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南の海のワナビ

小説家を目指す「南野海」の野望ははたして達成されるのか?

カルナバル、開幕!

2007-04-24 22:54:39 | 読書
 さあて、深見真先生の、ヤングガンカルナバル最新刊、「前夜祭・標的は木暮塵八」(トクマノベルズEdge)をついに読みました。
 さあ、いよいよ、盛り上がってきましたよ。
 ついにクライマックス突入か? って感じです。
 まず、冒頭で弓華の愛しの伶ちゃんが誘拐されちまいます。誘拐したのは弓華の腹違いの弟、ギャウザル。
 そして伶ちゃんは、哀れ素っ裸にひんむかれ、ガラス張りの檻の中に。
 その外側には、人間性を失った男「人間ブタ」たち。
 うっひゃああ。ラノベレーベルでは書けない、ノベルズならではのヤバい描写。
 弓華の母親、志摩麗華こと聖火は、「伶を助けたかったら、仲間のヤングガンをひとり殺せ」とせまるのであった(くぅ~っ、サディスト母ちゃんだぜ)。
 弓華は「人間ブタ」たちを蹴散らしつつ、「必ず助けるから」とガラス越しのキス。そしてしばしのお別れ。
 そんな爆弾を抱えつつ、ついにカルナバル開幕。
 これによって、ハイブリッド、鳳凰連合、豊平重工、飛龍会、ヴェルシーナなど、これまで出てきた殺し屋軍団に、新顔のホンチーバン、翼心会のメンバーによるメキシコ市街での殺し合いバトルロイヤル開始。
 我らがハイブリッドの面子は、塵八、弓華、毒島、ソニア、そして……。
 ハイブリッドのボス、白猫さんはカルナバル開催のために人質に。
 弓華らが負ければ、白猫さん、弓華の母ちゃんの玩具になること必至。
 なに、このハイテンション?

 カルナバル、ファーストバトルはメンバーがメキシコに着くや否や始まった。
 ハイブリッドの友軍、飛龍会が襲われた。相手はホンチーバン、中国の黒社会組織。
 相手は中国拳法の達人じじいだ!(ついに出たよ、拳法の達人、わくわく)
 平等院将一、いきなりの大ピ~ンチ。
 わはははは、と笑ってしまいそうになるこの展開。
 ヤングガン・カルナバル。さらに激しく、濃く、エロくなること必至。
 そして次巻では、弓華の因縁の相手たち(母ちゃんに弟に琴刃)が襲いかかってくる(だよね?)。弓華は愛しの伶ちゃんを救えるのか?
 ええっと、それで第一主人公の……塵八は、なにするの?

ヤングガン・カルナバル前夜祭・標的は木暮塵八

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「大正野球娘。」は「。」つき

2007-04-21 14:02:27 | 読書
 トクマノベルズEDGEの「大正野球娘。」(神楽坂淳・著)を読了しました。

 ようは現代の価値観が通用しない大正娘たちが、当時マイナースポーツだった野球で男たちと戦う話です。

 ライトノベルなのか、一般向けエンタメなのか、かなり微妙な設定ですが(もともとEDGEはそういう話が多い)、ちょっと南野のツボを突きました。

 南野、べつに野球好きでもフェミニストでもありませんが、野球のやの字も知らない女の子たちが、チームを組んで男と戦うというだけでわくわくしてくるというものです。

 とうぜん、いろんなタイプの美少女たちが9人集まります。野球なんだから必然的にそうなります。

 元気印の主人公は、洋食屋の娘。
 チーム発起人は、主人公の親友にして、スーパーお嬢様。
 眼鏡っ娘も出るぜ。とうぜん、作戦参謀。
 チームの主砲は、下級生に大人気の薙刀娘。
 てな感じで、9人そろうわけです。

 んで、試合に勝つために、作戦参謀、眼鏡っ娘の乃枝(のえ)がいろんな作戦やら特訓やらを考え出すわけです。
 たとえば、体を鍛えるためにバネの付いた「人体強化器具」をチームメイトにつけさせたり(おまえは星一徹か?)
 人力車を引かせたり(空手馬鹿一代?)
 ピッチャーのお嬢に、ボールの縫い目に指をかけない魔球、(よくわかりませんが、ナックルやパームってやつでは?)を伝授したりするわけです。
 さらにはバッティングマシーンは作るわ、金属バットやスパイクを考案するわ、大活躍。
 金属バットを企業に作らせるために、名士を呼んでお茶会を開いたりもします。

 こうして主人公、小梅はキャッチャーとして、お嬢とバッテリーを組み、特訓に励みます。
 さらにちょっと百合な気分をまじえながら、ラブコメしつつ練習試合に。

 三回までの練習試合とはいえ、快勝。
 そしていよいよ本番に、というところで続く。

 いやあ、おもしろいじゃないですか、これ。
 次の巻もたのしみです。

 で、タイトルの後ろに「。」がついてんのは、「モーニング娘。」のパロディ?

大正野球娘。

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今度の「ハルヒ」はこうきたか?

2007-04-04 23:33:58 | 読書
 スニーカー文庫の「涼宮ハルヒ」シリーズの最新刊、「涼宮ハルヒの分裂」を読みました。
 このシリーズ、べつにアニメから入ったわけじゃなくて、谷川流がスニーカー大賞とったとき、研究のため、第一作を読んだらおもしろかったので、続けて読んでいるわけです。
 ファンタジーが大半を占めるライトノベル界において、少数派のSFの作品です。
 そういうと、このシリーズはSFなんかじゃない。ただの学園萌え小説だ。などという人が出てきますが、やはり南野にはこれはSFにしか見えません。
 それもスペースオペラとかじゃなくて、日常に非日常が介入するタイプのSFです。

 これをSFじゃないという人は、すごくせまいSF感でものを語っていると思うのです。たとえば、「スターウォーズなんかSFじゃない。あれはチャンバラか西部劇の部隊を宇宙に移しただけだ」とか。
 南野の子供のころ、SFという言葉はもっと身近だったような気がします。
 たとえば手塚治虫や石森章太郎はSFマンガ家の第一人者とか言われてました。今、手塚治虫や石森章太郎をSFマンガ家だと言う人はいないでしょう?(それ以外のジャンルを幅広く描いているせいもありますが)
「サイボーグ009」や「鉄腕アトム」はSF作品として大手を振っていたわけです。
 筒井康隆だって、SF作家と呼ばれていました。超能力をテーマにした「七瀬ふたたび」とかはともかく、どうして、相撲取りが意味もなく襲ってくる話とか、七福神が家にやってきて、弁天と寝たら女房が怒る話とかが、SFなのか? 中学生のころの南野は首を捻っていたものです。

 ちょっと脱線しましたが、そう言うわけで「ハルヒ」シリーズはSFなのです。日常(読者)の代表であるキョンが、非日常のグループであるSOS団に入ることで、非日常的なワールドに巻きこまれる話なのです。
 で、今回はパラレルワールドを持ってきました。
 キョンの前に現れた、未来人、組織の超能力者、そして宇宙人のインターフェイス。そして彼らがかつぐ、神のごとき者。
 SOS団のコピーのようなグループと出会ったときから、キョンの日常は分裂します。
 今まで、時間を飛び越えることはあっても、同一時間にふたつの空間で話が進むパターンはありませんでした。
 いったいどうやって収集付ける気なんだ? と思ってると、「涼宮ハルヒの驚愕」につづく、で終わってました。
 今回は、前後編だったんですね(知らなかった)。
 まあ、楽しみにして後編を待ちましょう。

