今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

今年最後のPETRI M35の巻

2015年12月30日 16時50分35秒 | ブログ

今年も押し詰まって、これが最後の作業となりそうです。こちらのご常連さんはいつも食玩のヒコーキをプレゼントして頂けます。ありがとうございます。うぁ、私、水上機が大好きなので、先日、近くのスーパーで見かけた時、「買おうかな?」と思ったのでした。(買わなくて良かった)二式水戦と零観です。飛行学生を終了時に陸上機(艦戦)と水上機の搭乗員に振り分けられます。二式水戦は広大な陸上基地のない南洋諸島の防衛のために零戦にゲタを履かせて作られた機体。三菱ではなく中島の製作です。零観は軍艦に搭載されて、主に砲弾の弾着観測に使用するための機種ですが、WW2では、戦艦同士の撃ち合いはすでになく、航空決戦となっていました。二式水戦の飴色が良いですね。昔は明灰色と言われていましたが、その後の実機の調査によって、飴色がかった灰色である、というのが現在の定説になっています。海軍機(艦載機)は塩害からの腐食防止のためにニスを塗布(九六艦戦など)していたので、その色ではないか? ということらしいです。最近はプラモ製作をやっていないので、最新の事情は分かりませんけど。。

で、コニカC35かと思いましたら、PETRI M35というカメラです。色々なメーカーデザインの良いとこ取りのような作りですねぇ。コシナのOEMらしいです。どうりでペトリらしさは感じられませんね。

 

お訴えは、鏡胴が曲がっている。はい、確かに右(下)が陥没しているように見えますね。しかし、レンズ自体は中心部分で、外側はCdsの部分ですね。

 

分解してみると・・あぁ、前面下部に衝撃を受けたのでしょうね。2本のネジ部分で曲がっています。上下カバーも含めて薄い板厚のアルミ材ですから、ちょっとぶつけるとへこんでしまうようです。レンズは f2.7って、中途半端 ?

裏側です。仕方がありませんので、なるべく平滑に修正していきます。

 

 

陥没で板厚が薄くなっているところもありますので、板金だけでは水平に戻りません。調整シムを入れて組みました。まぁ、殆ど上下差はないようです。

 

一応、距離計連動のプログラムEEカメラです。発売は1971年らしい。極めてオーソドックスな見慣れた設計です。

 

レリーズボタンはPEN系とよく似ていますが、一回り大型です。ボタンが押し易い? いえ、ボタンの位置が端過ぎて、指のおさまりが極めて悪いです。

 

光学系をすべてクリーニングしました。元々、使用頻度は殆どないような良いコンディションを保っています。巻き戻しダイヤル横の小さなレンズ穴は何 ? 。これはフィルムが装填されているとピンが押され、インジケータが赤になるのでした。

 受光素子はcds 1個です。再半田付けで組み立てます。

 

 

裏蓋のモルトはすでに貼り替えられていますが、モルトの厚みが厚くて、本体との締りがきついようです。

 

スライド部分にはモリブデングリスを塗布しておきます。

 

 

すでに貼り替えられていたモルトの両面テープが非常に糊が強く、剥離に苦労しました。適切な厚みのモルトに貼り替えてあります。

 

カメラがコンパクトなので、余計にこの位置のレリーズボタンってなんでしょう? メカの制約なんでしょうけど・・

 

上下カバーの材質が真鍮なら助かったであろう打痕があるのが残念ではありますが、それでも良いコンディションの個体には違いありません。恐らくペトリの最終の頃の製品でしょうから、販売数も多くはなく、現存も貴重な個体なのでしょうね。

 うしし。未開封でコレクションしているのでパッケージは開けない。金型技術の進歩により、最近は食玩と甘く見られませんね。私のプラモ経験は三共のピーナッツシリーズ(知る人は知る)からだけど、その時代のプラモと比較したら次元が違います。1/72以下の豆サイズが見直されて来たのも、品質の向上でしょうね。しかも、塗装済みで、自家塗装よりもきれいに仕上がっているしね。メーカーのエフトイズも出来の良くない金型もあるけど、この2点は合格点じゃないでしょうかね。しかし、私の零戦の明灰色イメージは映画「トラトラトラ」時代のそれなので、ちょっとは違和感があるのも事実です。

