。妻の浮気を疑い始めたチャールズは、探偵事務所を訪れ調査を依頼するのだが・・・というお話。
夫婦ネタですが、「孔雀夫人」のようなシリアスなものではなく、コメディです。ドタバタではなく、ほんわかとしたロマンチックなコメディ。英国の巨匠、キャロル・リード監督の遺作でもあり、全編にちりばめられたロンドンの風景は、監督の優しい眼差しが選んだに違いないと思わせる素敵なものでした。
ベリンダに扮したのがミア・ファロー。ヒッピーの割には素直で思いやりのあるという、ミアのピュアな雰囲気が生きた役柄でした。
お堅いチャールズのマイケル・ジェイストンも文句無し。
実はベリンダと似たもの同士のような探偵、クリストフォルーに扮したのがトポル。前年のミュージカル大作「屋根の上のバイオリン弾き」で主人公の老人を演じて話題になった人ですが、ホントはこんなに若かったんだということでも話題になりました。
グルッと大きな眼(まなこ)にたっぷりの鼻髭。真っ白のハンチングに白いズボン、おまけに真っ白なレインコート。およそ探偵に似つかわしくないスタイルが笑わせる。ついでに追跡に使うスクーターも白だ。まるでサンタクロースみたいに、いつも抱えているバッグまでが白だったりする。
依頼されたとおり人妻を尾行する探偵。浮気現場を掴むのが目的だが、人妻はロンドンの街中をアチコチぶらぶらするだけで誰かと逢う気配はない。テムズ川の遊覧船に乗り、ハイドパークを散策し、映画館に入る。その内に探偵は気付く。彼女は寂しいだけなんだ。孤独なんだ。満たされない心を抱え、何かで隙間を埋めようと歩いているだけなんだと。
探偵は、段々大胆になる。自分がこの人を癒してあげよう。わざと見つかるような行動をとり、街の中を案内する。しかし、声はかけない。
人妻の方も最初は奇妙な人と思うが、不思議と危険は感じない。その内ヌーボーとした表情の男の優しい眼差しに癒されている自分に気付く。
この映画は三角関係を描こうとしたのではなく、夫婦のあり方を描いたものだから“男性”を感じさせないトポルのようなキャラクターが合っていたんですね。
原作、脚本が、この12年後に「アマデウス」でオスカー受賞のピーター・シェイファー。この作品でも、構成の上手さと“二度聞き”したくなる含蓄ある台詞が名脚本家の片鱗を見せています。
原作の舞台劇は一幕ものらしいですが、映画は大きく分けると4部に分かれています。3部までは過去話の挿入、最終章が現在進行形となっています。
冒頭で探偵事務所に出かけるチャールズが少し描かれた後、数日後のチャールズの事務所に、探偵クリストフォルーが現れます。最初に担当として紹介されていた探偵とは違っていたのでチャールズも気づかないわけですが、クリストフォルーも事故で降板した前の担当から詳しく事情を聞いていなかったので、調査の報告をする前に、チャールズ夫妻の馴れ初めなどを聞きたいと言います。
こうして、探偵にチャールズがベリンダとの出逢いや結婚に至った経緯、その後の夫婦生活などについて語るのが第1部となります。
その後、今度は探偵が調査の報告を始めます。ここが第2部。
チャールズが仕事に出かけた後、タクシーを拾って家を出ていくベリンダをスクーターで追うクリストフォルー。遊覧船に乗ったり、公園での尾行などを話します。あくまでも探偵の目として客観的に。チャールズがプレゼントした変な帽子をベリンダが公園のクズ篭に捨てた話は、彼を傷つけないように脚色をします。
結論は?と聞かれ、クリストフォルーは言います。確かに男が居ることには居るが、不倫をしている証拠はない。二人はキスをするでもなく、ただ静かに見つめ合い、心を通じ合わせているだけなのだと。チャールズは男の住所を聞くが、メモが見当たらないと言う探偵に、今夜知らせるようにと言って帰します。
気もそぞろのチャールズは、午後の顧客の予定をキャンセルして家に帰りベリンダを待ちます。やはり、今夜も外出から帰ってきたベリンダとチャールズは言い争いを始めます。そしてチャールズはベリンダに外出先で逢っている男について問いつめるのです。
『何故、彼のことを?』
今度はベリンダが男について語り始めます。ここが第3部です。
この後の流れはお分かりになりますね。
第4部は、初めて観た時にはお説教臭いとか、白々しいとか、そんな感想を持ったように記憶していますが、年をとって観ると、何故かしっかりと観ている自分に気付きます。
あんな男女が結婚するわけないとか、そんな事も思ったはずですが、今なら意外にありじゃないか、な~んてね。
イギリスでのタイトルは邦題と同じ【FOLLOW ME!】。何故かアメリカでは【THE PUBLIC EYE】と変えて公開されたそうです。
・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて】
ラスト、あの夫もね、同じように・・そうじゃなかったでしたっけ?
