おしながきには記載していない細巻があります。その名も『しろ』。
そんな巻物が存在するのも、そういう名前で呼んでいるのも他のお店で聞いたことはないのですが、シンプルにシャリと海苔だけでおいしいのでたまにお出ししたりします。おにぎり屋さんの塩むすびみたいな感覚でしょうか。
誕生の裏話です。まだ店を始めて間もない頃、何か新しい巻物を生み出そうと試みたことがありました。チーズ・トマト・バジルを巻いてオリーブオイルに浸して食べてみたり、ヒラメを薄造りにしたものを中に入れて巻いてみたり、赤身・中トロ・大トロを全部入れて太巻にしてみたり。棒状の餃子を入れてみたこともありました。
最終的に残ったのは、山ごぼう・たくあん・胡瓜・ガリ・大葉・白胡麻を一緒に入れて巻いた細巻と、「いっそ何も入れないっていうのはどう?」と言って巻いたのがこの『しろ』でした。
数年に一度あるかないかの朝寝坊を主人がした時、築地の仲買いさん(仲卸の方)に頼んで配送してもらった貝や魚です。
発泡スチロール内の梱包の美しさには目を瞠るものがあります。蝋引きと呼ばれる茶紙の袋の下には小ぶりの鯵や車海老、キス、赤貝などが各々の場所に収まっていました。この時は五月。砕いたたくさんの氷がビニール袋に入れられて何ヶ所も挿んでありました。
バイクで通う毎日の荷物の梱包にも仲買いさんはかなり気を遣ってくれます。氷は多めにとか、貝は殻が割れにくいような並べ方を、デリケートな魚は傷付かないよう厚紙で覆ってくれ(特に身割れし易いサワラなど)、濡らした新聞紙やシャカシャカ音のする薄手の水色のビニール袋、分厚いビニール袋、白い手提げ袋など他にもたくさんの運搬素材を駆使し、より良いコンディションで店の冷蔵庫に収まるよう力を尽くしてくれます。