零観など水上機はモデル化をされることが少ない機種でしたので良い時代です。零観は戦艦大和などの後部飛行甲板に無くてはならないアイテムで、本来の弾着観測の機会は得られなかったが、複葉機の滞空特性を利して長時間の索敵や爆撃なども敢行し、敵戦闘機とも交戦して撃退することもあったようです。

 

プラモデル時代に沢山製作した機体は殆ど破損してしまいましたが、これは30年ぐらい前に作った連合軍側から「写真屋のジョー」と称された百式司令部偵察機です。(我レヲ追尾スル敵機(グラマン)無シ)機体上面に貼ったデガールの日の丸は完全に色素が抜けてしまっています。でも、大きなスケールと同様に、組立・塗装をして仕上げたモデルは愛着があって捨てられないのですよね。押入れの天袋には、製作待ちのプラモ箱がごっちゃり溜まっています。暇を見て製作をしたいですけど、時間が足りませんね。視力もきびしくなっていますから。とにかく、男の趣味は楽しい。出来るだけ楽しんでやろうと思います。

それでは、みなさん。一年間のお付き合いを頂きましてありがとうございました。来年もよろしくお願い致します。みなさんにとりまして良い年でありますように。

 

 


ほぅ、これは良いねPEN-Wの巻

2015年12月25日 16時27分35秒 | ブログ

ご常連さんから「PEN-Wを入手した」とのご連絡がありましたよ。早速拝見してみると・・お~、これは良いね。昔はこのぐらいの個体はあったのですけど、最近はトンと見ませんね。まず、塗装の劣化が非常に少ない。これは、あまり使用されずに保管していた個体です。それを裏付けるようにレンズのバルサム黄変も少ない。作動もしっかりしているので、メンテナンスは受けているのでしょう。

問題は、ファインダーブロックの向かって左肩に大きな剥離があって、マジックでごまかしてある。「塗装をして」とのことですので、丁度、私物のスピードタイマーの針を塗装する予定でしたので一緒に塗装をしました。しかし、一見程度が良さそうに見えるファインダーですが、細かなピンホール状の腐食が進行しているようで、焼き付けると、閉じ込められた空気が膨張してポツポツ破裂してしまうのです。これは1つずつモグラ叩きのように潰して修正吹きをしていくしか方法がありません。で、1日掛かってこの画像。スピードタイマーの針はこの後、先端部の塗装(白)と蓄光塗料を入れて完成させます。アメリカへ手配中の部品が届かないので、届き次第UPの予定ですが、来年になりそうですね。

基本的にプロによるO/Hを受けているんだろうなぁ、と思える個体で、これでも支障はないとは思いますが私的には気に入らないというか・・シャッターを分解するとあれれ、リターンスプリングが脱落していますよ。例によって曲げられていますね。

特に問題のない(消耗も少ない)シャッターユニットですが、スローガバナーの汚れがあるので、すべて分解洗浄で組み直しました。

 

カム板のメッキ劣化も殆どなく、実用期間が少なかったものと分かります。

 

 

シューを良く見てください。上面が水平になっていませんね。

 

 

シューの上面が陥没していんですね。それを直したようですが、角にクラックが入ってしまっています。この部品は曲げ加工ではなく切削物なので、曲げを直すと折れてしまうのです。

 

PEN-Wの絞りのクリックは、PEN-Sとは異なり、板バネによっています。それによって潤滑が切れると接触面が摩耗し、クリック感が無くなってしまうのです。グリスを塗布しています。

 

内部はきれいですね。

 

 

ファインダーの艶も本体と合っていると思いますね。巻上げも軽くシャッターも快調で外観も素晴らしい。(レンズも) 最近珍しいコンディションの個体でした。

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/


ピントが変だねPEN-Fの巻

2015年12月23日 19時55分22秒 | ブログ

PEN-F #1687XXですけどね。ご自身で剥がれたリターンミラーを再接着されたとのことで、確認のために来ましたよ。懸念していた通り、この位置で無限遠となりますね。かなり大きなズレで、調整範囲を超えているのは間違いありません。

本格的な修理の手は入っていない個体ですが、リターンミラーのフリーズによりテンションの調整をされた形跡があります。また、バネを紛失してリン青銅線で自作してあります。

 

