今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

SEARS AUTO 35の巻(その2)

2020年09月24日 21時30分00秒 | ブログ

大阪のご常連さんからまたシアーズのAUTO 35が来ました。正直なところ、このカメラは分解修理をあまり考慮していないような作りですし、ニコイチ(今回はサンコイチ)になると工数ばかり掛かってとても合わないので、ご常連さんだからお受けする作業です。しかも、食玩の零式水偵察を頂いてしまったのでやらない訳には行きません。

 

この水上偵察機は潜水艦搭載用で小型で組立式の機体です。アメリカ本土の偵察に向かったイ25潜から夜陰にまみれて発艦した本機はオレゴン州の山林に焼夷弾を投下して史上初めてアメリカ本土を爆撃した飛行機となりました。意図した山火事は発生しませんでしたが、アメリカの後方かく乱効果は大なりの戦果を上げています。

では本題です。AUTO 35は2台ありますが、1台は分解機ですので外観の比較的きれいなもう1台の方を活かします。まずレンズのヘリコイドが固着して動きません。先が思いやられます。リコーの二眼レフなどにはヘリコイド固着が多く、グリスが悪かったのかなぁとか思います。

ストラップを付けていると塗装が剥げますよね。塗るかなぁ・・

 

 

メーターの交換などでは、まずASAダイヤルを分離する必要がありますがダイヤル内径に対してブレードがぴったりで隙間が無いため、プレートを無傷で取り除くことは至難です。もう少し後の年代では両面テープ接着が主流ですので溶剤で剥離することは容易ですが、この頃はゴム系接着剤ですので簡単には行きません。まぁ、しっかりと製造されていると言うことですが、後々の分解修理の効率はあまり考慮されていないですね。

露出メーターは2台共動きませが、原因は2台共コイルのピボット部の腐食による抵抗増大で1.5Vを掛ければ針は動きます。但し、戻って来ませんが・・そこで、兄弟機種のリコー・ハイカラー35からメーターユニットを調達しました。基本的に同じものですが、シューの配線違いによるアース取りが追加されています。

このカメラで厄介なのはファインダーが曇ってしまうこと。

 

 

直径7mmの豆レンズ2枚の内側が曇るのです。Cリングは接着されてありますから分解が非常に面倒です。尚、ファインダーレンズの後ろにあるレンズは樹脂製のため拭き上げは厳禁です。(曇ります)

 

シューは部品取り機の方が程度が良いので交換します。

 

 

露出メーターの復活とファインダーの清掃が終わりました。ここまでで1日です。後はシャッターとレンズの清掃とフィルム室、ゼンマイを整備します。

 

レンズはカビがありますが清掃可能なカビです。

 

 

オートハーフ系で一番憂鬱な作業が裏蓋のモルト清掃と交換。

 

 

やっと終わったぁ~。

 

 

裏蓋ロック座は塗っておきました。

 

 

組み立てるとこういう感じ。スッキリきれいです。

 

 

ASA表示プレートを貼りますが、ダイヤルの内径に軽圧入で嵌め合う律儀な設計のため、溶剤の浸透する隙間が無く剥離が非常に困難となるのです。

 

 

部品取り機に貴重なオリジナルのフィルターが付いていましたので移植しておきます。

 

 

ゼンマイ巻上げのオートハーフ特有の構造はありますが、独特なデザインセンスではありますね(-_-;) SEARSブランドの白/黒セットの完成です。

 

 

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ローライコードⅤbのメンテナンスの巻

2020年09月21日 01時00分00秒 | ブログ

二眼レフを少し続けます。ローライフレックスⅤbはローライコードの最終型ですね。それだけに、そんなに古くはないカメラなので状態は悪くはないです。まず多い不具合は、巻上げが重いというもの。シャッターユニットの取付けネジ部にチャージレバーが嵌っているわけですが、潤滑が無いので噛み込み気味となって重いわけです。

ユニットを点検すると、絞りレバーが曲がっています。このモデルはLV仕様ですが、レバーを無理に動かそうと力を掛けたものかも知れません。

 

絞りレバーを分離して曲がりを修正しておきました。

 

 

コンパーシャッターは低速不調になっている個体が多いです。シャッター羽根と絞り羽根が近いため油が廻っていますので全体の洗浄をして組みます。

 

後玉の清掃をしてシャッターユニットに取り付けます。

 

 

前玉もレンズを分離して清掃します。

 

 

ミラーを清掃して取り付けます。

 

 

フィルムカウンター12はユニットで取り外せるようになっていますね。24枚用のユニットもあったようです。現在は使えませんが・・

 

裏蓋のガタツキはストラップホルダーの留めネジが緩んでいるものが多いです。ここはネジロックを塗布しておきます。

 

 

本来、チャージレバーを右に倒すとシャッターが切れますが、このボディーレリーズを取付けた方がシャッターを切り易いですね。

 

1台目は終了。

 

 

次のⅤbはM接点がありますのでタイプ1ですね。シボ革接着の糊がはみ出しているので過去に分解を受けています。

 

周り止めのネジが無くなっているので分解されています。

 

 

このシャッターは低速不調だけではなく、高速側のスピードも上がりません。

 

