今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

ペンスケッチ展で診断したPEN-S3.5の巻

2017年09月28日 21時59分01秒 | ブログ

PEN-S3.5 #1678XXですけど、先日のペンスケッチ展に参加のご常連さんの愛機が来ました。会場でざっと拝見した感じでは、シャッターは、まずまずの作動ですが、巻上げやシャッターダイヤルの感触がゴリゴリしている。ファインダーの曇りなどがあって、メンテナンスご希望とのことでした。

未分解機かと思いましたが、分解をしてみると過去に修理の手が入っていました。モルトは両面テープ付で貼り替えてありましたが、これをするとトップカバーと固着して分離困難となりますので、私はオリジナル通りに接着をします。

 

当初は、スプロケット軸、スプール軸のメンテナンスなど限定修理の予定でしたが、シボ革も剥がれ気味ですね。ということはシャッターもいじられているということですから、いつものように完全にオーバーホールします。内部の汚れもあって、洗浄してから組みたいですからね。

特に壊れている部分は無いのでUPすることも無いのですが、それでは古いモルトを除去してダイカスト本体などを洗浄します。

 

1968-10月製の比較的新しい?製造なので、特に部品の劣化はありません。このカムを作動させるバネ1個で、すべての作動を司っています。

 

何故か駒数ガラスの内側が痛んでいますね。コンパウンドて研磨をしておきます。

 

この頃の後期のシャッターはハウジングが黒アルマイト処理をされています。

 

 

基本的には悪くはないシャッターですが、カムとスローガバナーの連動部分の接触がスムーズでないため、巻上げのフィーリングにも影響があります。使用過程で摩耗をして粗面になっていることが原因ですが、研磨をするとメッキが無くなって摩耗を早めるので、なるべくそのままにしたいのです。今回は当たり面を微調整をして再使用とします。

で、レンズを除いてメカ部分は完成しました。駒数ギヤ下のスプールギヤは黒の樹脂製に変わっています。

 

ファインダーのレンズを分離清掃をして再接着をしました。

 

 

レンズは非常にきれいな状態でした。巻上げも軽くスムーズになっています。コレクション用ではなく、実際に作品を撮影されているカメラです。益々良い作品を生み出してくれるでしょう。

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TORIP 35 をどうするかの巻

2017年09月25日 21時45分21秒 | ブログ

大阪・住吉のご常連さんから、ずっと前に来ていたトリップ35です。ニコイチ用に2台来ていましたが、製造時期によって底部の巻き戻しボタンに設計変更があるため、#54084XXを単独で使います。トリップ35はPEN-EEのお兄さんで、構造は殆ど一緒です。ただし、共通部品はありません。玉数は多いようで、きれいな個体が残っていますね。

でと、今回はO/Hのみではないので完全に分解して行きます。

 

 

元々、再分解を考慮していない組立方法なので、樹脂パーツはゴム系接着(接眼枠は熱カシメ併用)のため、溶剤はパーツを侵してしまうので使用できません。特に駒数ガラスの分離は困難を極めます。シャッターボタン座もカシメ加工をされていて、この辺りがPEN-Sなどより厄介なところです。

塗れって言うんですよね。当初はジャーマングレーが候補でしたが、この色は主にドイツ戦車色ですが、戦時中の塗装ということや兵器としての退色もあって、本当の色が分からない。バルナックのグレー仕様などは黒に近い明度のようですから、小さなこのカメラに似合わない。色々検討して、それなら空軍機の上面迷彩色はどうよ。ということで、ドイツ軍のグレーは青味があるグレーのイメージなので、青味を少しずつ追加して調色をしているところ。機体の迷彩色も、種類があって決定版というものはないですね。あくまでもイメージで、軍用ではないので明るいイメージとしたいのです。

クロームとニッケルを剥離したところ。底部にへこみがあるので、修正をしておきます。PEN-F系と違い本体側にもシボ革上下に塗装部分があります(めんどっちぃ)ので、こちらはマスキングで塗装します。

 

日曜日の午前中までの状態。午後からは都内青山のギャラリーで開催中の「ペンスケッチ展1017」に出向く予定なので、仕上げは後日ということで。

 

一か所塗れないのです。開閉鍵のカバーは樹脂製になっていて、焼付塗装が出来ません。自然乾燥塗料で塗るしかありませんね。

 