 ただ南野、けっこう忘れっぽいです。このシリーズも前巻読んだのけっこう前のような気がします。読んでる内に、え? こういう設定だっけ? とか、これって誰だっけ?っていうのがしばしば。
 う~む。鳥頭だ。
 と言うわけで、間をおかずに出してくださいね、角川さん。

 ちなみにこのシリーズで、南野が確実におぼえているキャラは以下の通り。
 キョン、ハルヒ、長門、みくる、小泉、それに鶴谷さん、キョンの妹、朝倉、シャミセン、コンピ研の部長、谷口、国木田くらいです。
 今回も、黄緑だとか、橘京子だとか、かんぜんに忘れてました。

 すみません、角川書店さん、文庫の前の方にでも、人物一覧表を付けておいてくれると助かるのですが。

涼宮ハルヒの分裂

角川書店

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武器フェチ作家誕生「エメラダ」

2007-04-02 23:13:15 | 読書
 トクマノベルズEdgeの新人賞に輝いた「エメラダ」を読んでみました。

 いやあ、ぶっ飛んでますねえ。

 最初は、このレーベルの顔、深見真路線を継ぐ作家なのかと思ってました。
 しかし、最後まで読んでみると、その考えは甘かった。
 たとえば、深見真の「ヤングガンカルナバル」ではふたりの主人公がいます。木暮塵八と鉄美弓華。塵八にはあこがれの女の子がいますし、弓華はレズだけど女の子の恋人がいます。
 つまり、主人公には人並みに性欲があり、恋愛感情も持っている、きわめて健康な高校生の殺し屋(はいはい、突っこまない。突っこまない)です。
 一方、「エメラダ」の主人公、須崎知哉くんはやはり高校生。殺し屋じゃないけど、しょっちょう戦ってます。だって世界は戦争だから。
「エメラダ」の世界では、なぜかある日突然ロボットがどこからともなくわんさかやってきて、人間たちを殺しまくります。
 知哉の相手は殺人ロボットたち。
 知哉は戦争になると、天才的な才能を発揮し、戦場の英雄に(ちょっと突っこみたくなってきた)。
 そしてある日、最新兵器、エメラダを身につけます。それは戦闘補助システムで、右手に移植するとガンやブレードに変化するばかりか、レーダーになったりしつつ、女の声で知哉の頭の中に戦略などをささやきます(ますます、突っこみたくなってきた)。
 ある日、戦闘で高校生の女の子を危機一髪のところで助けるんですが、それがなんと幼なじみの女の子。もちろん美少女で、かつては知哉が恋心を持っていたという設定。
 なんだ、ありきたりのヒロインだな。
 そう思ったあなた。あなたは甘い。甘すぎる。
 知哉君はそんな女に見向きもしません。むしろ、足手まといあつかいします。

 まあ、その裏には、かつてその少女由梨絵が知哉君にショットガンをぶっ放したというトラウマがあるのですが(え~っ、そろそろ突っこんでいいかな?)、知哉君は過去のことを忘れ、自分を守ってほしいとばかりの由梨絵をけっしてゆるそうとしません。
「でも、結局行動をともにするんだろ? だったらちょっと屈折しててもそいつがヒロインだろ?」

 ぜんぜんちがいます。

 さらに途中、軍の女性兵士と出会います。もちろん美女。ちょっと怪しいお姉さんです。
「なるほど、そっちがほんとのヒロインか?」

 大はずれです。

 知哉君は、年上のお姉さんに鼻の下を伸ばすどころか、警戒心いっぱいです。

「つまり、あれだろ? ハード路線で、ヒロイン不在の物語」

 ぜんぜんちがいますよ。もちろんちゃんといます。

 武器がヒロインです。

「武器がヒロイン? つまり武器が恋人ってやつだろ。武器を偏愛する……」

 武器が恋人じゃなくて、武器がヒロインなんです。ちなみにヒロインが武器っていうのとも、ちょっとニュアンスがちがいますよ。

 そう、ガンやブレードに変化し、知哉君の脳に語りかけてくる人工知能の「エメラダ」がヒロインなんです。

 武器フェチってレベルじゃねえぞ。

 まあ、乗り物や武器がしゃべったりするのはめずらしくもありませんが、そいつらと主人公に恋愛感情はあったか?
 ない。南野の知るかぎり、そんな話はありません。

 ナイトライダーで主人公は車に恋したか? キノとエルメスはラブラブだったか? 否。そんなことはないのです。
 しょせん、機械は機械。せいぜいが相棒レベルでしょう。

 しかし、襟木ササ先生は、そんなものを軽々と乗り越え、武器と恋愛する主人公を創造したのです。

 それってあれか? 過去に幼なじみにショットガンをぶっ放されたトラウマで……。

 それもちがいます。たしかにそういう要因もあるでしょうが、それだけじゃありません。
 なにせ、小学生の時、パソコンのモニターに移る、人工知能のお姉さんの画像に恋したという、筋金入りです。

 そう、知哉君はナチュラルボーン二次コンだったのです。

 そんな彼がつらい過去から、三次元女に興味をまったく失い、武器に恋するようになってしまったのです(いや、ちょっとちがうか?)。
 しかも、初恋のお姉さんこそが、エメラダだったというオチつき。

 初恋成就。

 それに対して、ヒロインもどきの由梨絵ちゃん。さんざんです。
 知哉君は最後に彼女にこう言います。
「俺は。できれば、君を好きなままでいたかったよ。――俺の前から消えてくれ」
 しかも、ぶち切れた由梨絵ちゃんが……(一応ふせておきます)。

 すげえ。漢だぜ、襟木ササ。電波男の本田透なんて目じゃねえぜ。

 そしてイラストの平井久司っていう人、「機動戦士ガンダムSEED」のキャラデザで有名な人らしいですけど、南野は電撃hpの「キカイの幕の内弁当」というページで、エロい美女と武器のコラボレーションイラストを描いていた人というイメージが強いです。
 この人もまちがいなく武器フェチです。表紙のイラストで三十一連発の新型銃を描いてますが、文中の描写には細かいことが書いていないのに、しっかりデザインしてるのがなによりの証拠(平井さんは三十一連発のマガジンが銃身のうえにカートリッジとしてセットできるようなデザインを想定したようです)。

 そう。「エメラダ」は武器フェチ最強タッグによる、武器フェチのための物語。

 え? 褒めてるんだか、けなしてるんだかわからない?

 なに言ってるんですか? 南野が激賛してるのがわからないんですか?