 

ミラーなどを清掃します。古いモデルのようにミラーはネジ留めではないので分解が簡単です。フードも簡単に分離が出来て改良されて使いやすくなっていますね。

 

ミラースプリングの板厚はなんと0.1mmとペラペラです。

 

 

フォーカシングスクリーンは樹脂製のスプリット付きです。二眼レフはピント合わせに苦労しますから、これは有りがたい改良です。洗浄をして取り付けます。

 

この個体は上部左右に調整ワッシャーが入っていましたので忘れずに取付けておきます。ビューレンズの固定はネジ式となっています。この方がやり易いです。

 

シボ革の接着剤は非常に強固な接着剤で、古い接着剤を残してその上に貼ってしまうときれいに仕上がらないですから完全に清掃をしてから接着をします。

 

はい、これで終了です。次はローライコードⅣ型です。シャッターは完全に動きません。

 

 

修理項目で多いのが平らなところに置いてもギッタンバッコンになってしまう個体の修正。

 

 

定盤の上に置いてみると・・あっ、ここだ。の足部が強い力を受けて陥没しています。これを修正して行きます。

 

Ⅳ型までは見慣れたシャッターユニットです。さて、なんで動かないのか・・

 

 

前群2枚の中間が曇りがあるので分解清掃をします。

 

 

フォーカシングダイヤルのフタの塗装剥離が目立ちますね。塗っておきましょうかね。

 

 

このモデルはシボ革が本革ですが、ポツポツと盛り上がっている部分がありますね。これは真鍮ネジの頭が本革の湿気から腐食をして緑青が吹いているものです。

 

シボ革をめくってみると・・

 

 

緑青を取り除くと真鍮ネジが現れます。

 

 

画像を撮ってみて左下角が残っているのに気が付きましたが、このようにきれいに戻りました。本革のホールディングの良さや高級感は分かりますが、湿気による劣化や修理のために分離する場合を考えると合皮の方が始末が良いと思ったりします。

 

フォーカシングダイヤルのフタを焼付塗装で塗っておきました。

 

 

シボ革が本革の場合、剥離時のアルコールなどによって寸法が伸び気味になったり、素材の柔軟性が落ちたりするので貼り込みには注意が必要です。合皮よりも厚い革ですね。

 

Ⅳ型とⅤb型ではずいぶんと設計が違いますね。それまでの改良型がⅣ型でⅤb型は異なった設計でより使いやすくなっているように感じます。但し、フォーカスダイヤルが右側でライトバリュー組み込みが好きではない方はⅣ型を選ぶのでしょうね。

 

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掘り出し物のPEN-Sブラックの巻

2020年09月16日 21時25分00秒 | ブログ

実は過去にも数度同じような事例がありましたが、このPEN-Sブラック#1020XXはリサイクルショップから救出されたものですが、専門店であればブラックモデルの希少性は承知しているので、ジャンク価格などと言うことにはならない訳ですが、専門知識のないリサイクルショップでは安価に売られていることが多いのだなぁと改めて感じます。現状は不動でかなりばっちいです。

シリアル№からPEN-Sの極初期型ですから1960年製と言うことになりますかね。発売は6月となっていますがシャッター捺印が「9」なので、発売3ヶ月後の生産ということになりそうです。ブラックは非売品で、報道各社に配られたと聞きますが、果たして何台ぐらい供給されたのでしょうね。今となってはメーカーにも資料はないと思いますが・・初期型のコパルシャッターはかなり厳しいと思いますが、現状はシャッター羽根が開いて停止しています。

ブラックモデルは過去にも扱って来ましたが、スプール軸が三光PENなどと同じ古い形式の部品が使われていたという記憶がありません。極初期のブラックだけの特徴かも知れません。

 

2か所のへこみがあります。駒数窓角の部分は駒数ガラスにも影響があります。荒だし程度に板金をしておきます。あぁ、間違いなくオリジナルのブラック塗装です。

 

まずはすべて分解洗浄をしましたが、塗膜が弱っているようで脱脂をすると白っぽくなりました。シュー下は艶がありますね。しばらく手で触っているうちに艶は戻ります。

 

これも過去の個体には無かったような?・・巻き戻しボタンの頭の部分まで塗装を施されています。

 

 

シャツターですが、シンクロ接点が半田付けは初期の個体では当然です。問題はシャッター羽根の外周の黒い部分。ここは、以後の個体と設計が異なります。以後はプレートになります。

 

では、洗浄後に組み立てていきます。洗浄をしてみると内部はきれいで、あまり撮影はされていないのでは?と思われます。

 

シャッター内部にも設計が異なる部分がありましたが撮影を忘れました。残念。また分解するのも・・

 

 

初期の個体はシャッターユニットを留める4本のネジの頭が小さいです。これによってシャッターの固定が緩んでいる個体が多いです。

 

巻上げダイヤルカバーは破損していましたので接着の上、再使用します。

 

 

巻上げダイヤル(スプロケット軸)を留めるネジが正ネジです。以後は左ネジです。

 

 

本体側はレンズを除いて完成。

 

 

