深体 49
名稜 57
試合は、第3Qを迎えていた。
ここまで、ペースは名稜が握っている。
足を生かし、得意の速い展開を作り、深体大リングをガンガン襲う。
身長の差をカバーために投入されたC辻だったが、名稜C瀧川に走り負け、インサイドを攻められていた。
ボールの占有率は、名稜が6割を超え、名稜の押せ押せムードであることは、
観戦している素人でもわかるものだった。
だが、見た目以上に、点差はついていない。
それは、要所で名稜オフェンスを止め、確実に点を沈めた深体大の意地とも、強さとも取れるものが、
そこにあったためだった。
冷静に守り、冷静に攻める。
深体大選手は顔色一つ変えない。
対して、リードしている名稜は焦りを感じ始めていた。
(完璧にうちのペースなのに、なぜ点差がつかねぇんだ!!)
市原の動きを冷静に見極める牧瀬。
その視線を感じ市原は。
(やりづらい相手だぜ。)
(市原君、だいぶ焦ってきたようだね。)
それは、小関、鴨川、瀧川も同様であった。
ただ一人、冷静に戦況を分析していたのは、PF里中。
名朋時代、森重とともに、IHを制覇した選手である。
(これほど、攻めているにも関わらず、得点差が開いてない。
お互いに速攻を交え、ボールが動き回っているから、なかなか気付かないが、
深体大は、牧瀬の3Pを多用してきている。いや、投数は少ないが、高い成功率を収めているというべきか。
ここは、迫られる前に・・・。)
「朝日!ディフェンス交代だ。鴨川は牧瀬にあたれ。朝日は徳永だ。」
「なに!」
「深体大は、要所要所で牧瀬にボールを集め、3Pを決めてきている。
それが、点差が離れていない要因の一つだ。鴨川なら牧瀬を抑えられる!」
「それは、俺のディフェンスが」
「朝日は徳永!!お前もそのほうがやりやすいはずだ。」
「・・・。」
市原は、少し考えてみた。
視線を徳永に移す。
(確かにガンガン来るやつの方が、やりやすい・・・。)
「わかったぜ。徳永は俺に任せろ!!」
市原は牧瀬から徳永に、鴨川は徳永から牧瀬にマッチアップを変えた。
(さすが里中君、少し遅いけど、よく気付いたね。でも。)
と牧瀬。
(ここから、作戦変更だよん。)
と徳永が笑った。
『ピィーーー!!』
加藤のファウル。
そして。
「メンバーチェンジ!青!」
交代が告げられた。
「あとは、任せましたよ。」
「ゆっくり休むピョン。」
「ピョン!?」
(ピョンが復活した。)
苦笑う加藤。
第3Qも2分が経過したところで、深体大が動きをみせる。
「深津だーーー!!!」
「でたーーー!!!」
「流れを変えられるか!!」
「アップテンポ、スローテンポ、どちらにも対応できる深津君。
さぁ、何を見せてくれるのかしら。」
「うぉーーー!!深津君のゲームメイク、凄く久々です!!」
中村の興奮は隠しきれない。
「集まるピョン。」
「ピョン!?」
「深津、ピョン復活か。うはっ。」
「何度もいうが、これが一番しっくりきているピョン。」
「ホント、面白いよ。深津君。」くすっ。
「焦る時間でもないピョン。じっくり攻めるピョン。ペースを握るピョン。」
「あぁ。」
「辻、ただデカいだけじゃないピョン。瀧川に負ける選手ではない、俺が保証するピョン。」
「深津・・・。」
「さぁ、早いとこ逆転しちゃおうぜ。」
最後、徳永がしめた。
(ピョン連発しすぎじゃん。)
名稜のオフェンスからリスタート。
PG小関に深津、SG市原に徳永、SF鴨川に牧瀬、PF里中に河田、C瀧川に辻がついた。
『パス!』
『パシ!』
名稜の速いパス回し。
そして、市原へ。
『キュ!』
『ダム!!』
間髪いれず、一気にドライブをしかける。
あくまでも、名稜はアーリーオフェンスのスタイルを貫く。
(いきなり突っ込んでくるとは、甘くみられたな!)
とマークが変わったばかりの徳永。
『キュ!!』
市原の前を塞ぐ徳永。
『キュッ!』
『ダム!!』
切れ味鋭いフロントチェンジ。
「!!!」
(遅い!!)
(やろう!)