エメラダ―戦場の絆

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超絶名探偵は誰だ?(6)

2007-03-28 23:13:29 | 読書
 メフィスト賞は、南野自身、何度か挑戦してやぶれた賞ですが、この賞の発端がそもそも伝説に彩られています。

 なんでも京極夏彦さんが会社勤めをしていたころ、同僚よりも仕事が速く終わるので、空いた時間に小説を書き、完成すると長すぎて出せる新人賞がなかったそうです。それで講談社に「持ち込みって受け付けてるんですか?」と聞くと、「返事、半年くらいかかるけどいい?」と言われ、いざ送ると、三日後には「ぜひうちで出版させてください」と言われたとか。そして出版すれば大ヒット。それで気をよくした講談社が創立したのがメフィスト賞とか。

 まあ、ワナビが聞けば、「ふざけんじゃねえ」と嫉妬で石投げたくなる話ですよ。

 こうして出された「姑獲鳥の夏」に出てくる探偵は、中禅寺秋彦。
 和服姿で蘊蓄を垂れ流し、普段売れない古本屋の店主でありながら、裏では拝み屋をやっているという変わり種。
 しかも事件の解決方法は、たんに推理で犯人を当てると言うよりも、まさにお払い。相手の心に巣くっている呪い(というか、強い思いこみか、洗脳に近いもの)を解体してしまうというもの。
 きわめて個性的というか前代未聞の名探偵です。もっとも本人は自分は探偵なんかじゃないと思っているようですが。
 さらにこのシリーズには、推理なんかしないけど真相に到達する名探偵、榎木津礼二郎や、強面の刑事、木場修太郎、鬱病気味の小説家、関口巽など、キャラの立ちまくった面子が大活躍。
 まあ、人気が出るわけですよ。
 で、事件の方は、デビュー作をふくめ、え? これってありなの?っていうトリックてんこ盛り。
 最初はぽか~んとするかもしれませんが、二作目からはだいじょうぶ。
 これはこういうジャンルなんだ。と思えばあとは物語を楽しむだけ。(あ、いや、けっしてけなしてるわけじゃないですよ。ほんとおもしろいんですから)

 そして勢いに乗った講談社は、メフィスト賞でつぎつぎにヒット作を出していくわけですが、やはり名探偵というテーマにしぼった場合、どうして語らないわけにはいかないのはこの人でしょう。
 その名は清涼院流水。
 この人、なんとJDC(日本探偵倶楽部)なる架空の組織を作り出し、膨大な数の名探偵を在籍させるばかりか、そのいずれもが超個性的。
 そもそも実力に応じて班分けされ、その中の第一班に所属する名探偵たちはそれこそ神のごとき推理力を発揮します。
 いやあ、この人のメフィスト賞でのデビュー作、「コズミック」を手に取ったときはほんとうにびっくりしました。なにせ、中に入ってるしおりに、探偵の名前がずらずらと書かれてあるんです。それもその推理方法がまるで必殺技かなんかのように。
 完全に意表をつかれましたね。今までこんなことを考える人は誰もいませんでしたから。
 もう、完全に「リングにかけろ」の世界ですよ。必殺技の名前を叫べば、相手が飛んでいく代わりに、必殺推理を使えば、どんな事件も解決してしまうみたいな。
 まあ、こんなですから、この人が出たときは、もう賛否両論だったみたいです。
 けなす人はそれこそ、ぼろくそにけなしましたね。
 なにしろ、この特異な設定だけじゃなくて、「コズミック」のトリックもまた、なんじゃこりゃあ?の世界ですから。
 ただ、南野はこの人、本気で天才なんじゃないかと思っています。
 だって常人の発想じゃないですもん。良くも悪くも。
 そして「ジョーカー」「カーニバル」と続くにつれ、この人の暴走はとまりません。とくに「カーニバル」シリーズは、もはやミステリーですらなくなってしまいます。なんというか、もはや人類の存続をかけた戦いですよ。完全にSFの領域です。
 もう、どんな不思議なことが起ころうと、まじめに推理しようとか思いません。
 だってそういう世界なんですから。

 メフィスト賞はこのあとも変わったミステリーを量産していきますが、それでもこの人の作品群と比べるとどうしても普通に見えてしまいます。
 それでもメフィスト賞作家に関しては、他にも語りたい人はいるのですが、それは別の機会にして、そろそろ超絶名探偵は誰だ? の話はいったん終わりたいと思います。

文庫版 姑獲鳥の夏

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コズミック流

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コズミック水

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超絶名探偵は誰だ?(5)

2007-03-27 23:07:44 | 読書
 さて、最近のミステリーの話をしようと思えば、どうしても綾辻行人は外せません。前回の記事で書いた島田荘司御大の後押しがあったとはいえ、本格ミステリーが低迷していた時期に、彗星のように現れ、新本格ブームを打ち立てた立役者なのですから。
 南野にしたところで、この人のデビュー作「十角館の殺人」を読んで、忘れていたミステリーを読む楽しみを思い出してしまいました。(島田御大の作品を読み始めたのはそのあと)
 いやあ、衝撃的でしたねぇ、「十角館の殺人」。
 いや、これを読んだのはほんとたまたまだったんですよ。会社勤めしてたとき、南野しばらくの間フィリピンで勤務してたんですが(はじめて明かす衝撃の真実)、そのとき同僚が持っていた本がこれだったんです。ただでさえ日本の本を読む機会が少なかったので、借りて読んだらめちゃくちゃおもしろかったわけです。
 そのときには、いわゆる新本格ムーブメントがどうとか、そういうことはぜんぜん知らず(なにせフィリピンにいましたから)、ただただ、そう言えば、こういう小説しばらく読んでなかったなぁ。と懐かしみ、なおかつ感激したわけです。
 これ、ストーリーとしては、クリスティの「そして誰もいなくなった」とほぼ同じような展開ですが、それは本人もとうぜん意識しているはずです。

 つまり、孤島の中にある一軒家で、つぎつぎに人が殺されていく。というありがちな話。

 個人的には、本家の「そして誰もいなくなった」よりもずっと面白いと思います。
 クライマックスのあの台詞には、思わず「え?」と叫んで、もう一度文章を確認した記憶があります。
 で、この小説に出てくる探偵役ですが、島田潔と言いまして、はっきり言ってあまり特徴がありません。べつに特別かっこいいわけでもなく、権威があるわけでもなく(っていうか、初登場時は今で言うニートじゃなかったでしたっけ? のちにミステリー作家になります)、性格もおだやかで常識的。
 っていうか、よく考えたらこの人、この作品ではぜんぜん探偵役やってません。
 いや、よくよく考えたら、そもそも事件現場にいませんでしたよ、この人。
 そう考えたら、この人ぜんぜん名探偵じゃないですよ。この作品においては。(いや、そう考えると、ものすごく新しいパターンですね)
 島田潔が名探偵として活躍するのは第二作目からです。
 いや、とにかく南野、これでふたたびミステリーに目覚め、綾辻作品を読みあさりました。どれもおもしろかったですねぇ。(例外、暗黒館の殺人)
 ただ南野としては、やはりナンバーワンとして推すのは、デビュー作の「十角館の殺人」です。その次は「時計館の殺人」でしょうか? 島田潔の名探偵としての活躍を期待したい人はこっちですね。

 この人と同時期に、法月倫太郎とか、我孫子竹丸とか、有栖川有栖とか、やはり本格を書く作家がばんばんデビューして、新本格と呼ばれるようになりました。
 南野は知らなかったのですが、当時はその動きに批判的な人も少なくなかったらしいです。ようは、新人賞もとってないのにばんばんデビューさせやがって。ってことなんでしょう。
 ただ、もし島田先生がこの人たちのデビューに力を貸さなかったら、今のミステリー界はつまらないものになっていたでしょうね。(いや、新本格作家のデビュー全員に島田先生が絡んでるわけでもないんでしょうけど。その辺の事情はくわしくありません)

 ただでさえ、乱歩賞作家をかかえている講談社は、この新本格ブームでミステリー作家をほぼ独占状態にします(いや、さすがに独占は言いすぎですかね)。
 そしてさらにそれを決定的にする、メフィスト賞が始動します。
 この話は次回。

十角館の殺人

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時計館の殺人

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超絶名探偵は誰だ?(4)

