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生命哲学/生物哲学/生活哲学ブログ

《生命/生物、生活》を、システム的かつ体系的に、分析し総合し統合する。射程域:哲学、美術音楽詩、政治経済社会、秘教

いろはにほへどノオト / 山田百合子

2010年06月15日 00時41分15秒 | 詩 poetry

いろはにほへどノオト


                  山田百合子


イノチミヂカシ コイセヨオトメ、ふん一理ある、



子供は若いうちにつくる(?)べきといわれるのか



、今、私はドーセーしているので心身ともにおよそ



満ち足りていて好き勝手している、ついこのあいだ



は京都山死水汚の都なる鴨川で水上スキーをやって



、四条のランカンをへしおってしまった(これには



説明がいるがメンドーなのでやめ)みたいなヒマを



持ち合わせていると、オクサン アイサレテマスカ



なんて土足無礼なコトバが降ってきて、「風が強い



ですねえ、アラアラ」とインタビューアぁの頬に私



の平手が当たってしまった、とたんにコーヒーもま



ずくなって(元々水がわるいのでこれ以上まずくも



ならないが)プッと吹き出すと、わがダンナの白々



しい顔に当たって、ガミガミ、私はシュンとしてい



るところです、それではと、色は匂へるごとく歩い



てくる、さらばわれも歩き出すナーンちゃって、な



んですか、ああです、こうだろうと、ヒマヒマする



ひとたちの多いこと、「ヒマだなあ、ヒマだし、ヒ



マヒマしょーか?」「やさしくしてくれるならいい



わ」、どだいまちがっている、この発想の貧困さ、



<色は匂へるごとく歩いてくる>てめーら、この深



い味がわからんだろーな一生、ああ哀れなる子羊た



ちよ、「オイオレはジャン荘へいくぞ」とのたまっ



てネギをしょっていった、私はついに救われないの



か、だからときどき、キドータイにナグラレルンダ



ワ、おおサドマゾねえ、もっともそれで目覚めて、



罪深い私をお許し下さい、もっとダンナとあいしあ



うようにしなくっちゃ、くっちゃね、くっちゃねて



、朝日のキララめくまで、そうそう最近わかったが



、ネコはヒトより高貴な精神の持主であるという、



ゴモットモゴクロウサン、当り前じゃないかそんな



こと、カミサンをダシのもとにすることしか知らな



いソクラテスでさえ知ってたのだ、うだうだしい暑



さの中で、つい裸になって道をたずねたユークリッ



ド星座みたいに、とびはなれて遠くから、わいざつ



な声が掛かってくる夜、の灯の螢があちらこちらと



乱舞する、乱舞する夢、夢のように色は匂へど散り
        
ぬる尾、あたしの尾っぽ、けふはしっぽりともたれ



あいながら、ヒマヒマする一方でイソガシイソガシ



するあたし、湯あがりの色、湯揚がりの匂い、モノ



みな黒焦げ、真っ青だ、イソガシイソガシ、ああん



ヒマヒマ、されどあたしの姿はどこに?





山田百合子 戯言集(1979)『死体病理解剖 × ・・・・・ノオト』より
http://www.k4.dion.ne.jp/~rainbow3/yamada/zaregoto.htm