今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

ローライ35系に戻りますの巻

2020年10月31日 21時00分00秒 | ブログ

最近、舶来関係のカメラが多くなった関係かPENのご依頼が減っていますね。素材が無いと私もUPできませんので、PENファンの方々にはお願いいたしますね。そこで、先日取り上げましたエフトイズの一式戦闘機ですけど、垂直尾翼に茶色の塗料(迷彩機の塗料)が付着していましたが、「お客様相談室」に問い合わせをしてみました。状況を話すと不良部品を送る(不良品は返送不要)とのことで、胴体だけですと翼との色が合わない可能性があるのでと言って機体分すべての部品を送ってもらいました。悪意に考えれば商品を購入していなくても電話すれば無料で手に入れられるということ?  新商品のチビスケシリーズはデフォルメされた零戦などがあるので入手してみようかな。http://www.f-toys.net/item-details/item-details-00440.html

ローライ35のジャーマニー製です。ソフトケースとストラップが付属しています。ざっと点検してみると、低速不調、ヘリコイド抜け気味、レバーアテ欠落、フィルムカウンター不良などがあります。

 

レバーアテは多くの個体で失われていますね。部品を作って取り付けます。

 

 

底部角とトップカバー(レリーズボタン右)にへこみがあります。多少修正が出来るか・・

 

 

フィルムカウンターが3枚から先に進みません。カウンター不良の原因はさまざまあるんですが、さて何が原因でしょうね。

 

外観のコンディションはまぁまぁなのですが、ジャーマニー製はやはり製造が古いので色々ありますね。長くなりそうな予感がします。フィルムカウンターの不良は原因が色々ありますが、裏蓋側でしたらカウンター板の送りスリットの摩耗などがありますが、この個体は特に摩耗はしていません。しかし、過去に分解はされていますね。不具合があったということでしょう。

駒数プレートの12時付近に接着剤のカスのようなものが付着しています。これも抵抗になるので清掃します。

 

 

初期生産のジャーマニー製にはカウンター板の逆転を留めるLOCKING SPRINGの下に補強用のLEAF SPRINGが入っていない個体があります。材質が樹脂のため新品時は無くても問題ありませんが、経時的にバネ性が弱くなってカウンター板の逆転を止められず結果的にカウンターが進まない故障となります。今回は追加をしておきます。また、中央のネジも緩んでいる個体が多く、それによって送りのストロークが足りなく送り不良となっている個体もあります。

ピンセット先はLEVERでチャージと左のカムのリフト量を伝える部品ですが、カムとの摺動面が摩耗しています。これもカウンター不良の原因となります。

 

まずレバーアテ(RIVET)を製作して熱カシメをしておきます。この個体のシリアルは#30285XXですが、資料によるとジャーマニー製は1966年から1971年までの(#3000201~#3311000)とのことですから、かなり初期の生産のようですね。

 

トップカバーを開けると巻上げギヤが見えましたが、すべて金属製で樹脂は使われていません。ずっとこの仕様ならギヤ破損の持病は無かったのに・・観察するとギヤの歯数がそれ以後のものより多く細かいですね。数えてみると70枚と40枚の組合せでした。上が以降の歯車。歯数は数えてみて。歯数が多い方が巻上げはスムーズになりますね。

アイドラーギヤは潤滑切れで回転がスムーズではありません。洗浄注油をします。

 

 

三層ともすべて金属製です。

 

 

クラッチ機構は設計は樹脂製とはかなり違います。

 

 

その他、スローガバナーのメンテナンスと露出計の調整をしましたが、Cdsが弱り気味です。年式を考慮すると仕方がないです。見慣れないアルミのLチャンネルがポロッと落ちて来ました。トップカバーのメーター後ろ側が沈むのを補正してあるようです。

 

やれやれ本体側は終了かと思ったら巻き戻しレバーのSHAFTに圧入されているはずのピンがありません。これではスプロケットが空転出来ませんのでフィルムの巻き戻しが出来ません。良品と交換して組みます。

 

レンズも結構汚れていますね。分解清掃をして行きます。

 

 

シャッターもO/Hして行きます。

 

 

レンズのヘリコイドグリスは交換しました。完成したシャッターユニットを本体に組み込みます。完成までもう少しです。色々問題のある個体でしたが時代を考慮すると当然で基本的には悪くはない個体です。私も資料用として欲しいですね。

 

