今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

#301万台の初期型ローライ35なのだがの巻

2023年11月27日 20時00分00秒 | ブログ

別のカメラを作業しようと思っていましたが、工具が足りないのでローライ35ドイツをやります。#3011XXXなので初期も最初の方だと思いますが、点検していくと不具合が10項目以上あります。まず距離リングが変でしょう? ft機なので海外仕入れと思いますが、最短側でストッパーが利かずに回り続けます。沈胴もフェルトの摩耗でスカスカ状態。

露出メーターは動いているように見えますが、受光窓を塞いでも針は中央から動きません。メーター単体は生きていてCds不良の最終段階です。

 

カバー横がへこんでいまして「修正指示」がありますが、恐らく過去に板金されていますね。これ以上は無理でしょう。

 

圧板やスプールも初期型ですね。HONEYWELLとのダブルネーム機ですが、発売の初期からダブルネーム出荷をしていたのですね。巻き上げレバー裏のレバーアテが欠落しています。

 

メーターの内側の本ガラスが割れているようです。

 

 

裏蓋も問題あり。カウンター盤が復帰しませんね。巻き戻しダイヤルの回転が困難なぐらい渋いのとシューのレールに変形があります。

 

すでに「修理カルテ」に記入するスペースがなくなって来ました。その②に続くかもしれません。カウンター復帰不良は、過去の修理で左のカバーのネジを締め込むとカウンター盤が戻らないことからネジを締め込まずネジロックで留めてありました。本当の原因はピンセット先の樹脂が荒れて盛り上がっているためで、対症療法的修理です。どちらにしてもカウンター進みも不良のため別の対応も必要で、裏蓋にカウンターが付いているローライ35の宿命的故障。

開閉レバーも汚れで作動が重いので分解清掃をします。

 

 

距離リングが止まらないのはストップリングが外れていたため。

 

 

内部も初期型なので劣化しています。おそらく何度も修理を受けています。メーターガラスは上側ガラス(樹脂)の裏側に傷がありました。

 

露出計ユニットを取り出してCdsを交換します。幸い電池室の電解液漏れは起こしていないので基板の半固定抵抗などは生きているでしょう。

 

メーターは元気に触れています。現状ではこのような修理しか仕方がありません。

 

初期の個体は鉄部品の錆が進行しています。巻き上げギヤの洗浄とグリス塗布をします。

 

すでに巻き戻しレバー基部は変更されて以後と同じ仕様です。遮光用の毛糸が劣化して切れていましたので新しい毛糸で交換しておきます。

 

画像枚数を減らしてこのまま行きます。シャッターの分解とレンズの清掃をします。レンズの状態は非常に良いです。調整シムが5枚(0.9mm)も入っていました。この時点でストップリングの爪が折れているのに気が付いていません。

初期生産のレンズとしてはコーティングも含めてコンディションは良好です。最後にブレードスプリングを取り付けて終了。

 

洗浄したトップカバーにメーター窓の接着、レバーアテの熱カシメ、レリーズピンにグリスを塗布して本体にセットします。

 

フィルムを装填して作動をチェックします。

 

 

フィルムカウンターの逆転を留めるロッキングスプリングにはドイツ製の初期型ですので補助スプリングが入っていないため製作して追加しておきました。36枚まで正常に進みます。

 

ピント調整の時にやっと気が付いた。左が付いていたストップリングで、最短側の爪が折れている。右が正常品。これは交換するしかありません。

 

初期型は「Rollei 35」 の彫刻文字が以後の個体より細くて少し頼りない感じですね。いろいろ問題のある個体でしたので「作業はどうしたものか?」とも考えましたが、ドイツ製の初期ということで生かされた個体ですね。最後にレンズ前縁の白化したカバーリングを黒に戻して貼って完成。

 

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珍しいSEMFLEXの巻

2023年11月26日 17時00分00秒 | ブログ

おフランスのセムフレックスというカメラが来ました。過去に扱ったことがあったか記憶がありませんが、シャッターが固着でレンズは激しく曇りと裏蓋脚のガタを修理せよとのことです。