 一見、PEN-Sの時代よりもプレスの精度が上がってシャープに見えたのですけど、意外に上下カバーとも平面性が出ていませんね。ヨレヨレです。梨地でごまかされていたという感じ。まぁ、上手く仕上がらない言い訳半分ですが・・シャッターボタン座や接着パーツを仮付けしてみたところ。因みに、巻き戻しダイヤルとシューはメッキのままコントラストとします。

 では、本体を組み立てて行きます。裏蓋の開閉鍵を取り付けて、スプロケット軸、スプール軸、樹脂製のマスクを取り付けます。

 

シャッターユニットはPEN-EEとうり二つ。時計で言うと、セイコーの自動巻き機構「マジックレバー式」と同様に、シンプルな部品構成で完成されたメカニズムです。当初は問題ないと思っていましたが、赤ペロマークの動きに固着があり、改善させる必要が出て来ました。

 

レンズもきれいと思いましたが、光線に透かすと、曇りとカビがありますね。

 

 

レンズの清掃と、絞りユニットの作動が渋いので改善します。

 

 

赤ベロマーク機構。使用過程で歪が起きてスムーズに作動しなくなっていたようです。簡単なメカニズムなので、少しの歪が不具合になります。

 

組立はユニット化により非常に簡単です。工場での組立工数はかなり低いと思います。

 

 

駒数ユニットを取り付けると巻き上げダイヤルが動かない。原因は、ピンセット先の取り付け部分が低いため下の白いギヤと干渉するため。たぶん、調整ワッシャーが入っていたのに気が付かなかったようです。ワッシャを追加して解決しています。

 

裏蓋の蝶番取付とモルト貼り。

 

 

ファインダーの対物と接眼レンズは樹脂製になっています。予備機の31万代はガラス製ですので、どんどんコストダウンを受けているようです。元々、ファインダー前面の保護ガラスも省略されている設計なので、あまりゴシゴシ拭くと傷になります。

 

開閉鍵カバー。微妙に色が違う・・

 

 

シボ革は再使用出来ましたが、オーナーさんのご希望により、バルナック用で貼り替えています。このパターンは似合いますね。なんとか完成しました。先日のペンスケッチ展でも、トリップ35の写りは非常に良いとの評価を聞きました。完成された定番メカで安価に高性能を市場に投入するというようなコンセプトのカメラなのでしょうね。

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ペンスケッチ展2017に行って来ましたの巻

2017年09月24日 21時05分32秒 | ブログ

日曜日は午後から都内青山で開催されている「ペンスケッチ展2017」に出掛けました。ギャラリーはホンダの本社ビル近くなので、ちょっと覗いて行きます。車は発売されたシビック・タイプRがメインで置かれています。今日はSUGOで開催されているレースの中継もされていました。私はバイクが気になりますが、最近は250ccでもすごく車体が大きくて大型車も見分けがつきませんね。しかし、モンキーが生産中止とは残念ですね。排ガス対策が出来ないのが中止の原因のようです。じゃ、カブはどうなの?

ハンドル周りを見ても大きいですね。2サイクルのレーサーレプリカは無理として、4サイクルのこのバイクなら乗れるかな?

 

CB1100は、初代の方が良かったような気がします。

 

 

本物のロードレーサーも展示されていました。なんと跨っても良いようです。しかし、現代のレーサーは何でカウリングのスクリーンが小さいのでしょう? 私は、ストレートでスクリーンの中に潜り込むと風圧が無くなるので、タンクに目いっぱい伏せていましたが、このスクリーンの大きさではそれは無理そうです。

マクラーレンホンダ。3年で離婚です。ホンダの開発力も大概ですが、サイズゼロなど、無理な設計を強いたのはマクラーレンです。来シーズンはレッドブルのジュニアチーム、トロロッソと組んで戦いますが、レッドブルにもホンダエンジンが搭載されるようなパフォーマンズを示してくれることを期待します。無理かな??

ホンダジェット。さすがにこれは模型展示ですね。エンジンを翼に搭載するというアイディア。本来は乱気流が発生して難しいレイアウトですが、ホンダは見事に解決して、現在、小型機部門で第一位です。ホンダと言ってもアメリカですけどね。ところで三菱のMRJは何やってんでしょう? 航空産業の空白は大きかったようです。

で、シビック・タイプR。速いんでしょうけど、走り屋の車みたいで、私は好きではありません。

 

で、ホンダ本社ビルの横町を左に曲がって行くと、ギャラリーがあります。

 

 

今回は参加人数が少なくて一部屋での開催です。私のところにご依頼を頂くPENの数を見ても、ファンの方は減少傾向のようです。フィルムや現像などのコストも高くなって、もはや高価な趣味になってしまったのでしょうか。あっ、御大MazKenさんがいらっしゃいました。