映画007シリーズでジェーズ・ボンド役を演じたショーンコネリーさんが亡くなったと報道されましたね。私の年代では「ロシアより愛をこめて」から「007は二度死ぬ」までで、役者の交代したそれ以後は全く別の映画という印象でした。特に、「ロシアより愛をこめて」が60年代の東西冷戦のシリアスな時代背景もあって荒唐無稽な新兵器が登場する以後作とは一味違った雰囲気が好きです。ジェームズ・ボンドと言ったら彼しか考えられませんね。今でも時々マット・モンローの歌うテーマ曲をYouTubeで聞いたりしています。https://www.youtube.com/watch?v=vYu5DBkjkiE

で、本題です。ピント調整をして化粧リングを接着します。この個体のリングはすり鉢状の癖が付いていて接着が困難でした。

程度の良いソフトケースとストラップ付ですが、これはオリジナルなのでしょうかね ? 良いコンディションの初期型となりました。

 

で、次は厄介そうですよ。ローライ35Sブラックですが、そもそもレリーズボタンが押せずシャッターが切れません。露出メーターも不動。レンズの汚れとヘリコイドが回転しないという完全ジャンク状態です。底部を開けてシャッター単体で作動させてみるとシャッターは切れました。と言うことは・・画像のは沈胴時にロックボタンを押すことで動くレバーが全く動きません。それによってレリーズレバーが下降出来ずシャッターが切れない状態です。

前板の機構部を分離してみると・・ポロッとバネが落ちて来ました。

 

 

良く見ると、このバネはレリーズレバーを押し上げておく役目のバネですが自作されたものですね。純正のバネが折れたので作ったようですが、そもそも線径や形状もいい加減です。それによって外れたのでしょう。純正と交換しておきます。では、ついでに洗浄と注油をしておきます。

 

これで良いかと思ったのですが、さらに点検をして行くと・・あ~こりゃダメだ。鏡胴(TUBE)の部分が欠損しています。ここが無いと沈胴ボタンを押さなくても鏡胴が回ってしまいます。海外仕入れと思いますが、余程の〇〇力で引きちぎったものか、あるいは内部もかなりいじられた形跡がありますので故意に壊されたものかも知れません。

これはローライ35のもので同じ部品ではありませんが、該当部分の形状は一緒です。修理とブログが同時進行なので、こう言うこともあります。他の不具合もありますので直すか中止をするかご依頼元様に確認してからにします。

 

カメラ店様に確認のところ海外からの仕入れだそうですが、この個体は自然故障ではなく、故意に改造のために部品を加工(破壊)されたものを形だけ組んで放出したものと推測します。そこで、作業は中止とのご指示でしたので、急遽、同じローライ35Sのブラックモデルで、一部の細かな部品の不足により仕上げが出来ず保管している個体を、今回の個体から部品調達の上で仕上げることにしました。こちらの個体は素性は良いのです。では、ファインダーの清掃や各部の洗浄注油、スローガバナー、露出計などを修理メンテナンスしていきます。

トップカバー側の樹脂のメーター窓が欠品ですので、今回の個体から調達して接着します。

 

 

メーターも元気に作動しています。シャツターも完調となりましたのでトップカバーを付けます。

 

 

シャッターユニットの清掃、レンズの清掃とヘリコイドグリスを交換して本体に組み込みます。

 

 

シャッター連動のTOGGLE LEVER SET STEPやカバーを取付けてFILM GATEを取り付けます。

 

 

長期に動かしていなかった個体はフィルムカウンターの動きを確認する必要があります。この個体の場合、定位置までカウンター板が戻りませんね。分解して清掃をします。

 

また、フィルムを装填しない時は正常に動いても、実際にフィルムを装填すると不具合になる場合もありますので、フィルムで確認しておきます。

 

最後に無限遠調整をして完成です。

 

 

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コンテッサ35をやるよの巻

2020年10月24日 20時30分00秒 | ブログ

カメラ店様からツアイス・イコンのコンテッサ35が来ています。何やらいろいろと手間のかかる予感がします。私たちの年代ですとコンテッサと言えば「日野コンテッサ」なんですね。「伯爵夫人」という意味だそうですが、子供の頃はそんなことは知らないですが、日野と言えば地元の川向こうの街なので親近感があって1300クーペが大好きで、通り過ぎるコンテッサを見送っていました。特徴は何といってもドレーカイル式距離計ですね。不用意にギアトレインを分解すると正確な位置に合わせるのが大変のようです。

露出メーターは不動のものが多いようですが、私の検証したところ通常セレンからの電流取出しはリード線ですが、コンテッサのセレンは金属接片による接触圧力なので接片が腐食すると導通不良になるもののようです。この個体は珍しく作動しています。

 