2007-03-26 22:42:09 | 読書
 さて、今回は日本の名探偵にもどりますが、最近の乱立する名探偵たちと、前述した日本の三代名探偵の間をつなぐ名探偵として名前の挙がるのは、やはり御手洗潔でしょう。
 作者の島田荘司は低迷する本格ミステリーを支え続け、新本格で名を上げた綾辻行人ら数名のデビューをバックアップしてブームを巻き起こした人として有名です。
 いやあ、南野この人の存在を知ったとき、かたっぱしから読みあさりました。まあ既刊がたくさんあったせいで、しばらくは楽しめましたよ。
 この人の場合、トリックとかもすごいんですが、ストーリーテリングの点でずば抜けていると思います。「アトポス」とか「水晶のピラミッド」なんて、ミステリーの部分より、作中作というか、本筋と関係のない話の方がおもしろいくらいです。(え? ほめてないって?)
 でも、「水晶のピラミッド」なんて、最初のタイタニックの話とか、古代エジプトのファンタジーの話をわくわくしながら読んだ記憶があります。「アトポス」だって最初の吸血鬼の話がやっぱりおもしろいからしょうがありません。まあ、肝心のトリックはすこし大技すぎて、ぽか~んって感じもしましたけど。
 まあ、それ、ありかよ?ってなところですね。
 この人のすごいところは、年を取ってからもおもしろいものを書き続けることです。「アトポス」以降の御手洗シリーズとしては、「ネジ式ザゼツキー」がすごい。
 死体の首が、ねじで胴体に無理矢理ねじ込まれている。それはなぜか?という前代未聞の謎を提示しています。
 さらに脳と記憶とファンタジーという、今までのミステリーでは見たことも聞いたこともない展開もすごい。
 いやあ、さすが島田大先生。としか言いようがありません。
 ただ個人的には相棒の石岡君が出てこないのがすこし不満かも。
 やはりあくの強い探偵ですから、それを中和するためにも、人のいい石岡君が出てくれた方がほっとします。
 なにしろこの探偵、頭がよすぎて、ちょっと他人が馬鹿に見えるところがあるんじゃないでしょうか。石岡君に対しても、普段小馬鹿にしたような態度を取っているんですが、じつは熱い友情を感じているわけです。
 ええっと、ツンデレ?
 知りませんよ、そんなこと。でも、そのあたりが女性読者に人気がある理由かもしれません。
 それにしても、この人、最初はただの占い師だったのに、今や脳に関する偉い先生ですからね。出世したもんです。
 御手洗が出るシリーズは、摩訶不思議な謎が提示されますが、金田一の事件みたいに陰惨な連続殺人事件になったりはしません。なにしろ、この人が出張ると、あっという間に事件が解決してしまいますから。
 この人の事件で、南野が一番好きなのはやっぱり、「斜め屋敷の犯罪」でしょう。
 初登場の「占星術殺人事件」もいいのですが、やはりトリックのインパクトというか、馬鹿馬鹿しさではこれが随一。他の追随を許しません。
 南野は、こういう一発芸のようなトリックが大好きですから。
 真相を知ったとき、まさに開いた口がふさがりませんでした。
 まあ、感動するか、怒るか、笑うかは人それぞれです。
 未読の方はぜひ読んでみてください。

ネジ式ザゼツキー

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斜め屋敷の犯罪

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超絶名探偵は誰だ?(3)

2007-03-26 01:26:31 | 読書
 明智、金田一、神津と来たので、次は新本格の探偵かとも思ったのですが、やはりその前に海外の古典に付いてもすこしは触れておこうと思います。
 とはいえ、じつは南野、海外の翻訳本はあまり読んでいません。読みにくくてうんざりするんです。
 海外本格ミステリーの古典で必読と言えば、やはりエラリー・クイーン、アガサ・クリスティ、ジョン・ディクスン・カー、ヴァン・ダインあたりでしょうか? あるいはそれ以前のコナン・ドイルやポーも入るかもしれません。
 ドイルのシャーロック・ホームズのシリーズは、子供のころ、子供向けにリライトされたものはぜんぶ読んだんですが、オリジナルの翻訳本は読んでません。ただ、ホームズにはシャーロキアンと呼ばれる熱狂的なファンがいるくらいなので、南野のなまじっかな知識であまり論じたくありません。そういう人になにを言われるかわかりませんから。
 ポーは「モルグ街の殺人」と「黄金虫」くらいは読みました。もっともミステリーと言えるのはそれくらいでしょうか? あとは怪奇幻想小説って感じですしね。
 そもそも「モルグ街の殺人」ってミステリーとしてはどうよ? ってやつですし。

 となると、次に古いのは、やはりヴァン・ダインでしょうか?
 この人の作品ははっきり南野の好みから外れます。
 まあ、代表作の「グリーン家殺人事件」を読んでいないので、この人の評価は本来できないんですが、すくなくとも「カナリア殺人事件」と「僧正殺人事件」を読んだかぎり、今の日本のミステリーを読み慣れている人には、退屈でしょう。「僧正殺人事件」なんて代表作のひとつで、見立て殺人の走りですが、そういうのが好きな人は横溝正史の「悪魔の手毬唄」か「犬神家の一族」でも読んだ方がよっぽどおもしろいです。
 それにこのヴァン・ダインっていう人、ミステリー作家に書ける名作はひとり六作が限界だ。とかとんでもないことを言った人です。
 自分にできないことは、他の人にもできないって決めつけるな。って昔から思ってました。(この人、十二作発表してますが、後半六作は駄作で有名)
 それにこの人、本格ミステリーの十則だか二十則だかを勝手に作り、それを人に強要するあたりが大嫌いです。
 しかもその中には、中国人を犯人にしてはいけない。とか、今ならまちがいなく人種差別に当たる発言をしています。
 いや、まあ、そういう作品のでき以前の問題で、南野はこの人大嫌いなんですが、それでも作品がおもしろければ読むんですけどね。おもしろいはずの前半の二作があの出来ですから。
 肝心の探偵のファイロ・ヴァンスは、えらそうに蘊蓄を垂れ流す探偵の走りですが、京極夏彦の中禅寺秋彦が魅力的なのに比べると、ただの嫌味で知ったかぶりの気障男にしか見えません。
 ではクイーンはどうでしょうか?
 じつは「Xの悲劇」「Yの悲劇」「エジプト十字架の秘密」しか読んでません。
 この中で一番面白いと思ったのは、「Yの悲劇」です。とくに犯人はなぜ撲殺の凶器にマンドリンを使ったのか? のあたりはすごく感心しました。あの犯人も当時は衝撃的だったのでしょう。それに比べれば「Xの悲劇」の方は今ひとつで、「エジプト十字架」は正直言って、南野には合いませんでした。(退屈すぎて読み通すのが苦痛)
 探偵に関してはあまり語ることはありません。「X」と「Y」の探偵はドルリー・レーンというシェークスピア俳優上がりの耳の聞こえない探偵という点が変わってますが、それ以外とくにおぼえていません。「エジプト十字架」の方は作者と同名の探偵が活躍します。正直言って、あまり特徴のない探偵だと思います。強いて言うと、犯人を特定するさいの論理性を重視する探偵(というか、それがクイーンの作品の特徴)です。
 クリスティはどうか?
 じつはこの人のもあまり読んでなくて、むしろ映画で見た方が多いです。
 この人の作品に出てくる探偵、エルキュール・ポアロとミス・マープルはけっこう有名でしょう。ミステリーファン以外でも知ってる人が多いかもしれません。
 いや、正直言ってあまり語ることないです。思い入れもありませんし。
 映画の「ナイル殺人事件」と「オリエント急行の殺人」はおもしろかったとだけ言っておきましょう。

