テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

セイブ・ザ・タイガー

2018-07-13 | ドラマ
(1973/ジョン・G・アヴィルドセン監督/ジャック・レモン、ジャック・ギルフォード、ローリー・ハイネマン、パトリシア・スミス、ララ・パーカー/101分)


 大昔にジャック・レモンが主演オスカーを獲った映画として記憶しておりましたが、1973年でしたか。「ペーパー・ムーン」、「スティング」、「ジャッカルの日」など名作が目白押しの73年でしたので、賞レースにも関心が高かったんでしょうかね。
 『SAVE THE TIGER(虎を救え)』なんちゅうタイトルではどんな映画かも分からず、結局日本では未公開なので「SCREEN」でも紹介されませんでした。今回近所のゲオさんで見つけて内容不明のままレンタルしてきました。

 地味、であります。
 後に「ロッキー」を撮るアヴィルドセン監督らしからぬ地味さ加減であります。

 主演のレモンが扮するのは西海岸のビヴァリーヒルズに居を構える服飾メーカーの社長ハリー・ストーナー。ニクソン政権下で経済も悪くなっていた時代で、従業員100人に満たない中企業のオーナーの資金繰りに汲々している二日間を描いた作品であります。
 『SAVE THE TIGER』というタイトルは、街頭で絶滅にひんしている虎などの野生動物の保護を訴える男がチラっと出てくるのがヒントになっているんでしょうが、要するにストーナーさんもそういう絶滅危惧種の人間であるという事なんでしょうね。

*

 第二次世界大戦ではイタリアに従軍し大勢の仲間を失ったハリー。あれから数十年、会社を興してなんとかやって来たが、最近はやたらと昔を懐かしむことが増えてきて、妻には精神科のセラピーを受けるようにと言われている。毎朝、何かにうなされながら起きているからだ。
 一人娘はスイスに留学させており、それは妻の方針だった。この国の近頃の若者ときたら・・・、というのが彼女の考えだった。
 政治も文化も混迷を極めていた、そんな時代だったのでしょう。

 会社は今日、ホテルでの新作ショーという大きなイベントが控えているのだが、意見の合わないデザイナーと裁断師のもめ事や、資金繰りの対処を巡っての経理マン(ギルフォード)との意見のくい違いで神経は安まらない。時々、野球に夢中だった若い頃を思い出すのが心安らぐ時間だった。そして、カーステレオで聴くオールディーズも。
 ショーに合わせてバイヤーもやって来るが、老舗のバイヤーの変態社長の要望にも応えなくてはならない。ここでも経理マンとのやるせない口論が発生する。
 資金調達の案としてハリーは自社工場に放火をして保険金を受け取るしかないと言い出す。右腕の経理マンはそれは犯罪だからやめろと言うが、他に名案もなく、ハリーはその手のつてを頼ることにするのだが・・・。

*

 大きなドラマはありません。男同士の口論というか議論は何度も出て来ますが、決裂することはなく、淡々と流れていきます。
 特に若い人にはお薦めしにくい作品ですが、市内でヒッチハイクする娘(ハイネマン)との交流や、コールガールの登場やら、時代風俗などオジサン世代には懐かしいです。

 製作及びオリジナル脚本のスティーヴ・シェイガンの力作と言えるでしょう。
 アカデミー賞では、レモンの主演男優賞以外に、助演男優賞(ギルフォード)、脚本賞にノミネートされたそうです。

 一夜を共にしたヒッチハイク娘に語るハリーのこの言葉が印象的。
 『犬でも猫でもなんでもいい。何かを愛したい』





・お薦め度【★★★=一見の価値あり】 テアトル十瑠

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