では、二重像とファインダーの清掃をして行きます。トップカバーの下にもカバーがあって、それを取り外すと長いプリズムが姿を現します。

 

 

巻いてあるテープが本体に固着していますので、無理な力を掛けると破損する可能性があります。慎重に取り出して清掃をします。

 

ファインダーユニットを分離するためには前面ガラスを取り除いた方が良いです。ガラスの清掃もしておきます。

 

ファインダーの先端は別パーツのナットかと思いきや、一体物でした。すると接眼部の四角マスクを倒れないように組み立てるのが困難です。ナット式にすれば良いのに何でこんな難しい設計になっているんだろう・・

 

ファインダーを分解するとこうなっています。結構部品点数が多いです。右端の四角マスクの位置決めが・・

 

 

巻上げダイヤルの中心に巻き戻しボタンがありますが、これを取り除かないとアンダーカバーが取れません。しかし、ボタンが奥にあるのでメガネレンチなどの工具が使えません。ゴムによる接触圧力ではビクともしません。ネットではカニ目を開けて取り除く方法も紹介されていますが、私は別の裏技で緩めます。

スプロケットが回転しないとシャッターが切れない設計のため複雑ですね。

 

 

シャッターは低速不動のため分解が必要ですが、ドレーカイルユニットがあるため本体から分離する必要があります。裏の締め付けナットは非常に固く締まっていてノーズプライヤーなどでは歯が立ちません。急がば回れ、2mm厚の真鍮板から切り出して工具を自作しました。蛇腹があるため寸法は非常にシビアに作らないといけません。

シャッターは普通のコンパーですので省略します。

 

 

回転プリズムの内側がカビていますので分解清掃をします。

 

 

きれいになりました。

 

 

このネジはスリ割りを回すことによってメーター本体を回転させて針の零点調整をするもの。

 

 

こんなSSTを作りました。組立状態では距離リングを留めるイモネジが普通の精密ドライバーではビットが短く届かないため、長いピアノ線の先端を研いでピンバスに銜えてドライバーの代わりとします。

 

コンテッサ35は1950年~1955年までの生産とのことですが、この時代のカメラは革ケースの入ると良い雰囲気ですよね。子供の頃、近所のカメラ好きのお兄ちゃんがおもむろに構えていたような記憶がありまして、大人はいいなぁと思いましたね。その時、撮ってもらったセピア色の写真は今でもあります。

こちらは次の個体。レリーズとシャッターの接続形状の違いで、こちらの個体の方が古いようです。露出計は基本的に不動ですが、受光部を押さえると瞬間的にメーターの針が振れます。

 

先にも書きましたが、セレンからの電流の取出しはリード線ではなく、ピンセット部分の接片の接触圧力によります。接片に振れると全くバネ性がありません。メーター窓の透明樹脂板も見えにくくなっていますので研磨をします。

 

無事作動し始めましたね。しかし、針が最大に振れてダイカストに接触をすると張り付いてしまう現象があります。

 

針の先端がΠ形状でダイカスト側面に引っかかることも考えられますが、静電気が原因の場合も多いのです。私が当時カメラを製造していた時は、このような場合厚紙を接触面に貼って張り付きを防止していました。

 

このように針の張り付きは無くなりました。また、透明樹脂窓を磨いているため、静電気が発生していますので帯電防止液を筆で塗布して静電気を除去しておきます。これも当時の組立現場での対処方法です。

 

シャッターユニットですが、ドレーカイルユニットのカバーを開けようとして4つのネジのうち3つが無くなっています。代用ネジで対応します。

 

シャッターの清掃とドレーカイルのプリズムの清掃を終えて後玉を取付けて本体にセットします。後玉は曇っているものがありますが、この個体はきれいです。

 

最後にフィルムカウンターの送りを確認すると「5」枚以上が送られません。分解をしてみると・・のネジが緩んでいました。また、は駒数ギヤの送り爪(固定用)ですが、錆びついています。中央軸に駒数板が付きます。

 

革ケースの底部には、巻上げダイヤルと連結して革ケース取付状態でも巻き上げが出来るようにしています。

 

 

こちらのケースはトップカバー側がハード仕様となっていて金属枠が付いていますね。このカメラは特殊な機構を備えている関係もあり、分解組立には専用工具を作らないと作業がしにくかったりしました。しかし、各部品の材質や表面処理は素晴らしく、国産の製品とは明らかに品質の違いを感じました。さすがGERMANY製です。

