男性の育児休業は誤解が多いために反発されているようです

2021年07月20日 | 社労士
男性育休義務化の教科書 男性育休の教科書』という本が日経BP
から出ました。

男性育休義務化の誤解をちゃんとといてくれています。

ありがたいです。

男性版産休などという名称(出生時育児休業が正式名称)がバーンと出てるので戸惑った人もいると思います。

育休のことだとわかっていても、「男性が育児休業を取ること」が義務化されたのだと勘違いした人もいると思います。

このへんのところが丁寧に説明されています。

配偶者が出産予定にある社員には育児休業のことを個別に知らせて取得を働きかけることが義務化されたのです。

ニュースで大々的に報道されていた「男性版産休(出生時育児休業)」は通常の育児休業とは別枠です。現行のパパ休暇を拡充した内容となっています。

現行のパパ休暇は配偶者の出産後8週間以内に育児休業を取得しておけば(日数は問いません)、その後無条件で2回目の育児休業が取れます。男性だけの特権です。

男性版産休は配偶者の出産後8週間以内は同じですが、最大4週間までとなり、2回に分けて取ることができます。申し出は取得の2週間前までとなり、これまでの1か月前より短縮されています。

通常の育児休業も2階に分割して取得できるようになりました。つまり、男性の場合は最大4分割取得が可能になったということです。

育児休業中の所得補償(雇用保険からでます)のことや社会保険料(免除になります)のこと、会社が国から受け取ることができる助成金のことなども書いてあります。

企業の取り組み事例紹介や育休取得までの仕事のスケジュールや育休中にやることなどのワークシートがついています。

この「育休中になにをするか」というのは男性の場合とても重要な課題です。

ここでの過ごし方がその後の夫婦関係を良くも悪くもしますので。

仕事と家庭の両立支援プランナーとして企業を回っていても、ただ男性育休の取得を!とすすめていると女性社員から手痛い反論がきます。

男性が育児休業を取って何をするんですか?

かえって妻の負担が増えます。

赤ちゃんのお世話に加えて夫の世話までなんて、ストレスがたまります。

……

取ればいいってものじゃないです。

そこのところも今まではノータッチでした。

この本はそこのところも踏み込んで書いてあります。

会社に常備して社員に貸し出すのもありです。





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コロナ禍は平等ではなかった。女性不況・She cessionだった。

2021年07月01日 | 社労士
先日、内閣府男女共同参画局と労働政策・研修機構(JILPT)との共催による労働政策フォーラムが開催されました。

テーマは「新型コロナによる女性雇用・生活への影響と支援のあり方」でした。

内容は研究報告と事例報告、パネルディスカッションで、キーワードは「シーセッション、She cession  女性不況」でした。

つまり、コロナ不況とは女性不況であるということです。

JILPTの研究員やジェンダー論の教授、男女共同参画行政関係者、シングルマザー支援団体の他、自立生活サポートセンターもやいの大西さんが参加していたのは、まさにその点を強調していたと思います。

前回の大きな不況は2008年のリーマンショック時で、そのとき職と同時に生活基盤も失って若年層もホームレス化しましたが、その多くは製造業に従事する派遣労働などの男性でした。

食事の配給に並んでいたのはほとんどが男性でした。

男性を中心とした不況、 ヒーセッション He cession だったのです。

大西さんの報告の中で、「電話相談は女性もいたが、これまで路上での相談や、野外での炊き出しに女性が並ぶことはまれだった。路上で男性に交じって支援を受けることは女性にとってリスクが高い。今回、一定数の女性がいたことがこのコロナ禍における特徴である。子連れで来る人さえいた。10年支援活動をしているが、こんなことは初めてだ」という言葉がありました。

私は去年の秋ぐらいの時点では、コロナによる被害は程度の差はあっても、平等に世界中の人に男女を問わずふりかかっていると思っていました。

「程度の差」というのを軽視していました。

シーセッションという言葉を用いて研究報告をしたJILPT研究員・日本女子大学教授の周燕飛さんは、「シーセッション」という言葉を20回以上はJILPT所長と理事長に説明したと言います。

司会のJILPT濱口所長から、改めて視聴者に対し「シーセッション」を説明してほしいと言われ、もう一度説明するのかと恐縮していたぐらいである。

おそらく、コロナ禍における被害が女性に相当程度偏っているという事実はなかなか認識してもらえなかったのであろうと思われる。

JILPT所長の濱口桂一郎さんは、「働く女子の運命」などの著作があり、女性労働者に対してもかなり専門的な知識や考えを持っており、おじさんとしてはかなり女性労働者について正確な知見を持っている元労働官僚だが、その濱口所長にして、シーセッションという考えはなかなか受け入れられなかったのではないか。

周さんによれば、昨年のかなり早い時期から海外の識者によって「シーセッション」という言葉が用いられていたようである。

では、いったいなぜ女性への被害がこれほどまでに大きくなったのか?