 では、カーはどうか?
 じつはこのカーこそが、南野が中学時代にそれなりの数を読んだ、唯一の海外古典の作家です。
 この人は不可能犯罪とオカルト、それにユーモアを追求した作家です。
 まあ、ユーモアの部分は、どうでもいいのですが(この人のユーモアはあまり笑えない)、密室殺人にこだわり続けたところが大好きです。
 探偵のギデオン・フェル博士もヘンリー・メルベール卿も、大柄(というか、デブ)でユーモラスな探偵で、クイーンみたいに細かいこと言いませんし、探偵方法もおおざっぱ(?)な気がします。
 まあ、不気味で怪奇な事件が多いですから、キャラにはそういうタイプを持ってきたのかもしれません。横溝正史が金田一を使うようなもんです。
 この人の作品でお気に入りのをひとつ紹介するとなると、やっぱりこれでしょう。
「プレーグコートの殺人」です。
 これは別名義(カーター・ディクスン)で発表したもので、
 不気味な雰囲気に、トリックの意外性と馬鹿馬鹿しさという点で秀逸です。
 いやあ、南野はこういう頭のねじが緩んでなければ考えつかないようなトリックが大好きなんですよ。
 もっともこれ、現実に可能なのかと言えば、はなはだしく疑問ですけど。
 どんな事件かというと、完全密室の離れの中で、男が特殊な剣でめった刺しになって殺されてるんです。しかも建物のまわりには足跡なし。
 ある意味、「本陣殺人事件」とそっくりの状況ですが、トリックはまるでちがいます。
 ヘンリー・メルベール卿はこの難事件をどう解決するのか?
 興味のある人は、ぜひご一読を。

Yの悲劇

東京創元社

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プレーグ・コートの殺人

早川書房

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超絶名探偵は誰か?(2)

2007-03-24 17:20:07 | 読書
 前回は日本の国民的二大名探偵のことを書きました。
 新本格ブーム以降は、さまざまな名探偵が目白押しで、南野もそのすべてを把握できているわけではありません。ただ、それ以前の、一時期絶滅寸前まで追い込まれた本格ミステリー(というか、当時は本格推理小説)の名探偵はさほど多くはありません。
 その中で、明智小五郎と金田一耕助は別格の有名どころなのですが、今回はそんな中のちょっとマイナーな名探偵、神津恭介について語りましょう。
 この神津恭介というのは、高木彬光の創作した探偵で、相棒の松下研三君とともに難事件の解決を目指します。
 この神津恭介シリーズは、いつもひとりの金田一耕助や、少年探偵を使う明智小五郎とはちがって、ちょっと足りない相棒(というか、助手?)の松下君とともに行動する点がちょっとちがってます。まあ、相棒が記述者タイプというのは、シャーロック・ホームズとワトソン博士にはじまって、よくあるパターンで、今の日本でも御手洗潔と石岡君とか、京極堂と関口君とか(これは四人一組だからちょっとちがうか?)が有名かつ超人気です。
 まあ、そういうのの日本での走りです。と思ったら、由利先生がいたか。(由利燐太郎、三津木俊介のコンビ。金田一耕助登場まで、横溝正史のメイン探偵。代表作「蝶々殺人事件」「真珠朗」)
 とにかく、そういう系統の探偵です。
 で、このタイプはだいたい超わがままかつ超個性的で、凡人の相棒をふりまわすタイプが多いですが、神津恭介はかなり性格的にはまともです。
 けっして相棒をからかったり、馬鹿にしたり、しかめっ面で膨大な蘊蓄を垂れ流したあげく、「君なんか友人じゃない、ただの知人だ」とか言ったりはしません。ましてや医者の相棒の忠告を無視してコカインを注射したり、依頼人を見るや、「あなたは~ですね。なぜなら、そのあなたのもっているなんとかが、なんとかだからです」とかわけのわからないことを言いだしたりはするわけもありません。
 かといって、明智小五郎のように、異常な行動力で犯人と戦うことを楽しむタイプ(あのひとぜったい楽しんでますよね。とくに相手が怪人二十面相のときは)でもありません。
 そういう意味では金田一耕助に近いかもしれません。
 かなり人当たりのいい、マイルドな探偵です。
 ただ見た目や肩書きが金田一耕助とは大違いです。
 超絶美男子で、東大卒、七カ国語を話せて、ピアノも得意。学生時代に「神津の定理」とかを発見しちゃう大天才。
 おまえ、いいかげんにしろよ!ってなもんです。
 いっつもよれよれの格好をしていて、プー同然のところをパトロンに拾われて、私立探偵になった金田一耕助とはえらい違いです。
 今、こんな設定の探偵を出したら、読者から袋だたきに遭うでしょうね。
 なんじゃ、その房設定は?って感じで。
 かつての本格ミステリーの大御所、高木彬光先生もキャラ作りはあまりうまくなかったようです。

 で、この探偵、どんな事件を解決したかって言うと、やはり最高傑作は「人形はなぜ殺される」でしょう。
 デビュー作の「刺青殺人事件」も名作と誉れ高いのですが、南野はやはり「人形」が上だと思います。
 全体に流れるオカルティックな雰囲気が好きです。
 人形という小道具の使い方や、魔術的な演出がいいのです。
 そしてあの有名なトリックでしょう。
 南野はあまりアリバイトリックは好きではないのですが(めんどくさい)、このトリックはまさに目から鱗。
 こんなど派手なアリバイトリックもあったんだ。
 思わず、うなってしまいます。

 この先生も亡くなってだいぶ経ちますけど、いつの間にか新刊があまり買えなくなっているのは、さびしいかぎりです。
 もっと読み継がれてもいい作家だと思います。

人形はなぜ殺される 新装版 高木彬光コレクション

光文社

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超絶名探偵は誰だ?(1)

2007-03-23 23:54:09 | 読書
 南野は子供のころからミステリーが大好きで、さまざまな作家の小説を読んできています。そして、ミステリーといえば、つきものなのが名探偵。
 べつに誰が一番とか言う気はないですが、南野を魅了した名探偵たちを何回かに分けて紹介していきたいと思います。

 え~と、とりあえず今回は、日本の二大名探偵。
 ミステリーマニアだけでなく、おじいちゃんもおばあちゃんも、子供だって知っている(最近の子供は知らないのかな、ひょっとして?)日本の一般常識。……と言えば、このふたりでしょう、やっぱり。