この映画は2本立ての2番館でたった1回見たのみですが、忘れられない作品ですね。
今こういう作品・・ないよね~
作るとしたら、配役に若いトップスターとか使わないとね、難しいかもしれません
ヨーグルトもよく食べてましたし、フルーツはお猿さんに取られちゃいました。
バーに刺さった、櫛団子みたいなのも歩きながら食べてましたね。
>作るとしたら、配役に若いトップスターとか使わないとね、難しいかもしれません。
オリジナルを越えることは出来ないだろうけど、リメイク許しましょう。オリジナルの再評価の為にもね。
ヘタに説明しなくても観るほうに
ちゃ~んとわかる伏線と要所を踏まえた
台詞とスムーズな流れ。
印象的な音楽・・・
リメイクですか~
ミアのあのなんとも言えない“浮遊感”を
出せる女優が今いるかな?
トポルの役はちょいと間違うと
単なる、ニヤけたストーカーに。
シンプルなストーリーほど
アラが目立って難しいわよ~
うん?
ちょっと待ってモメント。
いまポッと浮かんだわ~^^
ヨハンソン、どうかしらね。
問題は探偵よ。
「ママの遺したラブソング」で
彼女と共演したトラボルタあたりどうかしら。
繊細さはイマイチかも知れないけれど
彼巧くなったしあの笑顔がうさん臭くていいかもよ。
ダンナ役は「リトル・ミス・サンシャイン」の
お父さん役、グレッグ・キニアに決まり!
もしかして探偵役にW・アレン爺やが
名乗りを上げるかも知れませんが
私が、即、却下するからだいじょぶ。
さっき、再チャレンジしましたが、やはりNGでした
35年前より、その良さが分かる映画でしたね。
>ミアのあのなんとも言えない“浮遊感”を出せる女優が今いるかな?
>ヨハンソン、どうかしらね。
すんません。あんまり見てないんでイメージが湧きません。
体型だけなら、キーラちゃんとか浮かぶけど、ちょっと違いますもんね。
グレッグ・キニアもよく知りませんが、旦那役はなんとかなりそうです(多分誰か居る)よね。
問題は探偵ですよ。
寅ちゃん、もとい、トラちゃんはトポルより歳くい過ぎ。
ちょっと前なら、R・ウィリアムズとかリチャード・ドレイファスとか、いけそうですけどね。
いかにも二番煎じっぽいですか?
そうだったのですね!「通りで」と納得が深く深くいきました。
アマデウスでもサリエリのお菓子を食べるシーンが嫌にねっとりと印象深かったですもの(笑)。
トポルのファンなのでクリストファー役は誰にもやって欲しくないですね(勿論ミア・ファローだって)。そうそう、最近彼女を何かの映画でちらっと観ました。普通になっていてがっかりでした。あれだけの個性を持っていた女優さんだったので期待が大きすぎたのでしょうが・・。
十瑠さん、マカロンを食べたらもっとフォロー・ミーに近づけますよ!
あっ、太ったのはもっと前からですけど、マカロンを食べたのはホントです。お菓子屋さんでもよく見かけるようになりましたからね。
>普通になっていてがっかりでした。
なんの映画でしょうかね?
普通の女性を演じていたのなら、普通になっていて当然ですから、普通じゃない役どころだったんですね。
ミア・ファローの作品で、夢見がちな女性という意味では「カイロの紫のバラ」がお薦めですね。