これも特徴です。ファインダーのダストカバーが2ピースに分かれています。以後は1ピースになります。

 

ファインダーはひどく汚れていました。すべて分解清掃をしてあります。特徴はダイカストの接眼レンズ接着部分の形状の違いとハーフミラーの違いかファインダー像が青みがかって見えることです。

 

レリーズボタンのバネは初期型なのでバネの弱いタイプが使われています。

 

 

トップカバー横のネジは普通ですと塗装ネジですが、通常のメッキネジが使われています。この個体は過去に分解歴がありますので途中で紛失追加されたものかも知れませんが、オリンパスの流儀では、黒塗装でメッキネジを使う場合もありますので何とも言えません。吊環は材質が真鍮の頃ですから、かなり摩耗をしています。尚、巻き戻し側は黒メッキネジが使われています。外観からは見えませんが・・

レンズは前玉に傷がありますが、後玉はカビが多くダメかと思いましたが清掃できれいに取れてコーティングも無傷でした。初期のレンズの方が曇りやコーティングの劣化に強いのか? もちろんオリジナルではない可能性もありますけど、私の印象ではオリジナルのレンズだと思います。

裏蓋に遮光用のフェルトを貼って圧板を取り付けますが、かなり腐食気味ですので磨きます。

 

 

きれいになっています。底部のリベットには化粧塗装は施されていませんが、初期は艶消し黒塗料を筆で塗布されているので、途中で清掃されて剥離したものかも知れません。

 

と言うことで、この個体はブラックモデルの中でも初期の特徴を持った資料的にも貴重な個体と思います。良く見つけてこられましたね。初期型のシャッターも快調ですので実用も問題ありません。大切にされてください。

 

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ローライフレックスなどの巻

2020年09月15日 20時14分16秒 | ブログ

途中からです。ローライフレックス数台をメンテナンスしています。これはローライフレックスⅤですが、シボ革が本革なのでかなり古いモデルですかね。ミラーも曇っていますが国産と違って清掃できれいになりました。反射率は落ちているはずですから交換をした方が良いかと思いますが、今回は再使用。

こちらはローライフレックスTというローライコードとの中間レベルのモデル。レリーズボタンとシンクロ接点が横向きになっていて、特にシンクロ接点のロックリングを取らないと前面カバーが外せないというもので、組立のリングナットを外す工具を作らないと汎用では外せませんね。

レンズを分離して清掃します。

 

 

コンパーシャッターは作動はしていますがシャッタースピードの正確性に問題があります。スローガバナーなども劣化しているようです。洗浄、注油をします。

 

こちらのミラーは外周が腐食気味ですが、先ほどの個体よりは全然きれいです。清掃をします。

 

 

ビューレンズの曇りが目立ちますので分解清掃をします。

 

 

清掃をしたレンズを取付けてピント調整をします。レンズの固定はリングロックナットで締め込みますが専用のレンチを作らないと確実に締められません。

 

取りあえず真鍮材でシンクロ接点の取付ナット外し工具を製作しました。これで寸法的にはぴったりでしたので、強度のある材料で作り直した方が良いです。

 

しかし、ロックリングの分解組立は知恵の輪です。何とか手順を編み出しました。奥に見えるナットに注意。

 

このモデルになるとフードはワンタッチで取り外すことが出来て、スクリーンも開くことが出来ます。清掃が楽ですね。

 

時代を考慮すると非常に良いコンディションとなりました。

 

 

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お父様のカメラ ミノルタ・XG-Eのメンテナンスの巻

2020年09月11日 16時00分00秒 | ブログ

ご常連さんのご紹介で来ています。ミノルタ・XG-E ですが、お父様の実家に何十年も放置されていたカメラだそうです。ご依頼は女性の方ですが、使い始めてフィルムに光線引きのような露光が出るとのことです。ネットで見ると、このカメラはモルトの劣化で光線が漏れやすいようですね。しかし、フィルムも同梱されていないので、果たしてどこから漏れているのか? 定番は蝶番部分とスプロケット上あたりらしいですが。試しにライトを当ててみると・・ここかな?

蝶番部分のモルトが劣化をしていて一部が完全に無くなっています。

 

 

ミラー内のホコリやカビが目立ちますね。とりあえず清掃します。

 

 

本当に内部も清掃した方が良いですけど今回はモルトの交換がメインです。リターンミラーは劣化がありますが、スクリーンと一緒に清掃します。モルトを貼っておきます。

 

裏蓋の蝶番部分のモルトを交換しました。

 

 

本体側の古いモルトも清掃して交換しました。

 

 

スイッチのノブ部分はスリットがあるのに色が入っていませんでしたので、白で入れてしまいましたら、本来は色入れ無しが正解のようです。もう入れちゃったし・・

 

操作感やシャッターの感触はOMよりソフトで良い感じですね。XG-EはX-Dの廉価版として1977年に発売とのことです。価格は49,800円。この頃はロードレースをやっている頃ですから新しいカメラ機材は買えない時期でした。有名なコマーシャルの「今の君はピカピカに光って・・」というのは、この後に発売のX-7のコマーシャルでしたか。あの時の宮崎美子さんはタイプでしたが人は変わるものです。

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