 金田一耕助と明智小五郎。

 もちろん、金田一耕助の方は横溝正史の小説、明智小五郎の方は江戸川乱歩の小説で大活する名探偵です。
 まあ、名探偵なんていう人種は、古今東西変人と相場は決まってますが、金田一耕助は比較的まともじゃないでしょうか、外見以外は。
 え? よれよれの袴姿で、興奮するとぼさぼさの髪を掻きむしってふけを飛ばすやつのどこが普通なんだって?
 まあ、そう言われればそうかもしれませんが、名探偵界にはもっと信じがたいやつらがぞろぞろいますから。
 それにこの人、言動に関してはかなりまともですよ。
 やたらえらそうだったり、助手を小馬鹿にしたり、蘊蓄を語りまくったりはしませんから。むしろ、名探偵の中では人当たりの良さはトップクラス。
 ただ、よく言われるのが、
 このひとほんとに名探偵?
 誰かが調べたデータでは、事件の防御率の悪さがトップクラスだったような。
 たしかに「八墓村」なんて、このひと、最初からいるのに何人も死にまくりですからね。
 この人の事件だと、たいていすくなくとも三人くらいは死にますから。挙げ句の果てに犯人自殺。
 おまえいったいなにしに来たんだ?ってなもんです。
 ただこの人を大嫌いという人にはあまりあったことがありません。
 やはり、知名度に加え、みんなに愛されているという点では、まちがいなく日本の名探偵ではトップではないでしょうか?
 この人が一番名探偵ぶりを発揮するのは、やっぱり「本陣殺人事件」でしょう。
 なにしろこの人が出てきてから、めずらしく誰も死にませんし。しかもあの変なトリックをあっという間に見やぶってしまう。まあ、おかげであんまり長い話じゃないんですけど。
 南野もこの話はかなり好きです。雪の密室のあのトリックに加え、三本指の男とか、殺人現場にひびく琴の音とか、怪奇趣味が満載。
 まあ、南野、もともと時刻表アリバイトリックとか、パズルみたいなやつよりこう、説明されると直感的に理解できるトリックが好きなんですよ。
 こういうのを実演してみたりすると、おお、すげえ!とみんな感動し、やっぱりこの人は名探偵だ。って思ってくれるわけです。

 一方明智小五郎の方はどうでしょうか?
 じつはこの人、子供向け、大人向け通俗小説、マニア向け本格ミステリーと、いろいろな分野に登場するせいか、トータルで見るとそうとう変です。
 なにしろ初登場時には金田一耕助とたいして変わらない格好をしてたくせに、いつの間にか、スーツをぱりっと着こなす二枚目探偵になってました。
 しかも子供向けに出ていたせいか、拳銃は使うし、変装はするし、腹話術は使うし、格闘も得意。(だったですよね? 確認してないので、ひょっとしたらかんちがいがあるかも)
 おまけに捜査に、中学生や小学生を使うし、あぶない捜査の時は、浮浪児グループのチンピラ別働隊を使ったりします。
 しかも、良家の子女を危険な目に合わせるのはまずいという認識はあっても、浮浪児ならどんな危険な目に合わせてもだいじょうぶ、と思ってるふしがあります。

 いやあ、そうとうヤバいですよ、この人。

 そう言えば、この人、よくライバルの怪人二十面相の拳銃の弾をこっそり抜いておいて、二十面相が拳銃を向けたとき、大笑いして勝ちほこっていたような気がします。
 そうとう根性曲がりですね。

 そう言えば、金田一耕助はけっして犯人を笑い飛ばしたりはしなかったと思います。その分、「しまったぁ!」とか叫びながら、しょっちゅう走ってたような気がしますが。(いや、これは映画の影響か?)

 う~む。こうやって比べてみると、友達になるならまちがいなく金田一の方ですね。もっとも金田一耕助には事件を依頼したくない気もしますが。
 ……いや、だって心配でしょう? こいつが来ても、自分殺されるかもしれないし。
 犯人に罠をしかけて、馬鹿笑いする探偵の方がいいですよ。

本陣殺人事件 日本推理作家協会賞受賞作全集 (1)

双葉社

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怪人二十面相

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ケツバット女は青春小説だった

2007-02-21 02:15:04 | 読書
 ここ数日、今年の電撃小説大賞について語らせてもらいました。
 きょうはお題は銀賞の「なつきフルスイング!」です。

 南野はてっきりスラップスティック色の強い、どたばたコメディだと思ってました。なにせサブタイトルが「ケツバット女、笑う夏希。」ですからね。
 たしかにそういう一面もありますが、作者がほんとうに書きたかったことは別のようです。

 じつはこれ、ストレートな青春小説でした。

 怪我や、いじめ、虐待などによって、挫折したり、くじけたり、逃避したりしている若者たちへの応援歌だったのです。

 なんらかの障害によって夢を絶たれた主人公やその周辺の人たちは、『夢』を見ることで現実から逃避しようとしています。作者はそれを『夢魔』と称し、夢とはちがうものだと言いたかったんじゃないでしょうか?

 そこを見すえ、そこにむかって努力していく、目標としての夢。
 現実がつらいが故に、それをごまかすための『夢』。
 作者は、そんな『夢』はぶちこわし、ほんとうの夢を取りもどせと言いたいような気がします。
 その象徴が、ケツバット女のなつきです。

 作者は、夢魔憑きの少年たちのけつをバットで叩くことで、夢魔をたたき出すというむちゃくちゃな設定にしました。
 しかしそのストーリー展開はストレート。よけいな捻りを加えずに、挫折した主人公たちを応援するかのような熱い展開。

 南野はこう感じました。
 これって「世界平和は一家団欒のあとで」と真逆のベクトルだよな。って。

 ここで両者をちょっと対比してみたいと思います。
「世界平和は一家団欒のあとで」は基本設定はラノベの王道ど真ん中。しかしストーリー展開は捻っています。
 逆に「なつきフルスイング!」は基本設定は妙ちくりんなのですが、ストーリー展開は基本に忠実で、ストレートです。

 どちらがいいとか悪いとか言う問題ではないのですが、個人的には「なつきフルスイング!」の方に好感を覚えました。
 変に捻りまくった話よりも、ストレートで熱い物語のほうに惹かれるのです。

 ここでそういう観点から、入賞作四つを比べてみましょう。
「ミミズクと夜の王」、捻りなし。ある意味読者の望む方向にストーリーは流れていく。
「扉の外」、ストーリー展開が読めない。アクロバット。そして読者は着地した場所に驚く(あるいは怒る)。
「世界平和は一家団欒のあとで」、こういうストーリー展開だろうと思ってると裏切られる。
「なつきフルスイング!」、見た目にだまされて一途なストーリー展開。

 こんな感じでしょうか。

 野球のピッチングに例えると(べつに野球ファンじゃありませんが、一般的にわかりやすいので)、こういうふうになります。

「ミミズクと夜の王」、握りを見せての強速球のストレート。
「扉の外」、魔球。
「世界平和は一家団欒のあとで」、ストレートと見せかけてフォーク。
「なつきフルスイング!」、変化球と思わせて強速球のストレート。

 いや、異論のある方もいらっしゃるでしょうが、あくまで南野の感じ方です(別の意見がある方はどんどんコメントしてください)。

 こうしてみると、じつに多彩です。
 やはり電撃小説大賞はレベルが高いと思わざるを得ません。
 いや、べつに南野が落選したから言ってるわけじゃありませんよ。

 え? じゃあ、落ちたおまえの作品はどんなのだって?

 う~ん。魔球を投げようとしたら、打者に当たってしまってってところですかね。

なつき☆フルスイング!―ケツバット女、笑う夏希。

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もうひとつの金賞「世界平和は一家団欒のあとに」とは?

