今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

通常作業の巻

2022年03月29日 13時45分00秒 | ブログ

ここ数日外出はしていなかったのですが、昨日近くの公園横を通りましたら桜が満開になっていてびっくり。今年はいつまでも寒さが続いて部屋に籠っていると季節の移り変わりが分からないですね。作業は通常作業が続ていてますが、特に書くことも無いんですね。まず、ローライフレックスⅣですが、ローライキンと同じフィルムカウンターが付いていますがオリジナルなのかな? しかし、ボタンを押してもカウンターが進みません。分解洗浄をしてから点検しています。どうも各部に摩耗があってギヤを押し切らないようです。

注油をしながら組み立てて正常に作動するようになりました。塗料が抜けていたの色入れを入れ直し、欠落していたボタン部のシボ革を作って貼ってあります。Ⅳ型のシボ革は本革ですけど、適当な革が無いのでビニール製でシボが似ている素材にしました。

シャッターは低速不調ですが、徳の問題はないのでメンテナンスをして終了。

 

 

レンズはビュー、テイク共曇りが激しいです。長い時間が経過していますので仕方ありません。前玉も分解清掃をして行きます。

 

問題はやはりシボ革。Ⅴ型の個体に貼られている本革はしっかりとしているものが多いのですが、このⅣ型のシボ革は油分が無くなってカラカラの状態で、剥離をしようとすると「パリッ」と割れてしまうのです。

 

私の場合はすぐに剥離をせず、栄養クリームで潤いを与えてから剥離するようにします。何とか再接着が出来ました。作り直すのは面倒ですからね。また、使われている接着剤がニカワのような材質で、溶けにくいため清掃に時間がかかりますね。

これで良いでしょう。

 

 

ドイツ製のローライ35ブラックで付属品が揃っています。消耗も少ないのですが、過去の修理が気になります。

 

溶剤でメーターの樹脂ガラスを拭いた? 塗装面にも影響が及んでいます。また、塗装面を拭きすぎて艶消しが光っています。

 

本来は有るべき樹脂ガラス下の本ガラスが欠落していました。製造後期には本ガラスではなく樹脂ガラスになります。部品取り機から持って来ます。また、メーター感度をいじられているようで針の動きに問題がありますので調整をしておきます。

沈胴のフェルトも緩いので調整をしておきます。

 

 

シャッターとレンズをメンテナンスしました。調整用のシムが入っていますが、個体によって枚数(厚み)は異なります。

 

前玉を付けて無限調整をしました。距離リングをセットしますが、この材質は溶剤に非常に弱いですから注意をします。(溶けてしまうので)

 

このドイツ製は非常に良いコンディションですが、受光窓横がへこんでいます。惜しいですね。

 

出来るだけ修復をしますが、当たったものが硬い材質だったようで、真鍮が陥没している部分は戻せません。

 

このドイツ製はファインダーのL型アイビースが破損しています。これはドイツ製のウィークポイントで落下の履歴がある個体は割れているものが多いです。接着で修復して使うしかありません。このような作業が続きます・・

 

この個体はメーターガラスが曇って針が見えなくなっています。この樹脂は硬質でポリカーボネートなどかも知れませんが、キスが付きにくく溶剤にも簡単には侵されません。それがここまで曇るのは何で拭かれたのでしょうね。

表層を削った後、コンパウンドの番手を変えながら磨いていきます。しかし、成形当初のクリアー感を得るのは非常に難しいです。この程度で良しとします。

 

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久々のPEN-Dの巻

2022年03月24日 18時20分00秒 | ブログ

私がメンテナンスをして販売されたローライ35が戻って来ました。最近多いのですが、フィルムカウンターのリターンスプリングのフックが折れてテンションが掛からずカウンター板が復帰しないというトラブル。これはフックの突起部分の成形が折れるというよりは剥がれるように脱落してしまうのです。古い成形品ですので、長い時間を経過して材質が劣化しているんですね。困ったことに接着では強度が確保できません。このカメラは樹脂部品で泣かされますね。

で、本題をやります。久しぶりにPEN-D #6237XXが来ています。巻き上げが止まらない症状がありますが、全体的に汚れていますが、悪くはない個体と見ました。

 

しかし、過去に分解歴はあり、トップカバー横のネジがダイカスト側のネジ〇カで留まっていませんでした。M1.7じゃヘリサートも出来ないしね。

 

裏蓋の内側の汚れはどうしたことでしょう? 

