今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

久々正規修理のPEN-FTの巻

2022年08月31日 10時50分00秒 | ブログ

【業務連絡】PEN-FTのセルフタイマーについてメールを頂きました方。返信メールが戻って来てしまいます。

最近、中古カメラ店様からの限定修理以外にPEN-FTのオーバーホールご依頼が減っています。需要が無いのであればオリジナルで製作しているハーフミラーも作らなくても良いですかね? 丁度在庫が少なくなって次ロットは手配中ですが、年々製作コストも上昇していますので資金負担も多いので、今後は製作するかを検討しなくてはいけない時期に来ました。

で、オーバーホールご希望のPEN-FT #2764XXが来ました。27万台ですから一通りのユニット変更は終わっている頃の個体ですが、30万台以降の個体に比べて少し古いのでハーフミラーや露出計の信頼性などが落ちている頃です。付属の38mmはかなり曇っていますので清掃が必要です。

作動は特に問題はないと思いますが、フィルムカウンターの復帰が弱いですね。こういうところに製造の古さが出るのです。

 

中古店さんの管理シールですかね? 剥がしても良いのかな?? 接眼アイビースは両耳が無くなっている状態ですが、オーナーさんのご希望であえて交換はしません。

 

では、いつものようにボディーの洗浄からモルト貼り、スプール軸、スプロケット軸を取付けて行きます。27万台だと電池室からのリード線の硬化、腐食が目立つ頃ですのでリード線は新品に作り直します。

 

シャッターユニットを分解洗浄して点検しています。プーリーを留めるナットは緩み止め塗布のダブルナットですが、それでも緩んでいる個体があって、前面のコントロールレバーが緩んで変速できない状態となっているものもあります。

使用は少ないと思いましたが、意外にチャージギヤの軸に摩耗が進んでいました。もう少し摩耗すると2回巻き上げになりますね。潤滑が切れるとすぐに摩耗が始まります。

 

今回は再使用で。シャッターユニットと前板関係を完成させてドッキングします。

 

 

ファインダー本体のレンズの清掃とモルトの貼り替えを終えて組み立てます。

 

 

ハーフミラーの腐食は少ないように見えますが、光を透過してみると、かなりメッキが薄くなっていますので交換しました。

 

ほぼ組み立て終了。これから露出計の調整やピント調整をします。

 

 

洗浄したフィルムカウンター(ギヤ)は組立の最後で取り付けます。メーターとレバーカバーを接着します。その他、セルフタイマーのチャージレバーが巻き上げ最大から戻る傾向にありましたので洗浄注油をしてあります。

 

底部はこんな感じ。電池室の位置を調整して洗浄したアンダーカバーを取り付けます。

 

 

付属の38mmは後期型の製品で、それ以前の製品とは内部の設計が異なり部品の互換はありません。私的には分解しずらくなったレンズです。製造が新しい割には後群レンズの曇りが激しいです。

 

では、分解をして本体、レンズを清掃して行きます。

 

 

後群の前側のレンズが汚れていますね。幸い新しい?せいで、コーティングの剥離はありませんでした。

 

チャージギヤ軸に摩耗がありますが、他は良好な個体でした。チャージ軸はこのカメラの持病でして、普及品クラスの設計では材質も含めてきびしいところなんだろうと思います。ローライ35のように交換可能なギヤ側を敢えて強度を落として作り、本体側にダメージを与えないような設計だったら良かったとか思いますが、素人には分からない問題が有ってのことでしょう。最悪はギヤシャフト地板ごと交換することになりますね。

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しばらくPEN系のメンテナンスの巻

2022年08月30日 20時50分35秒 | ブログ

今日は買い物に行こうと駐車場の車に行くとドアも開かない。あちゃ、またやってしまいました。最近の車はドアの開閉以外でもルームランプが点くので勘違いをして点灯したままだったようです。お陰て蒸し暑いのに自転車でバッテリーを運んで来て目下充電中です。で、作業の方は、しばらく販売用のPEN系のメンテナンスをします。まず、PEN-D3 #3607XXと後期型の個体をオーバーホールします。ELシールが貼られていますけどELの文字は消えています。

露出メーターはボタンを押していると動く時もありましたが現在は動かない状態。これはCdsの問題ではなく、たぶんマイクロスイッチの接点関係の不具合と見た。

 

過去の分解ですでにマイクロスイッチを留めるネジが外された形跡がありました。配線の半田が外れていますけど、メーターの動作不良でスイッチを疑ったのに断線に気が付かなかったのか、それとも半田付けできなかったのか?確かに細い銅の単線なので半田付けはしにくいです。

はい、動きましたね。「メーターが動かない場合は作業中止」のご指示だったのでホッとしました。それでは他のオーバーホールをして行きます。

 

フィルター枠に打痕があったんですね。化粧プレートが抜けるか?

