四谷三丁目すし処のがみ・毎日のおしながき

蝦蛄(しゃこ)の旬は春と秋の2回。春の入荷は今週で終わりそうだと豊洲市場の仲買さんが言っていたそうです。

鯊 はぜ

2016-09-16 23:35:00 | わたしの魚(ウォ)キペディア 第1回~第

わたしの魚(ウォ)キペディア 第25回 はぜ

027 主人が築地からハゼを仕入れてきた時は何の魚だかわかりませんでした。
「おわっ、泳いでる。何、‥ムツゴロウ?」
「ブブー」
「えー、何だろう」
「天ぷらにすることが‥多いかな」
「天ぷら‥キスの天ぷら、とか?でもキスより頭が大きいね」
「もういっこあるでしょう。有名なやつが」
「有名…有名…ヒントください」
「んー、屋形船、釣り」
「・・・ハゼ?」
「正解!」
ゆるく尻尾を振って泳いでいるハゼをビニール越しに覗き込みました。
「ハゼってこんな感じなんだ。かわいー。黒目がちだからかな」
「黒目がちっていうか、黒目100%だけどね」
「これ‥食べるんだよね」
「そりゃそうだよ、そのために仕入れてきたんだもん」
「お客様の前で生きたままさばくの?」
「そうだね」
「かわいそくない?」
「なんで」
「う~ん」
「かわいいから?」
「‥あ、いや~・・っていうか‥」
「じゃ食べないで店で飼うか」
「いやそれもちょっと‥」
「かわいかったら食べちゃだめで、かわいくなければ食べていいってもんでもないでしょ」
「それはそう!それは絶対そう。ただその‥目の前でビチビチしてるところをなんかする‥っていうのに慣れていないもんで、つい」
ネタ皿に笹を敷きコハダや海老などを並べていく主人の手つきはいつも通りで、穏やかに時間は流れていきました。
「なるたけ無駄を出さずにね」
「‥‥‥」
「きちんとありがたく食べればいいんですよ」
「‥‥‥」
「ね」
「‥はい」
「ん~そういう、こっと~っ」

その日の夜、ご注文をいただいてから主人がハゼをさばく
ところをチラッと見ました。
手早く三枚におろし、透明感のある身をふたつ取り出しました。
よくあんな小さい魚から身がとれるなぁと思いながらシンクの洗い物に集中しました。