■ 松本清張の多くの作品が過去に何回かテレビドラマ化・映画化されている。もう何年も前に観た映画『砂の器』は印象的な作品で、ハンセン病の父親と全国を放浪する主人公の少年の姿が美しい風景と共に今でも記憶に鮮明に残っている。この映画は原作を越えた出来栄えだった。
『球形の荒野』はヨーロッパの中立国で終戦処理に奔走した外交官・野上顕一郎とその家族の「悲劇」を描いたミステリー。原作を最初に読んだのは中学生の時か、高校生の時。手元にある文庫(写真)は1975年と1998年に読んだというメモがある。
昨晩、テレビドラマ化された同作品の前編を見た。小説のラストは印象的だが、さて今晩の後編、そのラストやいかに・・・。
実は昨晩見た前編のあまりにも説明的な表現が気になっていた。これはミステリーのはずなのに・・・。今夜(27日)見た後編もそうだった。妻と娘を、そして国民を救うために自ら根なし草になった野上顕一郎の孤独。
「彼にとって、地球そのものが荒野だったんですね」いくらなんでもこの台詞はないだろう。タイトルの「球形の荒野」をこうもストレートに説明されては味気ない。
小説はお互い相手が誰であるのか知りながら、そのことを口にしないで野口雨情の童謡「七ツの子」を一緒に歌うことろで終わる。 ところがドラマは娘が男に「お父さん」と呼びかける。どうもこれも味気ない。
映画『砂の器』は原作を越えた出来栄えだったと書いたが、このドラマは原作を越えることはできなかった、残念ながらそう思った。