 

 

PEN-Sと違って絞り羽根はシャッター後面にあるよ。D系の持病の後玉曇りが殆んどないのはラッキーです。

 

シャッターは基本的にはPEN-S(W)と同じですけどD系搭載用として変更されているところもありますね。シャッタースピードは1/500が追加になりました。

 

地板にクラックが無いか点検の上、すべて洗浄して組み立てます。

 

 

超音波洗浄と注油をしたスローガバナーを取り付けます。後期ですのでシャッター羽根は6枚タイプです。

 

 

では、洗浄をした本体側も組みています。スプール軸を取り付けます。

 

 

完成したシャッターに清掃をした後玉を取り付けました。ヘリコイドグリスが劣化して抜け気味ですので交換してシャッターと組み合わせます。

 

シンクロ接点は殆ど半田が外れます。再半田をしておきます。

 

 

前玉はフィルターを装着していなかったと見えて傷が多いのは残念なところ。化粧プレートを取付けてシャッター関係の完成。

 

#6237XXなので後期なので 露出メーターの基板は新しいタイプです。しかし、セレンの劣化で感度が上がりません。

 

ファインダーを清掃して本体にセットしトップカバーを取り付けます。

 

 

裏蓋は洗浄でモルト貼り、圧板の研磨をして完成。

 

 

なんでも大学生のお嬢様が使用されるとのことです。若い方がフィルムカメラを使ってくださるのは嬉しいですね。発売当時、PEN-D系は「男のカメラ」と宣伝されたように女性には少し重いので落とさないようにご注意ください。後玉がきれいですから抜けの良い写真が撮れると思います。

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ローライ35独+新嘉坡の巻

2022年03月19日 11時30分00秒 | ブログ

ジャーマニーってアメリカのドイツ表記なんだね。戦争映画でドイツ兵がドイチェランドって言ってるものね。で、ドイツ製とシンガポール製のブラックモデルが来ています。下がドイツ製ですが、気になるのは巻き上げレバーは梨地クロームの上にブラック塗装がされていますね。オリジナルだとは思いますけど、普通は上のように真鍮地にブラック塗装ですよね。まず、ドイツ製からやって行きますが、途中で修理は受けているのですが、いろいろと不具合のデパートのような個体です。不具合個所を列挙して行くだけで画像が終ってしまいます。

カウンター窓の黄変は数字が判読できる程度であれば「味」だと思うのですが、オーナーさんのご希望により直します。

 

と言っても変色部分を窓から外すだけです。

 

 

使い込まれた個体はダイヤル前面に小キズが多くあります。性能には関係が無いので修理としては手を掛ける必要はないのですが、私は気になるので研磨をしています。

 

ドイツ製の個体はCdsが劣化しているものが多くなっていますね。この個体も変です。受光窓を塞いでも針が中央から左に下がりません。もっと劣化が進むと針は中央に固定されて動かなくなります。

 

過去に修理を受けているようですが、特に回路の交換などはされていません。しかし、室内の明るさでメーター針は右に振り切っています。このままで良いかなぁ・・

 

トップカバーの「レバーアテ」ですが欠損していて、ネジがねじ込まれています。

 

 

オリジナル形状をご希望ですので旋盤で作りました。複製方法としてはシリコン型によるレジン成形や現在では3Dプリンターの活用なども出来ると思いますが、この部分はレバーの戻りで強い衝撃を受けますので耐久性を考慮してPOM材で旋盤加工としています。どなたか量産してくださったら助かるのですが・・