PEN-Fは古いですから、リターンミラーの貼り替えを行うのであれば、全体のオーバーホールをお勧め致しましたが、今回はリターンミラーの貼り替えのみということになりました。全反射ミラーは見にくい腐食はありませんね。

光学系はプリズムなど、かなり汚れている状態。モルトもダメですね。交換しなくてよろしいのかなぁ。

 

リターンミラーを観察すると、古い接着剤を取り除いていないため、ミラーとホルダーの間に隙間があります。

 

リターンミラーを剥離しました。接着剤の層が2層になっていますね。

 

 

古い接着剤をすべて除去しました。剥離した黒艶消し部分をタッチアップしてから新しいミラーを接着してあります。

 

リターンミラーの交換のみのお約束でお受けしたのですけどね。見て見ぬふりが出来ない性格なのでいつも貧乏です。光学系の清掃、モルト交換、各部の清掃注油。本当は全部分解したいところだけどね。ごめんね。

 

で、形だけはいつもの姿。

 

 

リターンミラーはこのようにきれいでしょ。ピント調整をしておきます。

 

 

本来はO/Hをすべき個体ですが、オーナーさんのご都合お考えもありますから部分修理もお受けしますけどね。O/Hはまた次回の機会ということにしましょう。

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/


レンズは続くよZuiko 38mm f1.8の巻

2015年12月21日 14時48分58秒 | ブログ

最近レンズのお問い合わせが多いです。この個体はPEN-F用38mm標準レンズですが、お知り合いから譲られたものだそうです。絞り羽根が激しく錆びており、羽根が固着して正常に作動しないというもの。取りあえずすべて分解してみましょうかね。

う~ん、あきまへんなぁ。羽根の表面が錆で荒れると作動抵抗が増えて、シャッタースピードにも影響を与えます。錆を落として組んでみて、不良なら羽根の交換です。

 

部品の構成はこのようになっています。PEN-F用は古いので、手垢やホコリが混入して、かなりばっちいのです。

 

作動が重かったのですべて超音波洗浄をしたところ。軽くスムーズに動きます。

 

余計な傷をつけないように注意をして錆を落としていきます。

 

 

組立は飛ばしました。各部の洗浄とレンズ清掃をして組んであります。作動不良は羽根だけの問題ではありません。徹底した洗浄と適切な部分に適切な潤滑が必要です。その他、ヘリコイドグリスの補充と鏡胴のローレットに詰まった手垢を取り除きます。

スムーズに作動をしますので羽根の交換はしないことにします。PEN-F用レンズは状態のよろしくない個体が多いですが、PEN-FにはPEN-F用のレンズを装着したいのが人情でしょう。個体数が減っていますので大切にお使いください。

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/

 

 


持病の曇りZuiko 20mmの巻

2015年12月20日 11時44分11秒 | インポート

北海道のご常連さんからZuiko 20mm f3.5のレンズが曇ったとのことで来ています。このレンズは新種ガラスなどの影響なのか中玉が曇る持病がありますね。これはガラス自体が曇ってしまうものでクリーニングではきれいになりません。ははぁ、曇ってはいますが、ひどいものは真っ白になりますよ。しかし、過去に分解を受けていまして、化粧リングのスリットが傷だらけです。

レンズの構成は多段ロケットのようになっています。曇っているのは右端のカシメられたレンズ。他のレンズも拭き傷がありますね。分解用の穴が荒れているのが分かりますね。複数回分解をされているようです。彫刻された数字が違うなぁ??

 

分かりずらい画像ですみません。幸い曇りはクリーニングで落ちましたが、一度曇りが出たレンズはミクロ的には表面が荒れて、再び曇りやすくなる傾向がありますので注意が必要です。このまま放置をするとクリーニングでは曇りは取れなくなります。

マウント部の絞りが重い傾向です。観察すると、過去に鉛筆を擦りつけてありますね(綿棒)こんなことしてもダメなのね。ここも分解をされてナットが傷だらけ。ここは分解してはいけません。

 

鏡胴を分離して見ると・・ヘリコイドグリスが流れていますね。後玉を分離して、すべてクリーニングをします。

 

鏡胴の清掃、化粧プレートのスリット部を艶消し黒でタッチアップして完成。曇りは取れていますね。北海道で気温が下がって来たことも影響しているのかなぁ? しかし、防湿庫保管と聞いていましたね。どちらにしても早めのメンテナンスが必要なレンズです。

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/