パピプペポのおと
山田百合子
パッと咲く。ピッと吹く。プッと笑う。ペッと吐く。ポッと赤らむ。
一杯のスピリット、コップとコッペパン、ポンと抜いて、ヘたりこむ
。それ、バビブベボ、いやちがった、パッパ、パピプペポ。のたりこ
む、すっとこ転んで、見上げて、覗きこんで、眼が血っ走って、ポッ
ポッポ。しゅわしゅわ、のらりこんで、喰らいこんで、ふらりふらり
放さない(あん、離さないで…)。呑みこんで、ペッ。呑みこんで、
ペッ(ポッ…、)。桜は満咲、快風の吹き、陽は笑い、雲は雲を吐き
、ポッと赤らむあたし、のパピプペポ。死体は満咲、怪風の吹き、月
は嘲い、煙は煙を吐き、ポッと青らむあたし、のバビブベボ、いや、
(嫌よ)、パピプペポ。満咲くパピプペポ、吹き飛ぶパピプペポ、笑
い転げるパピプペポ、ペを吐くパピプポ、ポらむパピプペ、かくて、
あたしはポペプピパ。ねえ(うふんポ)、あら(なあにペ)、あそこ
(どこプ?)、いや底よ(どこなのよピ)、くるくるパー(パーッ)
。じわじわ迫ってくる(信じる者は救われる)、不思議愉快な音(バ
ババパパ、しわしわ)、まるで蛇、点で便秘、天から雨のポイ、(ゆ
るりぬるり)、暗雲かたむき、怪風たなびいて、やって来る、(ああ
裂けそう(咲きそう?)、
コポッ
コポコポ
プクリ
ポッ
ピクリ
ピクピク
ポコリ
ピッ
プッ
ペッ
パクリパクパク ペコペコ
ポコポコ
パピッ?
プペ? ポポポ(赤らんで)
しゅわしゅわしわしわじわじわじゅじゅじゅむむむパッピップッペッ
ポッ
一杯のスピリット、コップとコッペパン、ポンッと引き抜いて、……
あたしとパピプペポ、
パピプペポとポペプピパ、
ポペプピパとあたし、は向いあい
もたれあって。
あたしは、何もかも喰らいこんで、あたしに呑みこまれたあたしを、
おっぽり残して、いっぱいいっぱい、おめかしして、
世界を呑みこみに出かける、
それパピプペポ、
ほいパピプペポ!
山田百合子 戯言集(1979)『死体病理解剖 × ・・・・・ノオト』より
http://www.k4.dion.ne.jp/~rainbow3/yamada/zaregoto.htm