透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「すけすけ」から「うねうね」へ (前編)

2006-09-03 | A あれこれ


「あわあわ」な まつもと市民芸術館(060902)

■ 伊東豊雄さんが長年求めてきたのは原風景である「輪郭の曖昧な諏訪湖」のイメージを再構成した「薄くて軽い境界の曖昧な透明建築」だった。 自邸「シルバーハット」や「東京遊牧少女のパオ」、「八代市立博物館」などの作品としてそのコンセプトを具現化してきた。

「せんだいメディアテーク」はその到達点として構想された、はずだ。**徹底的にフラットスラブ、海草のような柱、ファサードのスクリーンの3要素だけをピュアに実現する。スラブは極力うすく ファサードのスクリーンは横のストライプのみ 透明、半透明のフィルム はりわけ** 「せんだい」の最初期のスケッチは有名だが、そのスケッチにはこのような「メモ」が書かれている。

このスケッチは本や雑誌などで何回も紹介された。
『建築家のメモ メモが語る100人の建築術』丸善にもこのスケッチが紹介されている。そこで伊東さんは次のように書いている。**私にとって建築のデザインを始める時の最初期のイメージは実に頼りないものである。多くの場合それは、深い霧の中でものを見ているように、もやもやと曖昧で輪郭がない。この輪郭のないのが私の原イメージの特徴かも知れない。**

海草のようにゆらゆらとした柱、薄いフラットスラブ・・・「せんだい」のイメージは佐々木睦朗さんの卓越した構造センスによって具現化されていくのだが・・・。

『せんだいメディアテーク コンセプトブック』NTT出版に収録されている「アンダーコンストラクション」で伊東さんは、このプロジェクトの設計は従来とはまったく異質な体験であったと書き、「自分でコントロールできないことをやっている」と実感していたと続けている。

そしていつの場合でも行き着く先がほぼ予想できたが、「せんだい」ではその行き着く先がほとんど見えないまま最後まできてしまった、と告白している。


工事中、伊東さんは大勢の溶接工が鋼材と格闘する姿を目の当たりにしたはずだ。鋼管を鳥かごのように組み合わせた柱(チューブ)、2枚の鋼板で構成されたフラットスラブ(その内部には応力分布に対応した鋼製のリブが多数つけられてる)。

海草のイメージとは全く異なる圧倒的な存在感の柱。ひらひら、ふわふわとは全く異なる厚い鋼板のスラブ。 曖昧な建築という伊東さんの原初的なイメージとあまりにかけ離れた実在。

幾何学的な形態を特徴とする近代建築では曖昧な建築は実現できない・・・伊東さんはそのことを「せんだい」で思い知る。 

伊東さんはすごい人だ! 

**藤森さん、教えて下さい。近代主義建築の矛盾を見てしまった建築家に、でも頼るべき田舎も自然もないことを知ってしまった建築家に、この先あるべき建築を・・・・・・。** 

この藤森さんへの質問の答えを、自らたったの数年で見つけ出してしまった。曖昧な建築実現の為の別の方法論を。

以下後編に続く。




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