沈胴部ですが、まず沈胴スライドが緩い、先端のリング部にガタ、ヘリコイドグリス抜け、前面化粧リングの白化などがあります。

 

本当に不具合画像で終わってしまいます。圧板がフィルムレールに密着しません。

 

 

先端が曲がっているからです。これは乱暴に圧板を開いたためです。

 

 

曲がりを修正した圧板を取り付けます。フィルムカウンターが2枚以上は進まない不具合がありますので分解再組立をしました。沈胴レールの緩みも増し締めしておきます。その他、巻上げリンケージにグリスを塗布します。

沈胴チューブにはスライドによる傷はありません。珍しいです。しかし、沈胴が緩い症状がありますので調整をします。

 

フィルムカウンターはしっかり36枚まで動きます。ガラスもクリアー。右の巻き戻しレバーの回転が渋いです。

 

分解して清掃と白化した樹脂を磨いておきます。

 

 

シャッターユニットはレンズの汚れ、ヘリコイドグリス抜けなどがありますので分解清掃をします。ここまで幾つ不具合があったかな? 

 

 

画像が何枚あっても足りないので簡単に終わりますね。化粧リングを剥離してみるとネジが錆びていますね。

 

ストッパー含む3本のネジが緩んでいます。これがガタの原因です。

 

 

レンズはチリの混入でカビは無いようです。

 

 

シャッター羽根にも少し錆が発生しています。

 

 

すべて組立完了。外観も汚れていましたので清掃しました。かなり良いコンディションになりましたね。シンガポールの方は何かあればUPすることにします。

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O/H歴有りPEN-Wの巻

2022年03月17日 20時50分00秒 | ブログ

月曜日に3回目のワクチン接種を受けまして、発熱は収まりましたが体のだるさが残っています。しかし、作業はしなくてはなりませんね。このPEN-W #10673Xは昭和39年10月の製造で、東京オリンピックの開催中の製造ですが、同じ製造月の個体が多く現存しています。たぶん、集中的に生産されたのでしょう。それほど昔ではない時期に修理を受けていまして、私の流儀ではないですけど、巻上げのロックが利かない以外は使えない状態ではありませんが、オーナーさんのご希望によりオーバーホールをします。観察するとヘリコイドネジの分離時に工具を滑らせています。と言うことは専用の工具を用意していない方の作業なのでしょう。

この頃はブライトフレームが蒸着ではなくシールの貼り付けになった頃ですが、端が剥離しています。画像では角の部分だけに見えますが横方向に剥離していて割れの部分から光線漏れが発生しています。シール式の場合は接着補修が可能ですが、光線漏れは救えませんので遮光マスクを貼っておきます。また、対物レンズの接着が強すぎて、分離時に端が欠けてしまいました。シボ革の接着でも感じることですが、自分がこのカメラの最終修理者ではなく、将来再び再剥離をする可能性があるわけですから、少しでもダメージを少なくするため接着は必要にして最弱で良いのです。その辺りのことが理解されていない修理者が多いように思います。

コパルではネジの緩み止めは白色のものが塗布されていますが、ネジを緩める前に緩み止めを溶かしているシャツターを見たことがありません。当然ネジのスリ割りは痛むわけです。

 

シャッターは特に問題なく作動していますが全て分解洗浄で再組立をして行きます。

 

 

シャッター羽根を置いて洗浄したハウジングを被せます。

 

 

この頃から塗装の下地のプライマーが灰色のものが使われ出しました。経験的にこのプライマーの個体はひどい塗膜の剥離は少ないように思います。まぁ、そんな気がする程度ですが・・

 

では、本体を組み立てて行きます。

 

 

シャッターを搭載しました。体調が辛いので今日はここまでにします。

 

 

「続き希望」を押してくださる方が多いのですが、久しぶりに買い物に出ましたが体力が無く、帰宅後寝込んでしまい作業の画像を撮影していません。すみません。レンズですけどね、後玉の固定ナットのスリ割りが痛んでいますので分解清掃をされています。レンズを見るとたぶんコーティングは無くなっていると思います。しかし、バルサム黄変は感じませんね。前回の作業をされた方も出来るところまではされたようです。軽くクリーニングに留めておきます。

