透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ブックレビュー 2024.02

2024-03-01 | A ブックレビュー




 2月に読んだ本は上掲写真の通り。長編小説が3作品。『類』と『風神雷神』上下は図書館で借りた本

『日本人なら知っておきたい日本の伝統文化』吉村 均(ちくま新書2023年)
以前同氏の『空海に学ぶ仏教入門』(ちくま新書2017年)を読んだが、その時**私には難しく、理解の及ぶ内容ではなかった。**と書いている。今回も同じで、内容を理解できなかった。

**いま私たちが伝統的と思っているものの多くが、いかにして明治に入ってからつくりだされてきたのか。民俗学や宗教学、倫理学等の観点から近代以降に日本人が見誤り、見失ってきたものを掘り起こす。** カバー折り返しにこのように本書が紹介されているが、民俗学や宗教学、倫理学に関する素養が全くないことが理解できない理由であろう。加えて理解力がかなり落ちてきていることも大きい。

『高校生のための経済学入門』小塩隆士(ちくま新書2024年)
経済に無関心ではいけない。基礎的な経済用語について学ぼうと本書を読んだ。「おわりに」で筆者は次のように書いている。**高校時代にどうしても経済学を学ぶ必要があるとは、筆者には思えません。もっと歳を重ねてからでも遅くないと思います。**(252頁)
学びたいと思ったときが「学び時」。

『暗夜行路』志賀直哉(新潮文庫1990年発行、1994年12刷)
暗い内容だけれど、最後を読んで救われるストーリー展開。名作は再読に耐えると、もう何回も書いたな。読了直後は唐突な終わり方、という印象だったが、今は実に効果的で印象に残る終わり方だと思っている。

『空想の補助線 幾何学、折り紙、ときどき宇宙』前川 淳(みすず書房2023年)
数理エッセイ集。幾何学で読み解くパスタの形、幾何学で鑑賞する名画、折り紙で解く数学の難問、谷川俊太郎の詩を天文学で解釈する・・・。

『ゴッホのあしあと』原田マハ(幻冬舎文庫2020年発行、2023年9版)
『たゆたえども沈まず』の副読本。原田マハさんのゴッホゆかりの地を巡る旅の記録。

『類』朝井まかて(集英社2020年)
朝井まかてさんは、ちょっと脇にいるような人物に光を当てる。森 鷗外には五人の子ども、三男二女がいたが、類は末子。その類を主人公にした鷗外の家族の物語。

『風神雷神』上下 原田マハ(PHP2019年)
原田マハさんの構想力はすごい!
**宗達が織田信長の前で作画を披露した事実はどこにもない。ましてや、信長の意向を受けて、使節とともにローマへ旅した ― などということは、研究者が聞けば一笑に付される「夢物語」である。
けれど ―。それでいいではないか。**(311頁) 
原田さんの手にかかると、この話が荒唐無稽には思えないから不思議。すばらしい。原田さんに拍手!

これまでに原田さんの作品を17作読んだ(過去ログ)。それらの中でアートの力、アートの魅力がストレートに描かれていて印象に残るのは『デトロイト美術館の奇跡』、この作品は好きだな。


今月はどんな本と出会うのだろう。


万治の石仏

2024-03-01 | A あれこれ


 諏訪大社下社春宮(下諏訪町)の近く(*1)に祀られている万治の石仏。久しぶりに参拝してこようと出かける前から決めていた。案内板に記されている方法で石仏の周りを時計回りに3周する。

岡本太郎は諏訪の御柱とこの石仏を大変気に入って、何度もこの地を訪れたとのこと。


実にユニークな姿かたちの石仏だ。



*1 徒歩で5分くらい


説明板の書き出しにある明暦三年、この年(1657年)江戸では「明暦の大火」と呼ばれる大火が発生している。