第12回 伝道師養成講座を開催
群馬県企画部世界遺産推進課と富岡製糸場世界遺産伝道師協会の主催で「第12回富岡製糸場世界遺産伝道師養成講座」が11月29日(木)・30日(金)・12月1日(土)の3日間、県内外の受講生を対象に群馬県庁29階294会議室で開催されました。
養成講座1日目(29日)は、午前9時30分からの受付でしたが、受講生の皆さんは早めに受付を済ませて35名の出席がありました。
午前9時45分から富岡製糸場世界遺産伝道師協会近藤会長と群馬県世界遺産推進課松浦利隆課長からの開講挨拶に始まり、世界遺産推進課鈴木洋平主任によるオリエンテーションで開講式を終え、10分間の休憩の後、初日(29日)の養成講座第1日目の講義が始まりました。
講義1:「世界遺産の基礎知識と日本の世界遺産」と題して世界遺産推進課古澤勝幸次長から「世界遺産条約と世界遺産リスト」「世界遺産の義務とメリット」「世界遺産の登録プロセス」「世界遺産の登録基準」「世界遺産としての産業遺産」「日本の世界遺産」と世界遺産についての講義が行われました。
講義2:「文化財保護法の概要と近代化遺産」と題して世界遺産推進課登録推進係井上昌美主幹から「文化財保護法と文化財保護制度の概要」と題して「文化財保護法の概要」「近代化遺産」についての講義が行われ、午前の講義を終了しました。
昼食休憩後、午後のスタートは受講生が1分間の持ち時間で自己をアピールする「自己紹介」からです。それぞれが前向きで意欲的な紹介がありました。
講義3:「絹産業の基礎知識」と題して富岡製糸場世界遺産伝道師協会町田睦企画部長から「蚕糸業のあらましーシルク産業の姿―」「製糸工程のあらましー生糸を作るにはー」「わが国の蚕糸絹業の概要」についての講義が行われました。
講義4:『「富岡製糸と絹産業遺産群』の価値と概要」と題して世界遺産推進課松浦利隆課長から、世界遺産の登録基準(OUV)に触れながら、「鉄」に始まった西欧に見る産業革命の歴史や、その代表的な遺産であるイギリスの「アイアンブリッジ」を例に話された後、絹のたどってきた歴史から群馬の生糸が果たした役割に触れながら「富岡製糸場と絹産業遺産群」の価値について、19世紀中頃から20世紀における養蚕・製糸の分野における技術革新と世界との技術交流を示すもので、富岡製糸場を中心に「高山社跡」「田島弥平旧宅」「荒船風穴」は技術の集合体であると、解りやすく丁寧な講義でした。
講義5:「ぐんま絹遺産ネットワークについた」と題して世界遺産推進課地域連携係高橋陽一補佐から「ぐんま絹遺産とは」「ぐんま絹遺産の特徴」「ぐんま絹遺産ネットワークの趣旨」「登録の現状」などの講義が行われました。
本日の締めくくりは、「バーチャルツアー体験」と題して構成資産の4か所を映像によって紹介しました。「富岡製糸場」を中嶋弘副会長、「田島弥平旧宅」を町田睦企画部長、「高山社跡」を中島進広報部長が、そして「荒船風穴」を井上雄二学習部長が、それぞれ説明を行いました。
午後5時の終了でしたが、受講生の皆様は疲れも見せずに最後まで熱心に受講されていました。
養成講座2日目(30日)は現地研修です。
受講生34名と伝道師8名、県職員1名の43名が参加して、午前8時高崎駅東口を大型バスで出発し、道すがらの車内で中嶋副会長の挨拶と本日の概要説明を受けました。
最初に伊勢崎市境島村の「田島弥平旧宅」へ向かい、午前9時に到着をしました。ここでは「ぐんま島村蚕種の会」の栗原さんなどが出迎えてくれ、挨拶をした後、2班に分かれて「田島弥平旧宅」を始め、周囲の養蚕農家群や島村の沿革などの説明を受けながら、約1時間の研修でしたが、受講生の皆さんは、これまでにあまり見たことのない光景に見とれておりました。
次に、藤岡市高山の「高山社跡」に向かいましたが、途中の交通混雑で到着予定の午前11時を15分ほど遅れての到着でした。ここでの案内は「高山社を考える会」の解説員が待ち受けており、早速、挨拶を交わした後、ここも2班に分かれて説明を聞くことにしました。
長屋門の前で全体的な説明を受け、母屋を見ると玄関周りが原型に修復されており、これまでとは雰囲気が変わっておりました。特に、中に入って2階の蚕室では、高山長五郎の養蚕飼育法「清温育」などの丁寧な説明を受けましたが、始めての蚕室に受講生の皆さんは興味深げに見ておりました。