巻上げダイヤルカバーはEEのグレーのものが付いています。以前は複製を作っていましたが、現在は需要が少ないのでストックしていません。しかし、実用では問題は無く、グレー色でもそれほど違和感もないなぁと思いました。(取り付けたことが無かったので) 最近は3Dプリンターの活用も選択肢としてありますが、勉強しなければ・・

内部は非常にきれいになっています。

 

 

製造を昭和39年10月とお書きしましたが、正確にはコパルでのシャッターユニット製造が昭和39年10月で、製品完成は1964年11月でした。(コパルは元号、オリンパスは西暦表記)

 

因みにこの頃のデータを現用ノートから拾ってみますと・・

     コパル完成   オリンパス完成

#10204X    昭和39.09        1964-09

#10205X       昭和39.10                  1964-10

#10330X       昭和39.10        1964-10

#10498X       昭和39.10                   1964-11

#10673X       昭和39.10                   1964-11

#11656X       昭和40.02              1965-03

#11804X       昭和40.03                    1965-03

すべてのノートを調べればもっと正確なデータを表記することは出来ますが、大よその傾向はお分かり頂けるかと思います。尚、シリアル№は必ず生産順とはなっていません。あるロットの範囲で前後します。例えばトップカバーの塗装に傷を付けた場合、不良廃棄ではなく、塗装工程に戻されて剥離、再塗装となって再びラインに戻されますので、時間的な差によりシリアル№が前後することはあるのです。

このデータからは1964年9.10.11月に生産があり、翌年1965年2月に生産が再開されたとも読めますが、正確には全てのデータを集計する必要があります。また、途中でシャッターユニットを交換されている個体もありますので、必ずしも整合性のあるデータにはなりません。

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ローライ35系の巻

2022年03月13日 14時30分00秒 | ブログ

昨日は都内の病院に定期健診で行ってました。コロナ期ではあっても、最近は休日でも電車内は混んでいます。クラカメブームの頃は必ず新宿まで座って行けたのに・・

これは+ネジなのでシンガポール製の個体ですが、ファインダー下の地板を留めるネジがネジ〇カ状態でした。+ネジの頃になると電動工具で締めますから、トルクが過大だとダイカスト側のネジ山を壊してしまうのです。この作業者は、そのまま知らないことにして組んだと言うこと。

ローライ35はM1.4ネジが使われているので、ネジ山が弱いですね。M1.7でタップを切って締めておきます。

 

ローライ35はシューが下面にあるので、レールを変形させている個体が多くあります。これは修正をしておきます。

 

これはローライ35Sですが、沈胴のスライドが緩い個体のフェルト調整をするのは非常に面倒ですね。まず、シャッターユニットを分離するのが大変。チューブ先端のリングも取り外す必要があります。

 

これはローライ35。構造の違いがお分かりいただけますでしょうか。

 

 

樹脂の巻上げギヤが強度不足で破損する個体がありますが、世の中にはスキルのある方はいらっしゃるもので、真鍮のギヤと樹脂のカムを自作されているようです。上はローライ純正の部品で、下が製作品です。リターンバネの掛かりなどは樹脂製のバネを使用するため、それに合わせたギヤ加工がされています。

加工公差の問題か、この個体の軸にはギヤの内径が小さく挿入はきつく回転抵抗があります。

 

問題はギヤとカムを連結するキー(溝)の精度か、巻上げギヤの噛み合いが正規の位置でロックが掛からない時があります。噛み合いの調整で使います。ギヤ破損をした個体の修理用として意味のあるスペシャル部品だと思います。

 

使い込まれた個体ではレンズ内にチリの混入は構造上避けられません。分解清掃をして行きます。

 

オーハーホールを終えたシャッターユニットをチューブにセットします。

 

 

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