 

長期間使われなかったと見えてシャッターは固着しています。自社製シャッターのようですが、スローガバナーを外して洗浄します。しかし、このガバナーが中々取り出せない。知恵の輪のようにしてやっと分離したところ。

シャッタースピードは1/10~1/250で、1秒などの低速は切れないのでアンクルとガンギ車ではなく、の重り車で減速させるタイプ

 

レンズはビュー、テイクともかなり曇っています。テイクレンズはベルチオ75mmf4.5。

 

ファインダーは明るいとは言い難いです。ローライのようにフードを分離しようとするがネジがない。フードは長いピンにより串刺しで留まっています。

 

フレネルはなくピントグラスが厚いせいかファインダーは暗いです。

 

 

もっと腐食しているかと思いましたが、ミラーは外周のみ腐食ですので清掃で再使用とします。内部の汚れを清掃します。

 

ビューレンズの曇りがひどいので分解して清掃します。ベルチオ75mmf3.3付。

 

 

フートを取り付けますが、ネジが無く、一見スマートに見える外観ですが、このピンの圧入式では何度も分解するとゆるくなってしまうでしょうね。長期的に見ればローライ式が正解でしょう。

 

二眼レフに多い裏蓋脚の陥没変形によるギッタンバッコンです。調べていくとピンセットの脚部が陥没しています。これを修正します。

 

で、裏蓋を本体にセットするのもピンに寄ります。要するに分解するなということでしょうか?

 

レンズはきれいでシャッターも快調となりました。ローライとシャッターチャージは逆です。レリーズは右にスライドです。

 

どことなくおフランスのきれいなデザインですが、品質性能的にはローライですね。写りはどうなのでしょう?

 

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未分解のPEN-Wの巻

2023年11月23日 19時00分00秒 | ブログ

来月の運転会に若い頃一緒にオートバイのレースをしていた同級生と合うので、当時の実況録音のCDをコピーしていました。もちろん当時はCDなんてないので、別の同級生がレースの度に富士スピードウェイまでカセットデンスケを持って来て、グランドスタンドから録音をしてくれたものでした。そのテープが経時劣化で再生不能になる直前に私がSONYのダブルカセットデッキでダビングをして、それをCDに焼き直したという奇跡的に残った音源です。同級生はこのレースのジュニア250ccクラスで優勝を飾っています。当時のプログラムをコピーして一緒に持って行きます。みなさんにもお聞かせしたいのですが、残念ながらgooブログは音源はUPできないそうです。

で、本題です。何台ものPEN-Wをオーバーホールに出して頂くご常連さんですが、どれもきれい過ぎて心置きなく使えないとのことで新たに入手して来たこの個体は・・確かに塗装の剥離はありますけど、恐らく未分解機でかなり良い個体と見ましたよ。さすがにベテランのPEN-Wファンはお目が高い。

内部もきれいなもので、全く問題はないでしょう。

 

 

トップカバーを外してみましたが、やはり分解はされていません。持病の巻き止め不良とファインダー汚れはありますけど、意外にレンズは良いです。おそらく湿気の少ないところに保管されていたのでしょう。

おそらく問題はない個体と思いますので書くこともないと思います。シャッターは羽根を外して地板にした状態でシャッターを切ってみます。のレバーを押し切らずスローガバナーが停止しています。

ハウジングのプレートは内部に油が浸透していることがあるので必ず分解して洗浄します。

 

では、洗浄したダイカスト本体にスプロケット軸から組み立てて行きます。

 

 

完成したシャッターユニットを本体に搭載します。

 

 

ストロボの発光テストをしてカム盤を取り付けます。

 

 

曇りがひどいファインダーのレンズを分離して清掃の上再接着をしました。

 

 

駒数ダイヤルの裏面のみ激しく腐食していますね。研磨をしてから取り付けます。

 

巻き戻しダイヤルも腐食しています。

 

 

今日の作業はここまでです。

 

 

レンズの状態はかなり良いと思いますね。前玉を軽く拭いた状態。何よりレンズキャップをして良い環境で保管されていたと見えてバルサムの黄変がありません。非常にクリアーです。