続いての見学地は、富岡製糸場です。その前に昼食を富岡製糸場の前にある「おぎのや」で「峠の釜めし」を摂ったのち、ここで合流した近藤会長から「富岡製糸場設立の背景」と題して①安政の開港と蚕糸類の輸出、②明治政府が取った基本的な政策、③洋式器械製糸場設立の経過、④外国人の雇い入れと製糸器械の発注、⑤建築諸資材の調達、⑥創業までの諸経費…についての概要説明を聞きました。
その後の富岡製糸場では、やはり2班に分かれての見学となり、中嶋弘副会長と徳江康富岡製糸場担当の両人により場内を一巡しました。通常では見るこのできない「鉄水槽」を見学することができましたが、受講者の中には、「貴賓室」やブリュナ館にある「地下室」の見学ができなかったことを残念がっておりました。
本日、最終の
見学地「荒船風穴」ですが、時期的に現地に入ることができないため、この資産を展示してある「下仁田町ふるさとセンター」に到着しましたが、ここでは秋池所長が、すでに会場を整えて待っておりました。
秋池所長による「荒船風穴」の概要などの説明を受けたのち、館内の展示物に従い内容の説明を丁寧に受けることができました。
帰途のバス車内では、関連するDVDを放映して、これまでの見学地を再確認をするとともに、充実した研修を終えて午後5時30分、無事、高崎駅に到着しました。
養成講座3日目(12月1日):本日も県庁29階294会議室で行われ、この日も34名の受講生が参加する中、日下部中北毛支部長の司会で午前中、主に「富岡製糸場世界遺産伝道師協会」が担当するスケジュールとなっております。
午前9時30分からは、井上学習部長によるワーキンググループの案内から始まり、中島進広報部長の講義6としてのオリエンテーションと続きました。「伝道師協会のあらまし」と題して資料に基づき「富岡製糸場世界遺産伝道師協会」の概要、伝道師として心構えや伝道活動を行うのにあたっての種々の決め事など細かい部分を含めての説明を行いました、続いて成田裕美子東毛支部長の「パネル解説」の仕方、そして受講生には伝道活動で行う「上州座繰り」と「繭クラフト(ぐんまちゃん)作り」を短い時間でしたが体験してもらいました。
続いて、講義7:「群馬県における養蚕製糸のあゆみ」と題して、共愛学園前橋国際大学名誉教授石原征明氏による「上野国と生糸・絹」「養蚕業の発達と養蚕業の飛躍的発展」「横浜開港と生糸輸出」「器械製糸への道を開く」「改良座繰り結社の形成」「組合製糸 碓氷社・甘楽社・下仁田社(南三社)の改良座繰」と「養蚕製糸業が社会の発展に果たした役割」を、言葉巧みに話され、一時、受講生から笑いがこぼれる楽しい講義でした。
昼食休憩後、講座としての最後となる講義8:「世界遺産登録について」と題して、ジャーナリスト佐滝剛弘氏による「衰えない日本の世界遺産人気」では、2011年6月下旬にパリはユネスコ本部で開かれた世界遺産委員会で「平泉」と小笠原諸島」が世界遺産に登録される瞬間に立ち会った…の切り口から「世界遺産とは?」「危機からの救済が基本理念」「地域の誇りとアイデンティティー」「世界遺産の課題」について講義が行われました。
養成講座の全てが終了しましたが、この研修を締めくくる「テスト」を行いました。選択問題30問で30点、与えられて課題に、自己の考えを述べる記述問題で70点の合計100点です。その結果は閉講式の前となります。
テストの後は、5班に分かれてのグループ討議です。「『富岡製糸場と絹産業遺産群』を世界遺産にするため、自分にできること」をテーマに各班とも、活発な意見交換の末、各班の発表者による発表が行われ、「受講前と今とでは、「富岡製糸場と絹産業遺産群」を世界遺産にとの知識を含め、考えが違ったことを実感したし、伝道師協会に入会し「伝道活動に参加して普及・啓発をしてみたい」と心強い発表がされました。
テストの結果、すべての受講者が高成績であったことの報告があり、修了証書は、受講生が34名と多かったため代表者にお渡ししました。
閉講式では、近藤会長、松浦課長から、それぞれ感想を含めての挨拶が述べられ講習会を無事終えることができました。
その後、午後6時からロイヤルホテルで懇親会を兼ねた食事会を行い、和やかに賑やかに歓談し、お互いの健闘を誓い合って、午後7時にお開きとなりました。
(S.N 記)