しかし、作品のレベルは高くなっていると感じました。少数精鋭というところでしょうか。

 

この方は、私がO/HをしたPEN-FTで撮影された作品です。なんか親のような心境で見入ってしまいます。

 

PEN-EEを赤外線専用機として撮影した作品(中央)など、へぇ、これがハーフかと思わされるぐらい現像処理に工夫があるようです。年に一度、自分の直しているカメラの作品を見られるので楽しみにしています。来年も同時期に開催の予定とMazKen からお聞きしていますので、みなさん、来年は是非ご参加してみたらいかがでしょう。最後に全員で記念撮影をして帰宅しました。

 


シチズン・クロックのユニット交換の巻

2017年09月19日 19時29分52秒 | ブログ

相変わらず、日本列島を通過する台風は、なぜか夜半にやって来ますね。やっと台風が通り過ぎたと思ったら、蒸し暑い残暑が続いている関東地方です。久しぶりにS800を見たら、パンパーやサイドマーカーのメッキが錆びていて、グスン😢、週末に見てやろうと思います。で、カメラはあまりご依頼がありません。お取引先の社長さんから置時計を直して欲しいとのご依頼。シチズンのユニットは、傘下のリズム時計製です。市販のセイコー製などとは針を取り付けるホゾ(軸)の規格が異なりますので使えません。よって、純正ユニットを用意しました。

文字盤を外してみると、ケースとの取付けネジが長すぎるようで、盛り上がっていますね。修正をしておきます。

 

裏側のユニットの位置決め用ダボ(2点)が折れています。ユニットを取り外そうと回してしまったようです。瞬間接着剤で固定しておきます。

 

右がオリジナルで日本製。左が交換用でベトナム製。ひと頃は中国製が一般的だったと思いますが、現在はコストや政治的な問題から、ベトナムなどにシフトしているということですかね? 秒針の停止装置は省略されています。

 

では、センターナットによりユニットを固定します。

 

 

純正なので針穴と軸の寸法は合うのですが、秒針はホゾに差し込んで固定するのではなく、外径で固定する方式になっています。秒針が一定スピードで動くスイープ式のためでしょうかね。

 

無事、針が取り付き完成です。

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リターンミラーが割れちゃったPEN-FTの巻

2017年09月13日 21時33分03秒 | ブログ

カメラ店様から修理のご依頼です。PEN-FT #3622XXと後期の個体ですが、やはりリターンミラーは剥離しますね。飛び出した時にミラーは割れたしまったようで添付されませんでしたので新しいミラーを使って修復します。

 

前板を分解をしてミラーホルダーを取り出します。古い接着剤の除去と足付けをします。ホルダーの形状は、時期によって微妙に違いますので、新しいミラーを削りながら合わせます。画像は調整を終えたところ。

 

ミラーの接着が完了しましたので、前板に取付て動きを見ます。

 

 

リターンミラーユニットとプリズムの清掃注油で前板ASSY完成です。

 

 

ご依頼にはないのですが、36万台としては異常にハーフミラーの状態が悪いですね。このままで良いのかなぁ・・

 

電池室のリード線も曲げれば折れる状態です。このままお返しするわけにも行きませんので、すべて分解をします。

 

では、いつもの通り全て分解洗浄のうえ組み立てて行きます。

 

 

シャッターユニットもO/H終了。36万台ですからギヤ軸の摩耗も少なくスローガバナーも良好です。

 

電池室のリード線を新製します。

 

 

シャッターユニットの調子は悪くはありませんが、先に完成させておいた前板関係のリターンミーユニットがあまり良い感触ではありません。かなり慎重に調整をしましたが、巻上げフィーリングに影響をしています。

 

 流石に36万台ですから、接眼プリズムのコーティングが完全に残っています。これは珍しいです。

 

メカの組立完了。ハーフミラーも交換しています。これから露出計調整、ピント調整をして行きます。

 

カメラは完成しています。36万台としては露出計の感度低下が大きく、この辺がハーフミラーの劣化と関連しているのかも知れません。多分、湿気の多い場所で長期放置をされたと思います。その他、セルフタイマーのロック不良がありました。これは改良後のタイマーユニットが付いている個体の持病ですが、逆転防止用のコロの動きがスムーズでないためです。洗浄により改善しています。そもそも、この個体は、付属の40mm狙いで購入されたジャンクであったようで、それで不具合の多さに合点がいきました。しかし、1台救出出来たわけですからうれしいところです。

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