金子哲雄さんに聞きたいことがあります

2014年03月13日 | 日記
金子哲雄さんをご存知ですか?

流通ジャーナリストとしてテレビやラジオ、雑誌などで活躍されていた方です。
2012年、10月に肺カルチノイドという病気で亡くなられました。
享年41歳だったそうです。
だったそうです、などと言っているぐらいですから私は金子さんのことを、亡くなるまで知りませんでした。
僕の死に方・エンディングダイアリー500日が出版されたとき、誰だろう、この人?と思いましたが、名前になんとなく覚えがあり、しばらく考えていましたがわかりませんでした。数日経った頃、以前読んだ『「持たない」ビジネス・儲けのカラクリ』の著者であることをようやく思い出しました。
少子化の日本において、所有することのリスクを説き、いかに持たずにビジネスを行うかといったことが書かれた本でした。中身はほとんど忘れてしまいましたが、あとがきに書かれていることは非常に印象に残るものでした。
金子さんは、経済関連の専門誌に経営者むけに「持たない経営」について執筆していたそうです。例えば、正社員を雇用するのではなく、パート・アルバイトの戦力化といった美名のもと、人件費を限りなく抑えながら、最大限の売り上げ・利益を目指す手法などです。ところが、皮肉なことに、正社員が減り、パート・アルバイトの戦力化が進んでくると、経営者むけの雑誌であるがゆえに読者離れも顕著となり、実売部数も減り、自分の執筆機会も失うというジレンマに陥り、何が幸せなのか、わからなくなったと言うのです。
パート・アルバイトの中にも勉強熱心な人はいるが、仕事で成果をあげたからといって、賃金は多少上昇するものの、組織内の地位に大きな変化はないという労働環境のなかで、お金を払ってまで雑誌を読んで勉強する人は少数派ということです。
さんざんっぱら、持たないビジネスのノウハウを書いといて、あとがきがこうですから、なおのこと印象に残っていました。金子さんがこの本を執筆していたときは、闘病真っ最中でした。自分自身を振り返らざるを得ない状況だったのでしょうが、そんなことを知る由もない私は、シニカルでニヒルな人だなぁと思いました。勝手に銀縁メガネをかけた痩せ型のエリートサラリーマンみたいな風貌を想像していました。
ですから金子さんが亡くなった後に出た本の帯の、本人の写真を見て、意外に思いました。小さいときから安いものを買うのが大好きで、スーパーマーケットで世の中の景気を判断する、嫌いなものが一致したことで妻との結婚を決意など…『持たないビジネス』とは全く違う印象の金子さんの姿がありました。
私は実は「持たない」ことに対して、ほんとうに「持たない」ことはいいことだろうか?という思いがあるのです。「持たない」とか「捨てる」がもてはやされるのは、
持ちすぎた反省として当然のことかもしれませんが、それも「持つこと」や「消費すること」がもてはやされたこと同様に、流行でしかないのかもしれないという疑問があるのです。「持たない」ことがそれほど素晴らしいのなら、何もしないのが一番じゃないですか。金子さんにぜひ聞いてみたかったですよ。金子さんはたくさんのものを持っていたと思います。いっぱい考えていっぱい行動して、自ら獲得したものばかりだと思います。そんな両手に花いっぱいの金子さんに、今一度「持たないこと」の利点を問いたいです。
コメント
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