2007-02-19 22:29:09 | 読書
 アクセス解析できのうのアクセスを調べてみると、なんとアクセス人数もページビューもブログはじまって以来のにぎわいでした。
 どうやらgooやgoogleから「ミミズクと夜の王」を検索して入ってきた方が多いです(ミミズク大人気ですね)。「扉の外」の人もいました。
 いやあ、やっぱり話題の新刊について書くと、アクセスが増えるんですね。
 NEXT賞やブロークンフィストのことを書いたときは、こうはいきませんでしたよ。
 それと「扉の外」のことを書いたとき、最後の方に、ネットでの人気は今ひとつと書きましたが、どうやらそれはちがうようです。
 評価、まっぷたつに割れてるらしいです。
 否定派の意見としては、いっさいの謎を解決しないで終わっている点に批判が集中してるようです。
 これはある意味、もっともな意見なんですが、作者が書きたかったことは、誰がなんの目的でこんなことをしたかではなく、その結果どうなったか? だと思うんです。
 だから南野はこれでいいと思うんです。背後の黒幕の陰謀について書き出すと、かんじんの、予期せず戦争(ゲームではありますが)に巻きこまれた少年(というか主人公以外少女ですが)の葛藤や変化といったものが薄くなってしまうような気がします。

 まあ「扉の外」の話はこれくらいにしておくとして、今回の電撃小説大賞には「扉の外」とならんで、もうひとつの金賞があります。
 今回はそれについて述べてみましょう。

「世界平和は一家団欒のあとに」、それがタイトルです。
 結論から言えば、「扉の外」「ミミズクと夜の王」ほどのインパクトはありません。ふつうにおもしろいライトノベルを目指したって感じですね。
 ただ王道ど真ん中かと言えば、けっしてそうじゃありません。
 妙にひねってあります。
 基本設定は、さまざまな超能力を持った家族がいて、なぜか世界平和のために戦っている。そういう話です。
 途中から、生命を生み出したり、使者を蘇生させる力は『神』によって排除させるとか、主人公の過去のトラウマとか、妙な設定が絡んできます。
 それにせっかく家族そろって正義の味方なのに、個別に悪と戦っていたりします。
 南野はそのへんがどうもまずいのではないのかと思うのです。
 作者はあるいは、ストレートすぎるストーリー展開を嫌ったのかもしれません。
 また、家族愛ということを強く書きたかったのかもしれません。
 でも、どうなんでしょうね? それこそもっと王道ど真ん中でよかったんじゃないでしょうか?

 正義の味方家族という基本設定ならば、誰もがまず考えるストーリーはこんな感じじゃないんでしょうか?

 超能力を持った家族が、力を合わせて巨大な悪を痛快にたたきつぶす。

 たしかに単純でありふれたストーリーかもしれません。

 でも、それじゃだめなんですかね?

 もし、南野がこの設定で書くとすればたぶんそういう話にするでしょう。
 また南野がもし中学生だったとしたら、そういう話こそ読みたいんじゃないかと思いますよ。

 家族愛とか、家族内の葛藤というものは、戦いの中で十分書くことができるはずです。たとえば、誰かがつかまって人質になるとか、戦略の面で意見が食い違ってチームワークが乱れるとか。
 それに王道のストーリーといっても、キャラづけや、戦い方などでオリジナリティは出せるはずなのです。

 あるいはそれは南野の幻想で、じっさいにそんな作品を出せば、「オリジナリティなし」ってことでばっさり切られるのかもしれません。

 それでも南野としては、それぞれの家族キャラの見せ場を作りつつ、力を合わせて悪の組織と戦う話を読んでみたかったと思います。

 ……だ、だめですかね?

 一次落ちしたワナビがえらそうなこと言ってすいません、作者の人。

世界平和は一家団欒のあとに

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「扉の外」に打ち勝った「ミミズクと夜の王」とはいったいなにか?

2007-02-18 16:45:20 | 読書
 前回の記事で、南野は「扉の外」を絶賛しましたが、これは電撃小説大賞の金賞(次席)で、大賞ではありません。
 ではこれを打ち破り、みごと大賞に輝いた「ミミズクと夜の王」とはいったいどんな小説なのでしょう?
 じつはこれは「扉の外」とはまた違った意味で、衝撃的な作品なのです。

 ではいったいなにが衝撃的なのか?
 それは電撃がこれを大賞に推したこと自体が衝撃的なのです。

 は? おまえはいったいなにを言っているのだ? と思われるかもしれませんが、このことを語るには、ライトノベルとはいったいなにか? という話になってしまいます。

 じつはこれには決まった定義はありません。
 ただ一般的なイメージで言えばこんなところでしょう。

「マンガとかアニメみたいな小説のことだよ」
「表紙がアニメ絵で、ところどころにやっぱりアニメ絵の挿し絵が入ってる小説」
「今風のジュブナイルのことだろ?」
「軽いファンタジー小説のことだよ」
「萌え萌えな女の子が出てくる話だよ」
「出してるレーベルによるんだよ。電撃とか富士見出だしてればライトノベルさ」

では「ミミズクと夜の王」はライトノベルなのでしょうか?

 はげしく微妙です。
 まずこの小説は、あまりマンガっぽくありません。むしろ童話か児童文学に近いでしょう。
 ファンタジーであることは間違いありませんが、ライトノベルのファンタジーとは一般的に剣と魔法の世界か、あるいは現代の日常になんらかのファンタジー要素を突っこんだものが主流です。
「ミミズクと夜の王」のそのいずれでもありません。異世界ファンタジーであることは間違いありませんが、主人公は剣や魔法で戦ったりはしません。
 主人公は少年ではなく、女の子。それも美少女という設定ではなく、ちょっと足りないところのある奴隷の女の子。萌え路線からは著しく外れてます。
 そもそも主人公ミミズクの夜の王に対する思いは恋愛ではありません。ラブコメの要素が皆無です。
 また、あちこちにギャグがちりばめられているということもありません。
 それでいて、読み出すとついついのめり込んでしまうおもしろさがあります。
 これは本来、児童文学の賞に応募すべき作品なのではないのでしょうか?
 それもエンターテインメントよりのものではなく、純文学系の児童文学の新人賞に。(児童文学と一般小説の違いを論じてしまうと、はげしく脇道にそれるのでここではのべません)

 独断と偏見で言わせてもらえば、これは他のライトノベルの賞に応募したなら、けっして賞は取れなかったのではないでしょうか?
 とくに、テンプレがあるとしか思えず、その中で個性や斬新さを出せと言っているとしか思えない某賞(怖くて名前出せません)などでは、おそらく一次で落ちているでしょう。

 それほど、カテゴリー的に言えば、ぎりぎりの(というか、一歩はみ出している)作品でしょう。

 電撃編集部もそんなことは百も承知のはずです。
 それは作品中にいっさい挿絵をはさまなかったことや、萌え絵やアニメ絵からかけ離れた表紙をつけたことからも明らかです。

 ここ数年、ライトノベルをリードしている電撃文庫は、ライトノベルの新たな方向性を打ち出そうとしているのではないでしょうか?

