四谷三丁目すし処のがみ・毎日のおしながき

蝦蛄(しゃこ)の旬は春と秋の2回。春の入荷は今週で終わりそうだと豊洲市場の仲買さんが言っていたそうです。

鱲 からすみ

2016-09-13 23:35:00 | わたしの魚(ウォ)キペディア 第1回~第

わたしの魚(ウォ)キペディア 第23回 からすみ

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いままでにカラスミを食べた回数を思い出してみました。
十代、二十代通しておそらく一~二回だと思うのですが、ハッキリとした映像が出てきません。
ただ薄く切ったカラスミを噛んだ時、前歯の裏にくっ付く感じがあり舌の先で嘗めるとなかなかとれなくて、いつまでも美味いなぁと幸せな気分になっていたように思います。

数年前から当店ではカラスミを仕込むようになりました。
ボラの卵巣を扱う時の主人の所作は宝石商のようです。茶紙の袋から取り出す、塩をまぶす、酒に浸たす、重石をして干す、様子を見る、触る、また干す‥どの作業も丁寧で慎重です。干している期間に中指の腹でペタペタと触るところを目撃したこともあります。常に熟成具合を気にして過ごす二週間です。

シーズン始めの卵巣はやや小ぶりでキメが細かい感じなのですが、十二月近くにもう一回カラスミを作ろうと仕入れると大きめの卵巣に何筋か血管が目立つように走っていて、これを取り除かないと臭みにつながるので主人は神経を集中させて外側の膜を破らないように血を取り除きます。
まな板のところに折りたたみ椅子を持ってきて座り、ライトのもとでボラの卵巣を横たわらせ、骨抜きの背の部分で慎重に血管の血をしごき、金串の先で小さな穴を開けて絞り出します。この時は宝石商ではなく、テレビで見たことのあるオペ中のお医者さんみたいです。
その完璧に仕上げた卵巣に一回目のようにまた塩をまぶし数時間おいて、お酒に浸け、干します。水分が抜け旨みが凝縮していくのを待ちます。

カラスミを作る時はガラスのまな板で挟んで重石をのせます。

トリ貝をさばくために特注した、あのガラスのまな板です。