中野系

この銀河系の中心、中野で考えること

のだめカンタービレ

2005年08月08日 | 本と漫画
所属するオーケストラを始めとして、楽器関係知人の間で話題の「のだめカンタービレ」。遅まきながら知人に9巻まで借りることができ、一気読み。(現在12巻まで刊行)

音大で自由奔放にピアノを楽しむ「のだめ」と、才能に満ち溢れながらも様々な事情から自分の道を失いかけていた「千秋」。この二人を中心として数々の音楽界の変人達が巻き起こすコメディ。クラシック音楽の世界が舞台ではあるけれど、興味、知識がなくても、純粋なコメディとして充分に楽しい。

「真澄ちゃん」を始め、ストレートではない恋愛志向の人も出てくるのだけれど、知人の指揮者(音大出)によれば、音楽の世界はそういう人が多いのだそうな。作者は業界人を通じての情報収集に余念がないようで、知っている人が見るとなお面白い部分、多いらしい。

感心するのは、劇中で描かれる演奏シーン。作者がかなり曲を勉強、イメージを膨らましてるのが功を奏している。ベートーベンやブラームスの音楽が、あたかも二次元上の絵から聴こえてきそうな感じ。
この漫画を読みつつ、そこで演奏されている曲を聴くと楽しさも倍増。その意味では最良のクラシック入門書、と言えるかもしれない(近日中に劇中の曲を収録したCDブックが発売されるようだ。これはよいかも)。

この漫画がオケ仲間で話題になっている理由はその「楽しさ」以外にもう一つある。
実は、漫画の後半から、実に重い命題がひとつ提示される。自分が楽しめればそれでよい、とのスタンスの「のだめ」に対し、世界的指揮者が投げかける「音楽に正面から向き合わないと、本当に心から音楽を楽しめない」との言葉。
これは我々のようなアマチュアにとっても実に身につまされる言葉だ。

長くアマチュアオーケストラに所属すると、たいてい、この問題に必ず一度は突き当たる(で、しばしば団を二分する議論になったりする)。アマチュアである、という前提もあるので正解は出し辛いのだけれど、一つ確実に言えるのは、この問題を安易な方向で解決させようとする団体は、ほぼ確実にいつまでも変わらない、成長のない団体だ。(言い方はきついけれど、下手なオーケストラはだいたいそう)

貸してくれた知人によれば、10巻以降、このテーマがストーリーの主題となるらしい。その意味で、今後も純粋に楽しんで読めるのか、やや不安ではあるけれど、たぶん「のだめ」は「のだめ」。それなりに楽しませてくれることは間違いないだろう。

クラシックを聴く人にも、聴かない人にもお勧めの作品。

アンダー・ユア・ベッド

2005年06月17日 | 本と漫画
作者の大石圭はホラー小説、および映画のノベライズを中心に活躍しているようだ。
とても苦手な分野なので、本来であれば彼のことを知ることもなかったはずなのだが、ふとしたきっかけで手にしたのがこの「アンダー・ユア・ベッド」。

この小説に限って言えばホラー、というよりは純愛小説。

10年前にたった一度、会話をしたことがある女性のことをふと思い出したことから、主人公、三井は彼女の住所を調べあげる。既に結婚し、子供も生まれていたが、彼はかまわない。ただ、彼女を見守っていたい、その一心で彼女の近くに家を借り熱帯魚ショップを経営しながら、ひたすら彼女の生活の監視を続ける。そのうちこの観察行為がエスカレート、今度は彼女の家に潜入しベッドの下でその生活を「見守る」ことになるが…

本のタイトルは彼の行為そのまま。主人公はいわゆるストーカーなのである。従い「純愛」というのは一方的な視点でおかしかろう、と訝る方も多いだろう(正論だ)。しかし、この本を少しでも読み始めたならば、多くの読者は「純愛小説」と言い切る理由がわかると思う。

これ以外の大石圭作品は未読なのだが、どうもこの作家、このような「本来感情移入すべきでない人たち」に読者を惹きつけてしまうことを得意としているらしい。この作品も、暴力的で決して幸せではない世界の話なのだが、そのなかでひたむきに生きる三井の姿をみていると、思わず彼を応援したくなってくる。それが一方的な思い込みから不法行為を続けるストーカーであるにもかかわらず…

物語の結末は決して明るいものではないし、冷静に考えると本当によいのか、と思う部分は残るのだが、それでも読後不思議とさわやかな気分を残す、実に不思議な作品。だまされたと思って手にとってもそう損はない。

ちなみに「ふとしたきっかけ」とは、この本が私の実家近辺を舞台にしていること。たったそれだけの理由でこの本を手にとった。人生、他人にはどうでもよい「些細な出来事」が人の行動に影響を与えていくものなのだ。

老後の楽しみとしてのスヌーピー

2005年05月24日 | 本と漫画
日本では「スヌーピー」の方が通りがよいのでタイトルもそうしたけれど、スヌーピーをはじめ、チャーリーブラウン、ウッドストック等おなじみのキャラクターが登場するアメリカンコミック「ピーナッツ」。その全作品出版というすばらしい企画がアメリカ本国で行われている。

ピーナッツといえば20年以上昔、日本でも角川から谷川俊太郎の翻訳と原文の併記というすばらしい形で、ペーパーバックがかなりの数出版されていたのだけれど、当然というか今は絶版。子供であった自分の財力ではとても全てを集めることかなわなかったので、その意味でもこの企画は大歓迎、と昨年春の第1冊より全巻集めている次第。(現時点で3巻まで出版)

とはいいつつ、このピーナッツ、1950年の連載開始から2000年まで、まる半世紀も続いていたので、年2冊のペースで全巻完成は12年間後という気の長いもの。そう、全集完成まであと11年。いまから11年後の年齢を考えてみたら少しめまいがしてきた。そろそろ「老後の楽しみ」という言葉を使う年頃になってきたのかもしれない…

ちなみにアメリカの企画ゆえか、1冊あたりのサイズが結構デカイ。高校生の頃つかっていたアルミの弁当箱のようなサイズ(わかるかな)なので、これを24冊揃えるとなると、日本の家庭では置く場所が難しい、とまではいわないまでも、結構邪魔になる感じ。なので、百科事典を一式揃えるくらいの覚悟が必要。

値段は一冊約2200円とお手頃。これが1年に2冊なので、多くの人にとっては金額的にはさほど問題は発生しないのが嬉しいところ。ただし洋書なので11年後の円ドル相場次第では高価な本になっていく可能性はあり。今は円が不当に高いと思うので、この点は要覚悟(というのは少し大げさかな)…

日本の漫画でも長期続いたものはだいたいそうだけれど、連載開始当初はキャラクターの絵柄がだいぶ「変」で、各キャラの性質も後々とはだいぶ異るので、そういう点を眺めているだけでも面白い。スヌーピーも最初の頃は皮肉も言わない、かわいいわんちゃんだし。

実は個人的に、1980年代前半の1エピソードだけ、ふとしたきっかけで覚えているものがあり、これ
をぜひとも見てみたい、という楽しみがあったりする。たぶんこのエピソードに出会えるのは7年後…健康にだけは充分留意して生活していかないといけないな。

ということで、短気でないスヌーピー好きにはお勧めの企画。

※本はアマゾン(日本)で買えます。