 

後玉のバルサムも良い状態ですが、コーティングに薄い曇り汚れがあります。

 

清掃をしたところ。

 

 

私はPEN-SW系の使用歴を判断するのにシャッターダイヤルと距離ダイヤルを見て判断します。この部分のメッキとアルマイトは非常にチープな仕上げで、ほとんどの個体では手の塩分により腐食しているのが普通です。この個体の場合、ほとんど劣化が見えず使用頻度が極端に少なかったことが分かります。使用後は手の塩分を拭っておくことをお勧めします。

まず、最近ではお目に掛かれないような素晴らしいコンディションのレンズです。使用後は必ずレンズキャップをして紫外線に触れさせないようにしてください。

 

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不調のPEN-F兄弟の巻(2)

2023年11月22日 11時00分00秒 | ブログ

カメラ本体よりレンズの方が問題ありでしたのでUPが遅れました。#2009XXと1台目より後の個体ですので特に問題はありませんのでざっとです。まず、気になったのは裏蓋のラッチが飛び越していること。この部分は作りが弱いので、巻き戻しダイヤル軸の上下作動が重くなるとすぐに発生します。この個体の場合は鍵板が完全に変形していますね。これを修正しておきます。

はしょってすでに組み立てです。ブレーキはOリングの交換調整をしています。

 

これはすでに修正して組んだところですが、よく間違えられているのですがのマスクがスクリーン金具の裏に入っていました。それですと遮光にはならないので、画像の位置が正解です。また、ついでに書いておきますが、リターンミラーを留める上下のネジは同じものではありません。長さが違い当然部品番号も異なります。間違って組むとリターンミラーの上下位置が設計と違ってしまいます。

組み立てた前板関係を本体に組み込みます。

 

 

特に問題もなく組み立て完成。

 

 

付属に38mmと別便で25mmが届きました。まず38mmですが、クリック用のスチールボールが入っていませんね。

 

絞り羽根に油の付着ですので洗浄脱脂とグリス交換をしておきます。

 

後玉外周に小さなカビがあるのですが、この個体はレンズが公差の範囲で大きいのか、ホルダーの方が小さいのか(両方?)組み立てによって圧入となっており無理に分解するとレンズが欠ける危険があるのでこのままとします。

スチールボールは規格品の1/16ですので新品は容易に入手可能です。よって新品を取り付けます。

 

問題は25mmです。絞りレバーを絞るとPVレバーが見えますね。これは絞り機構が変です。マウントの留めネジも1本欠落していますので過去に分解されています。

 

本来はの絞りレバーはマウント側の・・・の間に挟まって連動しますが、この個体の場合、最短側で連動が外れてしまいます。ピントリングをいじられた形跡はありません。結果的に絞りレバーの変形と判断しました。

F用の初期としてはレンズは良好です。清掃をして組み込みましたが・・

 

本体側のバネ力では絞り羽根が完全に開放となりません。すべての問題は絞りユニットにあったのでした。右側のレバーは簡単に曲がってしまいます。

 

裏側を見ると、かなり腐食が進んでいることが分かります。

 

 

あ~ぁ、面倒なことになって来ました。

 

 

メーカーSSだったら当然ASSY交換でしょうね。表面が腐食していて羽根がスムーズに作動できない状態です。これを研磨します。

 

研磨をして組み立てました。作動は嘘のように軽くなっています。

 

 

と言うことで2台のPEN-Fとレンズは完成とします。

 

 

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不調のPEN-F兄弟の巻

2023年11月17日 09時00分00秒 | ブログ

え~と、なんて言うか調子の悪いPEN-Fが2台来ましてね。片方は中古カメラ店で購入されて、もう片方は元某カメラメーカーのリペアマンさんから購入されたとのことですが・・ぱっと見、何もしていないように見えますけど・・

 

まず初期のユニットが使用されている#1164XXから見ます。これは・・少し前にもお書きしましたが、中古店様には一通り整備をしてから販売するお店と、不具合のところだけ直して(不具合が無ければそのまま)販売されるお店がありますが、この個体は販売時には不具合が無かったということでしょうね。

