ブログ仙岩

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大石邦子「余震」

2021-05-04 05:08:08 | エッセイ
どんなに寒くても、熱があっても、痛くともお風呂を欠かすことは出来ない。
私は2月13日午後11時ちょっと過ぎいつものようにお風呂に入っていた。
私の下半身の痺れには、お風呂が一番、入らないと眠れない。温泉は尚いいが車椅子で行けるところの磐梯熱海の「かんぽの宿」は閉鎖残念でならない。
そんなことを考えながら湯船に沈んでいる時だった。一気にお湯が頭から被さってきた。同時に電気が消えたり点いたり、地震だ!いつも体の支えにつかんでいる手すりから手が離れ、私の頭が湯の底に、足は天井に向って飛び上がった。
もがきながら、息が出来ずにお湯を飲んでしまった時、お風呂で亡くなった父の顔が見えた。
私は父に押し上げられるように、どこをどうして湯船を出たかわからないまま、脱衣所までを必死で這って出た。
揺れは止み震える手と足で、何とか下着だけは身につけた。亡父が助けてくれたのだと思い涙が溢れた。
突然10年前の津波の映像が脳裏を過ぎ、どれほどの苦しみが渦巻きながら流されたか、次元の違うことだが、思えば思うほど息が苦しく、涙となり知り合いもなくなっている。
翌朝私の体は痣だらけに気づき、胸も、膝も、不思議に足の指迄痣があった。
この震度5の地震は10年前の余震で、体に感じる揺れは、14,711回に及ぶと新聞に出ていた。
主治医にこのことを話しながら、先生が一人でお風呂に入ることを心配することが分かった。
一番のリハビリは、日常生活で、自分でできることは自分ですると昔病院を出るとき教えられた。病院では入浴の仕方も練習してきた。もう少し頑張ってこの家で暮らしたい。
今日3月14日は父の命日である。
今年2月13日23:07のこの地震は相馬鹿島沖75㎞の深さ55㎞、北緯37.7、東経141.8、M7.3の相馬市など震度6強、
今月1日10:27の宮城県金華山南東沖27.2㎞の深さ60㎞の地震も、北緯38.1、東経141.8、M6.6、石巻市など5強。
先月4月18日9:29宮城県金華山東沖27kmの深さ50㎞の地震も北緯38.3、東経141.9、M5.8、一関市など震度4であった。
このマグニチュードが1大きくなるとエネルギーは32倍になる。1~9のMは地震の大きさで横揺れの水平振幅であり、1~7の震度は地動の強さ縦揺れ上下動振幅である。震源地から遠くなれば弱くなる。