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OM用ズイコー50mm 1.2の巻

2020年10月22日 09時35分00秒 | ブログ

すみません。個人的に研究していまして時間を使ってしまいUPが出来ません。レンズだけ先に処置しておきます。OM用のズイコー50mm 1.2ですけど、流石に巨大なレンズで迫力がありますね。過去に分解歴がありますが、そのせいかレンズはきれいですが絞り羽根の復帰が緩慢です。

 

PEN用レンズの場合、絞り羽根の作動不良はヘリコイドグリスが流化して羽根に付着したものが原因ですが、このレンズの場合は羽根ではなくの回転部分のCリングの汚れによる作動不良ですね。これを洗浄しておきます。

 

スムーズに絞り羽根が作動します。

 

 

カメラに装着して作動をチェックして完了です。

 

 

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OM用ズイコー50mm 1.2の巻

2020年10月22日 09時35分00秒 | ブログ

すみません。個人的に研究していまして時間を使ってしまいUPが出来ません。レンズだけ先に処置しておきます。OM用のズイコー50mm 1.2ですけど、流石に巨大なレンズで迫力がありますね。過去に分解歴がありますが、そのせいかレンズはきれいですが絞り羽根の復帰が緩慢です。

 

PEN用レンズの場合、絞り羽根の作動不良はヘリコイドグリスが流化して羽根に付着したものが原因ですが、このレンズの場合は羽根ではなくの回転部分のCリングの汚れによる作動不良ですね。これを洗浄しておきます。

 

スムーズに絞り羽根が作動します。

 

 

カメラに装着して作動をチェックして完了です。

 

 

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ローライフコード ⅣとⅤの巻

2020年10月15日 14時00分00秒 | ブログ


ローライコードⅣ型は古い分、程度が良くない個体が目立ちます。シャッター不調、レンズ曇り、外観の劣化などがあります。

 

ローライ35だとシューの曲がりがありますが、二眼レフの場合は底部のギッタンバッコンです。まず、どこが変形しているのかを探していきますが、この個体の場合はの角が打撃を受けています。脚部がへこむケースが殆どですが、この個体は裏蓋自体が変形しているのです。これの修正は意外に厄介。

 

クセナー75mmの前群のカビ、曇りが進んでいます。これについては後で苦労することになります。

 

 

シャッターユニットを分離しました。チャージレバーはシャッターユニットネジ部に嵌っていますがレバーの作動が重い個体が多く、どの個体もグリスのような潤滑が見当たりません。硬いグリスを使うとレバーの復帰が緩慢になるし、新品時の潤滑はどうなっていたのか・・

 

MX切換が固着していました。独特な機構です。

 

 

ビューレンズは殆どの個体で曇っています。すべて分解をして清掃します。

 

 

この個体もシボ革は本革ですので真鍮ネジの腐食による盛り上がりが顕著です。一度剥離をして清掃と貼り直しをします。

 

あら~、内部もホコリまみれですね。これ、洗うわけにも行かず、意外に清掃が大変なんです。

 

 

やっと、こうなりました。

 

 

問題のクセナーレンズです。清掃のために分解する必要がありますが、前面のリングナットが外れない。ユニバーサルとは言っても自作工具なのでかなりトルクを掛けられるのですが、それでも緩まない。よって、このレンズ専用φ26.5mmの固定工具を製作してやっと緩めることに成功しました。前玉の裏側コーティングが劣化気味です。

ナットのネジ部の腐食もあるにはありますが、緩まない原因は部分のナットと本体との腐食が一体となったものでした。これは意外に強大な摩擦を生みだして、へらへら工具では絶対に緩められないです。

 

120フィルムをセットして巻上げとカウンター作動に問題がないか確認します。

 

 

最後に前面のシボ革を接着します。

 

 

これは純正の金属キャップなのかな? これで完成。

 

 

次はローライコードⅤです。「シャッターチャージ不良」とのことですが、シャッター羽根が完全に閉じていませんね。

 

後ろから見るとこうなります。

 

 

原因はシャッター羽根に油が回っているもので、シャッター自体は摩耗はしていませんので分解洗浄と注油をしておきます。

 

チャージレバーとシャッター側のクリアランスは約0.1mm程度で摩耗は少ないと思います。摩耗防止の潤滑をして組み立てます。

 

定番のビューレンズの分解清掃。

 

 

ミラー内も清掃をして・・

 

 

Ⅴ型も本革のシボ革のため真鍮ネジ部が腐食してシボ革が盛り上がっていますから緑青を取り除いて再接着をしておきます。

 

作動を確認して最後にシボ革を貼ります。

 

 

やはりⅤ型の方が新しいので状態が良いです。フィルムを通して作動を確認して完成。

 

 

 

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