しかし、このホコリは・・使われているテープがオリジナルではないですし、配線の通し方も違いますから手を入れてはいるのでしょうね。それにしても・・

 

シボ革は乱暴に剝がされていますね。こんなに傷を付けなくても剥がせるのに・・

 

 

まず、シャッターユニットを見ます。ブレーキは固着しています。これは作動に影響がありますので分解でOリングを交換します。

 

作業の多くの工数を古いモルトや接着剤の除去に使われます。

 

 

古いオリジナルのモルトを剥がさずに、その上から新しいモルトを貼ってあるので剥がすのが大変です。

 

で、やっとボディの洗浄を終えてモルト貼りから組み立てて行きます。

 

 

シャッターユニットにもう一つの問題。事前の点検でシャッターダイヤルの回転が重くなる部分がある。点検すると、調速カムが完全に奥まで入っていないため、その奥のクリック板が遊んでいてクリックバネがカム山から外れるためでした。

 

奥まで入らない原因は、画像のようにカムはシャッタースピードの調整のために工具で潰されていて、それによって内径が変形↖↗して真円でないため、段付きシャフトに入らなかったものです。ヤスリで内径を修正します。

 

これは工場での組み立て不良です。1964年5月製の個体ですから約60年ぶりに作業ミスが暴かれたということですね(笑)元のネジロック位置から半回転ねじ込まれたことが分かります。この分では2台続けてのUPはきついので2回に分けますね。

ブレーキはリングナットに緩み止めのポンチが打たれていますので簡単には分解できませんが何とか分解が出来ました。Oリングホルダーの内側はOリングのゴムにより激しく腐食しています。錆によって内径が太りOリングが持ち上げられて固着します。

内径を研磨して錆を除去しました。Oリングを嵌めてブレーキの利きの調整をします。

 

快調にテンションハンマーが回転しているのが分かるかな? 

 

 

前板のリターンミラー関係をメンテナスします。過去にシャッターフリーズで修理をされたとのことですが、恐らくリターンミラーユニットのテンションを上げられていますね。角度にして90°(時計で15分)程度強く張られています。やむ負えずテンションを上げる場合もありますが、その前にフリクションを低減させる処置が先と思います。

PEN-Fはプリズムのマット面がピント面になります。シミのような汚れがあって、普通のクリーナーでは取り除けません。

 

このように清掃しておきました。

 

 

点検していくと、リターンミラーの上側のピポットネジが緩んでいます。通常はネジロックされていますので緩みませんが、何らかの都合で緩めた後にネジロックをしておきませんと必ず緩みます。

 

そもそも、初期型ですからリターンミラーの2片にミラー抑えのネジがあるはずですが、テープが貼られていて、それを剥がすとネジがありません。観察するとミラーは純正ではありません。PEN-F系は厚みが特殊で0.9mmですが、普通の1mmで貼られているようです。これですとファインダー像の無限調整が出来ないはずです。(調整の形跡はありません) リターンミラーを張り替えるためにピポットネジを緩めたものと思われます。リターンミラーは新品と張り替える必要があります。まぁ、問題の多い個体ですね。

リターンミラーの接着剤の硬化時間がありますので付属のレンズをメンテナンスしておきます。F用の40mmとしては程度は良好ですが、ヘリコイドグリスの流化により絞り羽根に油が回って正常に作動しません。過去に分解歴がありますが、オーナーさんが「使用中にネジが落ちて来た」とのことですが、あ~これね。

絞りユニットの脱脂洗浄とヘリコイドグリスの交換をしました。レンズを清掃して組み立てて行きます。紛失したネジ1本は添付されていないので当方で追加して組みます。

 

全反射ミラーは「新品交換指示」でしたが、予定外にリターンミラーの交換をしましたので、費用がかさむので私の判断で再使用としました。

 

これでやっと組み立て完成。

 

 

他の方の手が入った個体は思わぬところでトラップがあったりして工数も通常よりかかりますから実は苦手です。では、2台目にかかります。

 

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