『絹遺産研究会リポート』第18号
平成29年8月8日(火)13:30から第18回目の研究会を、県庁舎101会議室において発表者の町田伝道師を含めた5名で実施しました。
今回は、発表者から、富岡製糸場の煉瓦製造に関わる文献調査の結果に基づき、煉瓦焼成の指導者、製造本数、焼成時期、焼成に用いられた窯数等広範囲に亘る考察を進められた成果の一端について報告していただきました。
富岡製糸場の煉瓦製造については、首長の「ブリュナ」が深谷の韮塚直次郎や瓦師達に煉瓦の性状や規格、焼成方法などについて指導したとする先行研究者の説が通説となっているところです。これに対し発表者は、煉瓦の焼成が始まった頃にはブリュナは資材調達や技術者の雇用のため、渡仏して日本には不在であったことなど9つの考察と例証を挙げて、煉瓦の製造について指導したのは「ブリュナ」ではなく富岡製糸場を設計した設計技師の「バスチャン」ではないかと、これまでの通説と異なる研究結果の報告がありました。
さらに発表者からは、富岡製糸場建設の日本側現場責任者であった尾高惇忠が記した「製糸場諸用日記」の記述に見られる内容から考察して、煉瓦製造者に対して煉瓦の性状や規格など基本的な技術指導は「バスチャン」が、煉瓦焼成の現場指導は別途東京から雇用された煉瓦職人によりなされたと推察されること、煉瓦焼成には深谷の瓦師のみならず、窯場のあった福島(現甘楽町)の瓦師も焼成していたとする研究成果が披露されました。
また、発表者が煉瓦製造の実証実験として取り組んだ、自家製のブロック窯で焼成した際に生じた技術的問題点等についても意見をいただきました。
台風5号の接近から延期も考えられた今回の研究会でしたが、報告修了後は関連事項に関して活発な意見交換が行われ、予定時間を超過する充実した研究会となりました。
※本研究会は、参加者の方々が常日頃関心をもっている事項に関する研究成果を披露していただき、情報共有とご自身の研究成果に反映していただける絶好の機会であると考えます。月1回第2火曜日県庁会議室に集まること以外は規約のない肩の凝らない研究会です。関心のある方は是非ご参加下さい。
(T越朗 記)