市原は、徳永を抜き去った。
ぽっかり空いたスペース。
レイアップシュートでゴールを狙った。
-----------------------------------------------------------------------
<<回想>>
深体大体育館。
『ドガァ!!』
「ぶしっ!!」
1軍と混じり、ボースダンクを決めた河田。
その光景をコートの隅で見つめる辻。
「すっ凄い・・・。」
「河田はすげーよ。1軍でも見劣りをしない。だが、俺たちだって負けていないさ。」にこ。
隣の徳永が答えた。
「え!?」
「河田君は、器用な万能選手。そういう選手はなかなかいない。
でも、僕らにも彼に勝てる部分もある。全てで負けているわけじゃない。」
「でも、俺には、そんなものないし、なぜ深体大から推薦がもらえたのかもわからない・・・。」
「高さケロ。」
「深津・・・。」
「辻の高さは、このチームに必要ケロ。」
「河田は、エース級の選手とマッチアップする可能性が高いだろ。
そこで、インサイドでは辻が必要となるわけさ。」
「今すぐじゃなくていい。河田君のプレーを盗み、ゆっくり成長すればいいよ。」
「お前は、ただデカいだけじゃないケロ。深体大に必要不可欠な選手ケロ。俺が保証するケロ。」
(深津・・・、徳永、牧瀬・・・。)
「ありがとう。」
-----------------------------------------------------------------------
(あれから1年。毎日、励ましてくれたみんなのためにも練習の成果を見せてやる!)
市原のレイアップ。
「うりゃーー!!」
「止める!!!」
辻が、カバーに入った。
市原の前に壁のような辻。
(デッデカい。)
「打たせない!!」
「ちっ。」
市原は、咄嗟にボールを下に落とした。
受け取ったのは、C瀧川。
「ナイスパスだ!!」
『ダン!!』
ゴール下を狙う瀧川。
横から河田がブロックに跳ぶ。
『バッチィン!!!』
「!!!!」
「河田か!」
力強い瀧川のシュートを河田が力でねじ伏せた。
「辻!ナイスディフェンスだ!!」
「河田!!!」
「サンキュ!辻、助かったぜ!!」
と徳永。
「辻君!OK!」
「おう!」
「河田のブロッーーク!!」
「辻もナイスディフェンスーだ!!」
「いいぞ!河田ーー!!」
ルーズボールを奪った深津が不気味に一言。
「反撃だピョン。」
深体大の逆転へのカウントダウンが始まる。
深体 49
名稜 57
続く。
名稜 57
試合は、第3Qを迎えていた。
ここまで、ペースは名稜が握っている。
足を生かし、得意の速い展開を作り、深体大リングをガンガン襲う。
身長の差をカバーために投入されたC辻だったが、名稜C瀧川に走り負け、インサイドを攻められていた。
ボールの占有率は、名稜が6割を超え、名稜の押せ押せムードであることは、
観戦している素人でもわかるものだった。
だが、見た目以上に、点差はついていない。
それは、要所で名稜オフェンスを止め、確実に点を沈めた深体大の意地とも、強さとも取れるものが、
そこにあったためだった。
冷静に守り、冷静に攻める。
深体大選手は顔色一つ変えない。
対して、リードしている名稜は焦りを感じ始めていた。
(完璧にうちのペースなのに、なぜ点差がつかねぇんだ!!)
市原の動きを冷静に見極める牧瀬。
その視線を感じ市原は。
(やりづらい相手だぜ。)
(市原君、だいぶ焦ってきたようだね。)
それは、小関、鴨川、瀧川も同様であった。
ただ一人、冷静に戦況を分析していたのは、PF里中。
名朋時代、森重とともに、IHを制覇した選手である。
(これほど、攻めているにも関わらず、得点差が開いてない。
お互いに速攻を交え、ボールが動き回っているから、なかなか気付かないが、
深体大は、牧瀬の3Pを多用してきている。いや、投数は少ないが、高い成功率を収めているというべきか。
ここは、迫られる前に・・・。)
「朝日!ディフェンス交代だ。鴨川は牧瀬にあたれ。朝日は徳永だ。」
「なに!」
「深体大は、要所要所で牧瀬にボールを集め、3Pを決めてきている。
それが、点差が離れていない要因の一つだ。鴨川なら牧瀬を抑えられる!」
「それは、俺のディフェンスが」
「朝日は徳永!!お前もそのほうがやりやすいはずだ。」
「・・・。」
市原は、少し考えてみた。
視線を徳永に移す。
(確かにガンガン来るやつの方が、やりやすい・・・。)
「わかったぜ。徳永は俺に任せろ!!」
市原は牧瀬から徳永に、鴨川は徳永から牧瀬にマッチアップを変えた。
(さすが里中君、少し遅いけど、よく気付いたね。でも。)
と牧瀬。
(ここから、作戦変更だよん。)
と徳永が笑った。
『ピィーーー!!』
加藤のファウル。
そして。
