施設に入所して生まれて初めて靴下をはいた女の子

2014年11月22日 | 日記

(児童養護)施設に来て一番うれしかったことは何?

施設の職員に聞かれた女の子は「生まれて初めて靴下をはいたこと」と答えたという。

父子家庭に育った彼女は、父親がダムやトンネルの仕事をしており、1か月間家にいないことがよくあった。そのあいだ兄が小さな彼女の世話をしていた。しかし、その兄は中学生になると、彼女に凄まじい暴力をふるうようになった。小学5年のときに保護されて施設に入る。

雨宮処凛さんが「子どもの貧困」についての集会に参加したときに聞いたはなしである。

この日本に、15歳になるまで一度も靴下をはいたことがない子どもがいるなんて、信じられるだろうか?(親の教育方針ではかない子どもとかはいるかもしれないが…)

「常識」とか「普通」とか「当たり前」という点で、そこから外れている。だが、私たちが自分の経験だけで「常識」の類にいれているものは、どれくらいの人が「普通」にやっているのだろうか。

私は里親資格を持っているので、児童相談所が行う里親研修会や、里親さんたちの集まりに行くことがある。先日も研修会があり、ある里親さんが「聞いてよ~」と、預かった子どものビックリ体験を聞かせてくれた。

中学生の女の子が家に来て、初めての入浴の時、浴槽にお湯をいれたら、その女の子は「どうしてお湯を入れるの!!??」とびっくりして、パニック状態になったというのである。女の子は自宅の浴室でお湯に浸かったことがなかったようで、いつもシャワーだけだったそうだ。浴槽の中は物置になっていて、いろんなものが置いてあるとのこと。クローゼットや押入れを水浸しにされたら怒るのと同じようなかんじか…その里親さんはとにかくびっくりしたようで、「お風呂に入ったことがないなんて信じられない」と言っていた。

だが、何人かの子どもを預かったことのあるベテラン里親さんは、「自分の家でお風呂に入ったことがない子、いっぱいいるよ」と言います。浴室が物置になっている家庭が多いとのことでした。

講師の方が紹介してくれたエピソードで印象的だったのは、ある中学生男子のはなしです。

夕飯時に「お腹すいたでしょ?」と里親さんが聞いても、その男の子はいっつも「別に」と言って、2~3杯ご飯をおかわりするのです。何日も何日も同じことが続きました。里親さんはもう意地になってます。「なんで素直にお腹すいたって、言えないんだろ!!絶対言わせてやる~」と思ったようです。もうテーブルをひっくり返したいくらいだったかもしれません。ガマンの限界が来ていたかもしれません。それでもその里親さんは、ケンカする代わりに、男の子にこう聞きました。「○○くんて、どんなときお腹すくの?すくときあるでしょ!!!」

彼の答えはこうでした。

「そうっすね…うちの母親、2~3日メシ作らないことよくあったんですよ。丸1日食わないと、腹減りますね」

彼にとっての「お腹がすいた」は飢餓状態だったのです。

私は丸1日食事をしなかったことなんて、これまでの人生で一度もありません。健康にも恵まれていたので大きな手術などもしたことがありませんし。1食や2食を食べ損ねたことが数回あった程度です。飢餓状態など経験したことがないのです。自分の経験だけではとうてい理解できないことが自分たちの生きる世界にはあります。

経験は確かに大事なのだけれども、自分のこれまでのささやかな、もしかして人によっては、誇らしい経験が何の役にも立たないことに衝撃を受けることがあります。そんなときには、どうすればいいのか…

自分1人ではどうにもならないです。自分には経験のないことでも、他の誰かが経験しているかもしれません。里親に限らず、仕事でもなんでもそうです。人の知恵を借りましょう!

 

 

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