





新型コロナの第三波が猛威を振るっている。GOTOトラベル継続にも批判が集中している。この状況下ではあるが、僕は山形県最上町の「赤倉温泉」に独りで泊まってきた。色々な意見があることは承知である。僕の行為が正しいと声高に主張する気もない。ただ地方の小さな温泉の現状を少しだけ書いてみようと思う。思いつくままに書く。
今回泊まったのは、山形県最上町の赤倉温泉の某旅館である。旅館といっても、建物は二階建てであり、総部屋数は10部屋である。この日の宿泊者は、僕を含めて3組6名だった。元々、団体客が泊まるような旅館ではないし、館内には自動販売機も存在しない素っ気なさである。保養温泉なのである。温泉に入って、素朴だけど美味しいものを食べて、ゆっくりと寛ぐ。そこだけに特化した温泉宿である。そういう規模の温泉旅館は、東北地方のあちこちにある。箱根とか熱海の温泉とは本質的に異なるのである。お風呂は決して大きくないけど、部屋ごとに貸切時間も設定されて、気兼ねなく入ることが出来る。食事は大広間で、間隔を開けて密を避けている。何より客層が少人数で来る温泉ファンであり、大騒ぎする輩もいない。そこに自家用車で出かけるわけだ。こう言うと叱られるかもしれないが、日常生活よりも「ソーシャルディスタンス」が確保されていて、安心なのである。
今いったような温泉旅館、そこで出てくる食事は、近所のお母さんが賄いとして作るご飯が多い。食材は地のものが多く使われ、地元の卸の店から配達される。それを近所のお母さんが調理して配膳するわけだ。もう食べきれないくらいの量を出してくれる。客がいない日は、お母さんたちの仕事も休みになる。温泉街のなかでも廃業する旅館が増えている。一度廃業した旅館が復活するケースは奇跡的な確率でしかない。出来る範囲で旅館に泊まり、少しだけでも力になりたいとの想いで、今回は一番高いプランを選んだ。それでも料金は1万円ちょっと。割引で7千円弱で泊まることができた。普段は持ち込むことの多い缶ビールも、温泉街の食料品ストアで購入した。ここ数日で初めてビール(発泡酒)が売れたと言っていた。「さっき写真撮っていましたよね?」と笑顔を見せる。コロナは心配だろうけど、客が来ることが嬉しいことが伝わってきた。もらった地域共通クーポンは近隣の農産物直売所で全て使い切った。クーポンがなければ買わないようなもの、ニンニクとか椎茸とか、ソーセージなんかを買った。歓楽街ではない、昔からの素朴な温泉街。ささやかな客が、ささやかな移動で楽しむ温泉文化。同じGOTOでも事情は様々だ。十波一絡げにせずに、何らかの対策があれば良いなと思う。
追伸:帰宅した翌日は、自治会の総会があった。こちらの方は「密」だった。温泉旅館の方が安全だった。