「メンバーチェンジ!青!」
交代が告げられた。
「あとは、任せましたよ。」
「ゆっくり休むピョン。」
「ピョン!?」
(ピョンが復活した。)
苦笑う加藤。
第3Qも2分が経過したところで、深体大が動きをみせる。
「深津だーーー!!!」
「でたーーー!!!」
「流れを変えられるか!!」
「アップテンポ、スローテンポ、どちらにも対応できる深津君。
さぁ、何を見せてくれるのかしら。」
「うぉーーー!!深津君のゲームメイク、凄く久々です!!」
中村の興奮は隠しきれない。
「集まるピョン。」
「ピョン!?」
「深津、ピョン復活か。うはっ。」
「何度もいうが、これが一番しっくりきているピョン。」
「ホント、面白いよ。深津君。」くすっ。
「焦る時間でもないピョン。じっくり攻めるピョン。ペースを握るピョン。」
「あぁ。」
「辻、ただデカいだけじゃないピョン。瀧川に負ける選手ではない、俺が保証するピョン。」
「深津・・・。」
「さぁ、早いとこ逆転しちゃおうぜ。」
最後、徳永がしめた。
(ピョン連発しすぎじゃん。)
名稜のオフェンスからリスタート。
PG小関に深津、SG市原に徳永、SF鴨川に牧瀬、PF里中に河田、C瀧川に辻がついた。
『パス!』
『パシ!』
名稜の速いパス回し。
そして、市原へ。
『キュ!』
『ダム!!』
間髪いれず、一気にドライブをしかける。
あくまでも、名稜はアーリーオフェンスのスタイルを貫く。
(いきなり突っ込んでくるとは、甘くみられたな!)
とマークが変わったばかりの徳永。
『キュ!!』
市原の前を塞ぐ徳永。
『キュッ!』
『ダム!!』
切れ味鋭いフロントチェンジ。
「!!!」
(遅い!!)
(やろう!)
市原は、徳永を抜き去った。
ぽっかり空いたスペース。
レイアップシュートでゴールを狙った。
-----------------------------------------------------------------------
<<回想>>
深体大体育館。
『ドガァ!!』
「ぶしっ!!」
1軍と混じり、ボースダンクを決めた河田。
その光景をコートの隅で見つめる辻。
「すっ凄い・・・。」
「河田はすげーよ。1軍でも見劣りをしない。だが、俺たちだって負けていないさ。」にこ。
隣の徳永が答えた。
「え!?」
「河田君は、器用な万能選手。そういう選手はなかなかいない。
でも、僕らにも彼に勝てる部分もある。全てで負けているわけじゃない。」
「でも、俺には、そんなものないし、なぜ深体大から推薦がもらえたのかもわからない・・・。」
「高さケロ。」
「深津・・・。」
「辻の高さは、このチームに必要ケロ。」
「河田は、エース級の選手とマッチアップする可能性が高いだろ。
そこで、インサイドでは辻が必要となるわけさ。」
「今すぐじゃなくていい。河田君のプレーを盗み、ゆっくり成長すればいいよ。」
「お前は、ただデカいだけじゃないケロ。深体大に必要不可欠な選手ケロ。俺が保証するケロ。」
(深津・・・、徳永、牧瀬・・・。)
「ありがとう。」
-----------------------------------------------------------------------
(あれから1年。毎日、励ましてくれたみんなのためにも練習の成果を見せてやる!)
市原のレイアップ。
「うりゃーー!!」
「止める!!!」
辻が、カバーに入った。
市原の前に壁のような辻。
(デッデカい。)
「打たせない!!」
「ちっ。」
市原は、咄嗟にボールを下に落とした。
受け取ったのは、C瀧川。
「ナイスパスだ!!」
『ダン!!』
ゴール下を狙う瀧川。
横から河田がブロックに跳ぶ。
『バッチィン!!!』
「!!!!」
「河田か!」
力強い瀧川のシュートを河田が力でねじ伏せた。
「辻!ナイスディフェンスだ!!」
「河田!!!」
「サンキュ!辻、助かったぜ!!」
と徳永。
「辻君!OK!」
「おう!」
「河田のブロッーーク!!」
「辻もナイスディフェンスーだ!!」
「いいぞ!河田ーー!!」
ルーズボールを奪った深津が不気味に一言。
「反撃だピョン。」
深体大の逆転へのカウントダウンが始まる。
深体 49
名稜 57
続く。
でも、そろそろ深沢大が逆転する雰囲気ですね
それに深津と河田がいること、大学王者だということもあってか山王と雰囲気が似ていますね
リードされているにも関わらず焦りがないところが特に似ている気がします
チームのパワーバランスが難しいですが、名稜大はうまキャラばかりのチームなので、かなり強くしてみました。
確かに、山王と深体大は似ているかもしれません。沢北=徳永、松本=牧瀬みたいな性格ですしね。
荒木さん
冷静沈着かつ適切な発言。かなり優秀なリーダーですよね。