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風間虹樹:いのち絵画の技法(有機的抽象絵画の技法)2 滴下法 (1.1版)

2013年07月09日 16時33分20秒 | 美術/絵画原論、絵画理論、絵画技法
2013年7月9日-1
風間虹樹:いのち絵画の技法(有機的抽象絵画の技法)2 滴下法 (1.1版)
(2013年7月1日-1を改訂)

 いのち絵画、または、有機的抽象絵画、の重要な技法の一つは、【滴下法】(または滴り法)である。
 滴下法とは、或る粘度の絵具を、絵画表面に対して零度から180度まで(方向性を問わなければ90度まで)の或る角度で、或る距離から或る速度で滴り落とす方法である。或る速度のうちには、天に高く向かって投げて落下させることも含むこととする。最小速度としては、絵画表面にそっと置くことであるかもしれない。逆に、最大速度的には例えば空高くの気球から滴下することが考えられる。(短い距離から人技での最大速度的には叩き付けることが一方法であるが、これは【叩きつけ法】という分類カテゴリーに入れることにする。)
 その結果は、放射状に跳ね散った模様から、細いまたは太い楕円形ないし円形の模様ができる。厚さも様々にできる。
 円形や楕円の場合は、個体的生命体に見えるかもしれない。たとえば1~2mの高さからやや粘性のある絵具を滴下すると個体性が高いように感じられる。なお、やぐらを組んで、数mの高さから絵具を落下またはたたきつけたらどうなるだろうか。

 絵画表面を凸凹にすると、それへの滴下法の適用によって面白い効果が得られるかもしれない。
 さらに応用として、たとえば地平面に60度に傾けた木製やプラスチック製の板に跳ね散るような絵具を滴下して、板に跳ね返った絵具の配置を模様とすることができる。

 滴下法も振出し法も、狙いは、自然な存在の仕方をさせれば、自然な存在性となって、自然的に存在する生命体らしさを感じさせるように物体 material body を製作すること making である。

 下図は、滴下法による製作例である。


 ↑図1。油絵具を、ルソルヴァンまたはテルペンとポビー油を合わせたものにゆるく溶いて、滴下すると、生乾きの下地に円形状に中心が凹んで刻印される。ここではジェッソの滴下(結果は凸)と生乾き地への油絵具の滴下(結果は円形状の縁が凸でその内側は凹)の両方が適用されている。

 

 ↑図2。盛り上がった円形状のなかに、油絵具を滴下した。落とした中心は凹む。乾燥すると罅割れる。
   地は数層のアクリル絵具の滴下によって製作した。

 

 ↑図3。図2と同一の絵画物体(部分)。周りの薄くへばりついている生命体たちも、緑系のアクリル絵具を滴下して製作した。垂らし込み的となっている。→【垂らし込み】の効果は滲みと言われるが、垂らし込みというやり方がもたらす効果とは、二つの絵具の(立体的または三次元的)接面 interface での相互作用だとすると、この場合は単色垂らし込みということになろう。地は乾燥状態またはやや湿けた状態での、しかし絵具の境界付近では(自己的に)濃度が濃くなるという場合である[要検討]。
 
 

 ↑図4。滴下によって盛り上がった生命体を養生テープで覆って(マスキング)、振出し法による銀線がかかるのを避けている。

 

 ↑図5。和紙に、「日本画」(膠彩絵画)用絵具を使用した場合。垂らし込みで縞模様を作った。周囲が少し散る円形班。

 

 ↑図6。湿けた状態の上に、蝋を溶かして滴下した場合。下層の桃色で縁取られる。上部の粒粒は塩である。

 

 ↑図7。いくつかの色の蝋を溶かして熱いうちに、ほとんど零度または180度(逆方向での零度)近くの角度で(滴下というより)投げつけ走らせたもの。

 

 ↑図8。楕円形のものが、滴下による製作。緑色の画布上にも、同様にして作った滴下体が分布する。
   緑色の画布は、地の画布を切り裂き(【切り裂き絵画】。ルチオ・フォンタナの(設計思想を抜きにしての)技法化)、一部を差し込んで貼りつけた。【芽生え絵画】である。画布裏に接着剤(この場合はグロスポリマーメディウム)をつけると、盛り上がる場合が多い。その場合、立体感、したがって物体感、したがって存在感が増すかもしれない。

 


 ↑図9。1m強の高さからほぼ垂直に、ゆるゆるの油絵具を滴下して、円状の縁の盛り上がりと内部の凹みを実現したもの。その後、画布を傾けて、油絵具を伝い滴らせた。右上に位置する貼つけた画布は、表面近くに油絵具を置くような感じで滴らせた。絵具どうしが相互作用して(実は、画布をあちこち傾かせて相互交流させた)入り組んだ模様ができた。これはむしろ、油絵具による【垂らし込み】である。つまり、たとえば黄色絵具の生地に直ちに茶色をあちこちに垂らし込むのである。ここでは数色の【逐次垂らし込み】である。そして、画布を傾けることで、模様を制御する。
   筆で塗ること painting は、なんらかの自然性を出したい、いのち絵画または有機的抽象絵画の製作法としては避けるのが賢明である。ヴィンチ村のレオナルド Leonardo da Vinci は、(具象絵画だが、あるいはむしろそれゆえに)スフマートしたわけである。面的に流す手はある。
   なお、絵画 picture を、線描絵画 drawing と塗布絵画(または塗り絵画)painting に分ける場合があるが、人工的に過ぎる。

 

 ↑図10。閑話休題。10は完全数である。10=1+2+3+4 である。陰体と陽体は、創造のさなか、または忘却の水を飲む前は、結界のなかで至福の状態だったのである。白い円は、押版法 (または印判 stamp 法)の適用である。胡粉をペタペタと押しつけた。なお、中央の一対は、水干絵具と岩絵具と水晶末を使用した。

 

 ↑図11。1mm前後の厚さでジェッソを滴下して個体化した。シナベニヤ板の表面は滑らかであるから、滴下した絵具の一部がはみ出るような形態で滑り滴り落ちる場合がある。
 はみ出るような滴りを作りたい場合は、ジェッソを滴下した上に重ねて滴下すると飛び散ったり、滴り落ちる。生命体たちは重層的に存在する状態となる。
 また、滑らかにする他に、表面との角度を急にする手もある。この場合は、(絵具の粘性とも関係するが、)飛び散りが多くなる。
 

 ↑図12。天地を逆にすると、触手が伸びるような形態に受け取れる。