今年の正月は東北かな、ということで元日から「古窯」に二日間泊まってきました。
総客室数140室の大型旅館。
かみのやま温泉駅から送迎バスに乗り込むと、正月のせいかあっという間に補助席までいっぱい。全員乗り切れないと判断した若い運転手は客をタクシーに誘導し手配していました。古窯、太っ腹!(タクシーの運転手と話している様子からたぶん料金は古窯もちだと思う)
フロントでチェックインしてから抹茶と和菓子サービス。そのロビーのようなところからのロケーションは・・残念ながら駐車場と向かいの建物。
だいたいウエルカムドリンクを出すところは飲んでいる間にチェックイン作業をするんだけど、すでにフロントで済ませていたから、なんとなく「早く飲んでくれないかな~」というような、ちょっとせかされる感じがしたのは気のせい?そこらへんが大型旅館の辛いところだろうね。こういうところは抹茶サービスは要らないんじゃないかなと思うけど・・でもやりたいんでしょうね。
担当した中居さんは実に一生懸命で、挨拶もしっかり。その中居さん、自信を持って接客してる印象をうけましたね。接客は良いんだけど、自分は意地悪なのでちょっとイレギュラーな行動をとってみました。そしたら彼女はアドリブには弱いことが判明。スミマセン。
その他の従業員の方も若い人が多く、きちんと目配りもし、お客さんに対応していました。みんな偉いね、自分の若いときはもっとダラダラしてた・・。
接客面は良いとして、施設。結構あちこち、というか変な言い方だけど手当たり次第に手作り感のある気配りがありました。エレベーターの開閉の文字が見にくいのでシールを貼ってあったり、浴槽の手すりに滑り止めのテープを巻いていたり、サウナの入口にメガネ入れがあったり、浴場までの石畳は床暖になっていたり。サウナのメガネ入れはいつも欲しいと思っていたのだけど、いままでに河口湖のうぶやにあっただけだったかも。それにこの価格帯の旅館で浴場にバスタオルが置いてあるのも珍しい。しかも手拭いを忘れた人用にハンドタオルも少し積んであった。
浴槽は8階の展望風呂と1階の男女入れ替え制。展望風呂からの蔵王連峰のローケーションは、印象は良いけど少し弱い感じ。1階には源泉かけ流しの船の形をした大人2人くらいで入る湯船があった。結構人気でなかなか入れなかった。ま、お風呂は普通かな。
でも、なんか、こういう接客やサービスは、予算をもう少し増やせば普通にやっているところも多いし、料金が高くなる分宿の料理も良くなりますよね。そうすると、古窯は接客・サービスのコストパフォーマンスが高い宿、逆に言うとリーズナブルな宿ということだけになってしまうんじゃないですかね。
「らく焼」という皿に絵や文字を書いて焼く企画をやっていて、確かに著名人の作品が数多く展示されているコーナーも立派だけど、この宿自体のインパクト、宿自体の個性というか香というか、いまひとつ感じられなかった。
問題は、料理。
この宿を選ぶ段階で、接客面が良さ気なので、たぶん料理あたりにしわ寄せがくるんだろうな、とは思っていたのですが、予想以上の残念な結果でした。
でも、ネットの口コミを探してみると、そこそこ美味しいとの記事が多いので、あれ?あれ?あれ?ですよ。
マジですか?
私だけ?
って感じ。
味付けに甘味があるというのではなく、全体的に「甘い」。しかも「すきやき」に温泉卵って(あとでみたらHPに確かに温泉卵と書いてあったんですけどね)。だから味が薄まらないし、これは食べられなかった。天ぷらも天つゆや塩は無くて、レモン絞ってちょ、と言われました。天ぷらは油っぽかったしお新香も、しば漬けとキュウリのキューちゃんに出会えるとは思わなかったです。これ自分のとこで作ってるのかなぁ・・。※確かに「あること」を警戒しているのはわかります。しかし過剰すぎる。
思ってみれば、数十年前の宴会料理をそのまま現代に甦らせている感じでしたね。
朝食のバイキング。これも食べるものなかったなぁ。朝から焼きそばや唐揚げ、ミニハンバーグなんか食べたくないし、どうしようかと和食を探してもいまいち心惹かれるものもなく。焼き立てと書いてあるパンを取ったら堅いし。結局シャケの切り身と梅干でお茶漬けにして食べました。でもまあ、ほとんどがレトルトなのは仕方ないとしても、アジの干物とか卵くらいは目玉焼きにして出してほしいな。
例の「プロが選ぶ旅館百選」の料理部門をチラと覗いてみたら、古窯は4位(2011年)でした。「坐漁荘」が27位で、「慶雲館」が61位とか、どちらも古窯に劣るなどというのは、ありえないランキングでした。料理はそもそも食材の価格が違うので比較しようとしても難しいし、調整などできるものでもないと思うのですね。ランキングというより、お気に入りなら、価格を無視して順番を付けざるを得ないんじゃないかな。同じ団体旅館で93位の桂川と4位の古窯の料理なら、桂川を選ぶのに迷いはありませんね。
そんなことを友人に話したら、古窯の料理でも一番安い料理だったんじゃないの?と言われました。
人差し指を右に倒して、ちっちっ、です。
安い料理だったかもしれないけど、その高い安いがあっても、それは食材の差で、ほとんどの料理は共通している。値段ごとに味付けを変えている訳がない。
料理人の腕は「お新香」でわかる、というのが自分の持論。
「古窯」が何故成功してるのかと思うに、戦略的に築いたサービスの評判とこの価格設定に需要があるんだろうなと思います。ただその需給のバランスは微妙かもしれない。バランス感覚の悪い人が経営についたときは難しくなりそうです。いまの時代、大型旅館の経営は大変そうですね。
せっかくだから「かみのやま」、散歩してみました。さすがお正月。閉まってたところも多く、人通りもあまりなかったです。でも雪とかアイスバーンに気を付けながらも、かみのやまの雰囲気が感じられて、楽しかった。
開いていた共同浴場が一つあって、入ってきました。特に特徴のあるお湯ではないですが源泉かけ流し。お湯は少し熱めで42~3度くらいかな。
入館したところでうろうろしていると、小窓から「150円です」とおばさんが声を掛けれくれたのですが、なんとなく「つげ義春」の漫画の雰囲気がありましたね。好きですね、こういうところ。
結局店がどこも閉まっていてお昼が食べられなかったのですが、古窯に戻る直前に蕎麦屋発見。営業していました。
かみのやま、なんか楽しい。
また行きたい。