 そうでなくても電撃はここ最近、有川浩などの作品をハードカバーで売り出し、結果を出してきています。

 ライトノベルはいま、一皮剥けて、新たなレベルに進化しようとしているのかもしれません。

ミミズクと夜の王

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今年の電撃大賞はものすごいことになっている

2007-02-18 01:20:36 | 読書
 ちょっと出遅れましたが、今年の電撃大賞の入賞作品をいくつか読んでみました。
 南野自身も投稿し、落選した賞で、受賞作をあれこれ言うのはよくないかなとも思ったのですが、とりあえず読んでみた二作品が、ちょっとすごいことになっていたものですから、やはり語らせてもらいたいと思います。けなすと負け犬の遠吠えにしか聞こえませんので、基本的にほめる方向で。
 先に読んだ「ミミズクと夜の王」を先に語ろうと思っていたのですが、きょう、一気読みした「扉の外」があまりに衝撃的だったものですから、こっちのほうをまずはじめに語らせてもらいます。

 いやあ、正直言ってたまげましたよ、これ。こんなのには勝てません。

 ライトノベルなんて幼稚だとか、つまらないとか思っている方には、ぜひ読んでもらいたいです。

   *

 ストーリーは高校生の主人公たちが、目をさますシーンからはじまります。
 彼らは知らない間に意識を失わされ、気づいたときには別の場所に移されていました。そこで、コンピューターがそこでの生活のルールを説明しはじめるのです。

 この冒頭、誰もが「バトルロワイヤル」を連想するでしょう。しかし、互いに殺し合いしろなどと命令されることはありません。逆に暴力厳禁の命令が出ます。

 ルールは、「暴力をふるうな」以外は「部屋から出てはいけない」くらいです。

 さらにコンピューターはここで生きていくための方法を教えてくれます。
 一日二回、ポイントをくばられます。それを換金(というか、カードに換えて、食料や娯楽設備に使える)するか、スペードをふやすか。
 そのスペードとは、部屋に設置されたマップ(モニターで表示される)に表示されるのですが、それがなにを意味するのか、コンピューターは教えてくれません。

 コンピューターはほんとうに大事なこと。裏のルールはなにひとつ教えてくれないのです。

 そしてストーリーが進行するにつれて、主人公たちは、読者とともに、そのルールを知っていくのです。
 これはカイジの限定じゃんけんにそっくりな展開です。
 え~っと、カイジってなんだ? っていう人はヤングマガジンコミックスの「賭博黙示録カイジ」を読んでくださいね。最初の限定じゃんけん編は、歴史に残る名作です。



 警告! これより先、「扉の外」に関して、思いっきりネタばれさせてもらいます。
 ライトノベルファンで、これから「扉の外」を読もうと思っている方、ご注意ください。





 なんだ、パクりかよ? と思った方、早まらないでください。
 たしかに話が進むにつれて、仕組まれているルールがわかってくるという点では酷似していますが、その展開はまるでちがいます。

 最初のうちはみな、だらだらと無気力で過ごしていました。ある意味平和に。
 その内、主人公たちはスペードが武器であることに気づきます。
 そしてマップ内には敵がいることも。
 敵のスペードは自分たちのスペードとぶつけ合うことで相殺することもわかってきました。
 相手の正体もわかりませんが、負けた場合はダイヤ(この世界での貨幣)の支給がたたれることは最初の説明でわかっていました。(それでも生命維持の最低限ものは得られる)
 そのことがわかって必死になるのです。
 そして相手への恐怖から、食料や娯楽を減らして、ダイヤでスペードを買うようになるのです。

 主人公たちはようやく自分たちが戦争をしていることに気づきます。

 たしかにゲームかもしれませんが、負ければ配給はとまります。食料を買うことはできなくなり、水とわけのわからないゼリー(最低限の栄養が確保される)で生きながらえていくしかなくなるのです。

 さらにストーリーが進むと、別のことがわかってきました。
 敵国は七つ。それは自分たちの学校の他のクラス。そして他のクラスを支配すれば、そのクラスの配給を自分たちが得ることができる。その分、食料を減らさずにスペードを買うことができるようになります。

 そこから先は、そのマップは世界の縮図になります。
 核が開発される前、世界中で植民地支配をおこなったように、本格的に戦争が勃発します。
 モニター上は、スペードのつぶし合い。現実の世界では食糧の奪い合いです。
 このことにより、他のクラスが明確に敵同士になるだけでなく、クラスの中でも確執が起こり始めます。

 きっと生徒たちはこれまでは誰もが、「平和が大事」とか「政治家はちゃんと仕事しろ」とか無邪気に思っていたことでしょう。しかし、自分たちが知らないうちに当事者になっていたのです。国の責任者であり、戦争を始めた当事者に。

 主人公はある事情から、部屋を(つまり国を)たたき出され、出てはいけないはずの外の世界にいきます。そこから他のクラス(つまり敵国)に受け入れられ、そこでなにが起こっているのかも自分の目で見ます。
 さらに第二の国からもはじき出され、もうひとつの国へ。
 その間、八つあった国は、支配され、みっつの国になります。もう完全に世界のシミュレーションです。
 そんな中、みっつの国のリーダーである女生徒たちが、首脳会談を開きます。
 この事態をいったいどうすればいいのか?

 さあ、いったいどうなるんでしょうね?

 ネタバレはここまでにします。
 興味がある人はぜひ読んでみてください。

 これは大賞ではなく、次席の金賞ですが、南野は今年だけでなく、過去をふくめ電撃大賞の最高傑作なのではないかと思っています。(いや、もちろんぜんぶ読んでるわけじゃありません。南野が読んだ範囲ということで)

 ただ、ネットでの評判はなぜか今ひとつのようです。なんでかな?


扉の外

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名探偵・南野海対深見真

2007-02-13 21:08:47 | 読書
 前回、NEXT賞がらみで深見真についてすこしお話ししましたが、今回は、深見真が富士見ミステリー文庫で発表した三作品について語りましょう。
 これは第一回の富士見ミステリーの新人賞で大賞を取ったという名誉ある作品なのですが、なぜか人気はいまひとつのようです。
 まあ、なんというか、ミステリー好きな人ほど、読後に怒り出すという話なんですが、南野はミステリー好きにもかかわらず、怒りませんでしたよ。むしろ、笑ってしまいました。(う~む。ちっともフォローになってないか?)

 まあ、とんでもトリックで一躍有名になってしまった伝説の作品なんですが、南野としてはこれはぎりぎりあるんじゃないかって思います。
 いや、むしろ一巻目の陰に隠れてますが、三巻目こそが、真のとんでもトリックなのでは? と南野は密かに思ってます。

 まあ、どんなトリックなのかっていうことはここでは言いません。ネタバレですから。
 今回、南野が語りたいのは、一番地味と思われる二巻についてです。
 例によって、読み終わってからだいぶたっていて、記憶があやふやなのですが、二巻の肝は、被害者が日本刀のような凶器で斬り殺されていた。しかし目撃情報などから、そんな凶器を現場に持ち込んだり、持ち出したりしたりした人物はいない。ってことだったと思います。

 いやあ、南野はその状況を見て、ぴーんとひらめきましたね。

 まちがいない。トリックは、これだぁあああ!

 いや、自信がありましたよ。一巻目と、三巻目のトリックがあれでしたから(南野は、二巻目を最後に読んだ)。

 名探偵・南野海の推理はこうです。

 犯人は南斗水鳥拳のような拳法を使った。

 つまり、犯人は素手で、あたかも日本刀を使ったかのように斬り殺したのです。
 そう思いこみ、読み進めていきました。

 あれ? ちがうの?

 残念ながら、ちがいました。

 南野の推理は、すこし斜め上を行きすぎていたようです。

 興味がある人は自分で読んで確かめましょう。

(追記 2/14)
 徳間書店のエッジdeデュアル王立図書館のブログによると、深見真先生の「ヤングガン・カルナバル」シリーズの新刊「前夜祭・標的は木暮塵八」が四月に出るそうです。
 http://spn05229-02.hontsuna.net/article/1833756.html

 楽しみです。





戦う少女と残酷な少年―ブロークン・フィスト

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