中野系

この銀河系の中心、中野で考えること

メータ/バイエルン国立歌劇場/マーラー3番@サントリーホール

2005年09月27日 | 音楽
ここ最近遠ざかっていたクラシックコンサート。知人からチケットが1枚余ったとの(自分にとっては幸せな)連絡を受けサントリーホールへ。

ご存知の方もあるとは思うけれど、今年と来年は「日本におけるドイツ年」。それがなにか、と言われても困るけれど、国家間で時折ある交流キャンペーンのようなもの。その一環として、ドイツの名門オペラ、バイエルン国立歌劇場が来日公演を行っている。オペラのみではなく、管弦楽コンサートも行っており今回行ったのはそのプログラムの一つ。

マーラー3番、というのはある意味微妙なプログラムかもしれない。まずは作曲者のグスタフ・マーラー。比較的年齢層の若いクラシックファンには絶大な人気があるけれど、年配の人ファンにはそれほどでもない(らしい)。さらに言うならマーラーの交響曲というのはえてして長く、この3番の場合は90分くらい。なので今日のコンサートの場合、前プロ(メインの曲の前に演奏する曲)なしで3番一曲のみ。

チケットの値段もそう安くはなく(一番「安い」席で1万円)、正直、どれほど客が入るのかと思っていたけれど、席は8割以上埋まっていた。景気回復の兆しなのか、勝ち負けはっきりした階層社会になりつつあるのか。いずれにせよ、このような大曲(曲の長さも、オケの編成も大きい)、外国のオケで聴く機会はなかなかない。そういう部分もあるのだろう。

トロンボーンを吹く身としては、この曲第1楽章で延々と歌われるトロンボーンソロが聴けるだけでも充分過ぎるくらい。安い席であったので舞台の右斜め「後ろ」。普通ならかなり悪い場所なのだが、トロンボーンセクションが目の前にいるので、結構ラッキー。持参したオペラグラスで楽譜を見ることまでできたし。

唯一残念だったのは、隣席の人(真面目そうなおじさん)の鼻息。こればかりは先方も悪意があってのことでなく文句も言えないけれど、とにかく「すー、ぴー」と煩く気に触る。音の厚い部分ではまだしも静かな部分になると非常に目立つ。映画と違って席も移れないので運が悪かったと諦めるしかなかったけれど。

とはいえ、基本的には幸せな90分を過ごす事ができた。偉大にして長大なこの曲とその演奏を文章で表現しきる力は正直ない。ので、意図的に一言で安易にまとめるなら「すばらしい」。ドイツのオケならではの音の厚み、各メンバーのテクニック、音色。見事に揃ったユニゾン、オルガンのように響く和音、その音の形、歌い方、トロンボーンのソロの音色。何をもってみてもこの一言を連呼するしかない状態(一部分だけ音程に微妙なところあったけれど、大局には影響なし)。

最終楽章は神々しく、なにか巨大なものが天から降り注ぐような壮大なエンディングで終わるのだけれど、ここにおいてはとなりのおじさんの鼻息さえ、生の息吹に聴こえてくるのだから不思議なもの。まさにとろけるような感じ、を味わうことができた、名演。終演後10分以上止まらなかった観客の拍手がなによりも正確に今日の演奏を語っていたと思う。

やはり音楽は「生に限る」ですね。

最新の画像もっと見る