女性不況・シーセッションは世界共通であるが、日本特有の事情が日本のシーセッションを形作っているということを前提とした説明になります。

1 コロナ感染によって消費の自粛が起きたが、飲食他生活関連のサービスはどの国も女性がより多く担っている。

2 保育園や学校の休園・休校によって、家事と育児の負担が増加したが、多くの国ではそもそも家事育児は女性がより多く担っている。

日本の場合は、そこに非正規雇用の問題が加わっている。女性の半数は非正規雇用であり、不況のときには、日本はすぐに正社員を解雇するのではなく、非正規社員の仕事の減量や消失によって正社員をまもるため、どうしても女性の雇用が失われてしまう。

女性、母親が家事育児を担うとされている以上、シングルマザーが仕事と家事育児を両立させることは困難であり、さらに非正規であるため雇用を失えば家事育児も立ち行かなくなる。

休校で給食がなくなり、たちまち食事に困窮するシングル家庭が多かった、子どもに食べさせるため母親は2日に1食だった、それでも育ち盛りの子どもの体重が減った、相対的ならぬ絶対的貧困家庭が日本にも一定数存在する。これはしんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石さんの報告にありました。

女性の中でも、困窮の度合いに格差があったのです。

印象的だったのは、横浜市男女共同参画推進センターの植野さんの報告でした。

無料の電話相談でもっとも多かった年代は50代です。

一昨年までは30代、40代が多かったそうです。

子どもが大きくなって児童扶養手当など子ども関係の支援が受けられなくなった非正規雇用の単身高年齢女性が困窮している実態がわかった。

バブル期に結婚退職して夫の扶養の範囲で働く50代の女性も、DVがあっても経済的に自立できずに、家の中で耐えるしかないという実態もわかった。

女性の中でも格差はあるとは言いながら、出産妊娠で退職して非正規になった30代も、就職氷河期で非正規の40代も、合理的な選択をしたはずのバブル結婚退職の非正規50代も、支援対象とは見られていなかった20代単身女性も、年金さえも夫に頼らざるを得ない60代以降の女性も、日本特有の男女の役割分担に基づく労働観のなかで男性に従属する構造があるということです。

司会の濱口所長から、男女共同参画と言いながら実は全く変わらない構造のままここまできてしまった責任は当然我々にあり、特に内閣府男女共同参画局の責任は…とけっこう痛い指摘をされていた当局ですが、たぶん男女共同参画に関しては多くの関係者が、その活動については形骸化していることを実感していたと思うのです。

私自身、住んでいる町の男女共同参画推進員を6年近く、県の推進員も2年ほどやっていますが、まだやってんのか!って言われても仕方がないほど、形骸化しています。

県の推進員の選任は市町に課せられ、市町の担当者は異動で2年ほどしか携わりませんから、とりあえずやるとされていることはやる…ぐらいです。

自分もやはり同じ穴のムジナです。今期もまたお願いしますと言われてなんとなく続けているだけです。

みながみなそうではなく、熱心にやっている人もいるのですが、そういう熱心な人をうまく使ってご機嫌を損ねないよう運用しているといったところです。

最後に。

司会の濱口所長の「シングルマザーは支援から零れ落ちている層の典型的、古典的な人たち」という言葉に対して、しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石さんが、零れ落ちてるというより、むしろ社会のゆがみが集中しているところ、というふうに言っていて、これは同じ現象を異なる言葉で表現しているのですが…
稼ぎ手の男性(夫)とそれを支える女性(妻)というモデルを前提とした社会支援があり、現状はもはやそうではないのに、それを変えないままであるからそうでない人が支援を受けられずに困窮するという現実を零れ落ちていると言っているのだと思うのですが、それでも零れ落ちるという言葉だと問題が矮小化される惧れがあると感じます。

今度こそ最後。
もやい大西さんの、おぼれていたらまず浮き輪を渡して、それから、本当にその浮き輪は必要かどうか見て、不要なら回収すればいいのだが、日本の場合、おぼれている人に対して、本当におぼれているのか見極めてからじゃないと浮き輪を渡さない、だからおぼれてしまう人が多い、という言葉も印象的でした。(自分の印象としては、入り口は厳しいけど一旦浮き輪を手に入れたら被保護者が強硬態度を保持する限り放置されている…です)


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