中野系

この銀河系の中心、中野で考えること

ソニー・ロリンズ@東京国際フォーラム

2005年11月07日 | 音楽
Jazz界の生きる伝説、ソニー・ロリンズの東京公演を聴きにいってきた。

Jazzのマーケットとして日本はかなり巨大な市場の一つ。「巨人」とか「歴史」といった形容をもつミュージシャンでも結構頻繁に来日していたりする。ロリンズもそのひとり。今回の来日公演が22回目。さらにここ10数年だけを取るならば、それこそほぼ1年おき位の頻度で来日していた。

その意味ではさして珍しくも無い公演のはずなのだが、今回だけは「特別」。なにしろこれがロリンズ最後の日本公演ということで、日本のJazzファンにとって「行かずにはいられない」ものに。

これまではだいたい中野サンプラザで行っていた東京公演も今回は東京国際フォーラムAホール。収容人数5000人とJazzの公演を行うにはいささか器が大きいが、チケットは前売り段階で完売。幸いにしてチケットが手に入り、座席は前から25列目。なかなかに運がよい。

自分自身、ロリンズの公演は過去2回程聴きにいったことがあるけれど、ここ何年かは正直「ご無沙汰」していた。元よりJazzに関し、たいして肥えた耳はもってはいないけれど、そのような自分の耳をもってしても、最近のロリンズにさほど音楽的に光るものがあるとは正直思えなかったし、たまにその姿を拝めればそれでよいかな、というのがコンサート鑑賞時の動機であったのも事実。

で、肝心のコンサート。前半と後半、休憩を挟み約1時間ずつの構成。バンドはロリンズ以外にトロンボーン、ベース、ギター、ドラム、パーカッションの構成。ちなみにトロンボーンはロリンズの甥っ子のクリフトン・アンダーソン、最近ではお馴染みのメンバー。

ロリンズ御大、今年で76歳とのことだが相変わらずまぁ「モリモリ」と吹く。その点については感心する限り。よくやるよ、というのがまず何よりの感想。今回で日本は最後だがそれは長旅のツアーはやめる、ということでありミュージシャンとして引退するわけではないのだ。ただ、先に書いたように少し生意気なことを書くとあくまでもあの年にしてはよくやるわい、という見方になってしまうのも否めない。

満員となった東京国際フォーラムやはり年輩の方が多かったが、今日はロリンズを聴きに来る場、というよりはロリンズの姿を拝む場という感じ。会場の雰囲気を一言で表すならば「あたたかい視線で満たされた世界」。目の前であのロリンズがテナーサックスをブロウする。それだけでよいのだ。

一通りのプログラムを終え一度ステージを退いたところで熱烈なアンコール。それに応え再び舞台に現れたロリンズがおもむろに吹き始めたのはセント・トーマス。ロリンズの最高傑作と名高いアルバム「サキソフォン・コロッサス」の冒頭を飾る彼の代表曲だ。ある意味ベタな選曲であるけれど、ロリンズから日本のファンへの贈り物、ということなのだろう。

「あの頃」と比べればテンポも緩やかで指も回っていない。底抜けに明るい南の島の太陽を描いたような音楽が、今日はどこか寂しげに響く。聴いているとなんだか夕日を見つめているような気分になった。

しかしひとつだけ言っておくならば、いろいろな思いを胸に夕日を眺めるという事、これは人生においてもっとも心地よい瞬間のひとつなのだ。

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