水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

「手の変幻」の授業 第1段落(3)

2019年04月18日 | 国語のお勉強(評論)
③ 僕はここで〈 逆説を弄し 〉ようとしているのではない。これは、僕の実感なのだ。ミロのビーナスは、言うまでもなく、高雅と豊満の驚くべき合致を示しているところの、いわば美というものの一つの典型であり、(その顔にしろ、その胸から腹にかけてのうねりにしろ、あるいはその背中の広がりにしろ)、どこを見つめていても、ほとんど飽きさせることのない均整の魔がそこにはたたえられている。しかも、〈 それら 〉に比較して、ふと気づくならば、失われた両腕は、ある捉え難い神秘的な雰囲気、いわば生命の多様な可能性の夢を深々とたたえているのである。つまり〈 そこ 〉では、大理石でできた二本の美しい腕が失われた代わりに、存在すべき無数の美しい腕への暗示という、不思議に心象的な表現が思いがけなくもたらされたのである。それは確かに半ばは偶然の生み出したものであろうが、なんという微妙な全体性への羽搏きであることだろうか。その雰囲気に一度でも引きずり込まれたことがある人間は、そこに具体的な〈 二本の腕が復活することをひそかに恐れるにちがいない 〉。たとえ、それがどんなにみごとな二本の腕であるとしても。

Q11「逆説を弄し」について、a「逆説」を片仮名語に直せ。b「弄」の訓読みを記せ。
A11 aパラドックス bもてあそぶ

Q12「それら」の指示内容を40字以内で説明せよ。
A12 飽きることのない均整の魔がたたえられている、ミロのビーナスの身体の各部分。

Q13「そこ」とはどこか。15字以内で説明せよ。
A13 両腕が存在したと思われる部分。

Q14「二本の腕が復活することをひそかに恐れるにちがいない」とあるが、それは何が失われるからか。11字で抜き出せ。
A14 生命の多様な可能性の夢


 ミロのビーナスの身体 → 有限の美
     ∥
     高雅と豊満の驚くべき合致
     ∥
    美の一つの典型 典型 … 同類の中でその本質・特徴を最もよく表している型
     ∥
均整の魔   均整 … つりあいがとれ整っている
      ↑
      ↓
 両腕が失われた部分 → 無限の美
     ∥
捉え難い神秘的な雰囲気
     ∥
    生命の多様な可能性の夢
     ∥
    存在すべき無数の美しい腕への暗示
     ∥
    不思議に心象的な表現
     ∥
    微妙な全体性への羽搏き


一段落 ①通説 ←→ 逆接
    ②具象 ←→ 抽象
    ③有限 ←→ 無限
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