 

 

後期型は駒数ギヤが樹脂になっていますが、前回の分解時にネジ山が壊れて軸に固定されず回転してしまいます。そもそも、工場でねじ込んだ時にすでにネジ山は半分壊れていて、前回の分解時に緩めてからまた締めたので完全にネジ山がバ〇になったのです。元々は真鍮製の部品ですが、コストダウンのために樹脂製に変更されたようですが、同じ寸法で真鍮と同じ強度が出る訳がありません。工場での組立分1回持てば良いというところでしょう。

このバネは違います。紛失して適当なバネで組んであります。

 

 

結局、車にバッテリーを載せてターミナルを繋いだら。セキュリティーのクラクションが大音量で鳴り出して止まりません。ドアの開錠をキーで行ったのでセキュリティーが反応したようです。イグニッションONでやっとキャンセルが出来ました。昔の車の方がシンプルで良かった・・で、未分解と思われた個体でしたが、シャッターユニットも分解を受けていました。ヘリコイドグリスが抜けていましたので入れ換えてあります。

メーター窓は一度外れてゴム系接着剤で留められていましたがクリーニング中に外れました。あまり手を掛けたくなかったのですが、古い接着剤を取り除いて純正と同じエポキシ接着をします。

 

D3完了。次はEE-2のファインダー清掃とモルト交換。EE-2は裏蓋蝶番式なので、モルトを貼ってあるところも多く結構手間な作業です。

 

本体側は上下の溝にモルトを貼って側面と裏蓋にもモルトがあります。

 

 

これはPEN-Fですが、意外にも未分解機でした。ファインダーの清掃のみの限定修理です。

 

意外に全反射ミラーは腐食も無くきれいで、持病のプリズムにも腐食はありません。接眼プリズムの清掃やモルトも交換します。

 

清掃をした接眼プリズムをセットします。

 

 

これは別のPEN-Fですけど、私は基本的には限定修理は責任が負えないのでオーバーホールでお受けしたいのですが、中古店様は限定修理にしたいわけです。「ファインダーの清掃」でお受けしてもモルトはやり直さなければ劣化したモルトがプリズムやスクリーンに付着して「汚れ」となって見えてしまうので交換しないわけにも行きません。

このように全てのモルトをやり直します。

 

 

今回はPEN-FTを3台ほど限定修理しています。ハーフミラーは交換する必要があります。

 

作業中にボトムキャップの接着が剥がれて来ることは良くあります。

 

 

この個体はシンクロ接点のカシメが外れています。接着で外れないようにしておきます。

 

このFTブラックはじつは疑念があります。ご依頼は「ファインダーの清掃」ですが、メーターの針があるところで固着します。点検すると、すでに過去にピポットの緩み止めを溶かされていじられています。

 

不調の原因はピポット調整の不良、ヒゲゼンマイの接触、帯電など考えられます。何とかピポットで調整を取ります。

 

そもそもこの個体は31万台のカバーがついていますが、そのカバーはリペイントされたものです。セルフタイマーのリンケージは31万台のものではありません。20万台付近です。

 

セルフタイマーを外そうとしてドライバーでマウント側面を削っています。31万台ですとネジ孔が右上に移動しているのでマウントを外さなくても良いですが、この個体の本体は20万台付近のものでしょう。

 

リペイントはオリジナルより厚めに塗られていますが非常に上手です。ハーフミラーは交換。

 

セルフタイマーレバーが下がっています。調整ネジが緩んだ形跡はありませんので、たぶん、他の個体から移植してたものでしょう。

 

セルフボタンのネジが削られて接着で留まっていました。前期までのネジ規格と中期以降のネジ規格は異なります。それを無理に組み合わせているということ。

 

まぁ、その他に、裏蓋を見ると極初期の11万台付近の部品が使われています。色々な部品の寄せ集めで作った個体でしょう。限定修理ではここら辺までしか手を入れることが出来ません。

 

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撮影中に分解した25mm f4の巻

2022年08月23日 10時20分00秒 | ブログ

PEN用ズイコーレンズの25mm f4 ですが、この状態で来ました。なんでも撮影中にヘリコイドが抜けて分解してしまったとのことです。え~、ピントリングが緩んでいたのかな? 抜ける前に気がつこうね。で、ヘリコイドが抜けてしまったレンズは非常に厄介です。

ははあ、ヘリコイドガイドが抜けていますね。やはりピントリングのイモネジが緩んでいたのでしょう。ご自身でもねじ込もうとされたとのことですが入らなかったとのことです。ヘリコイドネジの終端は非常に繊細に出来ていまして、無理にねじ込もうとするとネジ端の変形が起きて二度と組みたたなくなります。

ここまでかなりの時間が経ちました。ヘリコイドは6条の多条ネジですので、ねじ込み位置はどこでも良いわけではありません。組み立てても∞が来ません。無限位置でのネジの出張位置を確認しながら何度か組み直して正しいねじ込み位置を見つけます。

仮組したレンズをカメラに装着して∞を見ます。位置は合っています。それでは再度分解をしてホコリが混入したレンズを清掃して行きます。

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まぁまぁのPEN-Wの巻

2022年08月21日 18時15分00秒 | ブログ

かなり昔に作って使っていた電池アダプターが見当たらなくなったので作りました。MR-9型のアルカリ電池の廃物利用です。SR(LR)44のボタン電池がスムーズに挿入出来て、なおかつ、電池を下向きにしても簡単には電池が落下しないという微妙な寸法に孔を拡大して行きます。

ボタン電池をセットしたところ。カメラによっては少し引っ込み過ぎの場合がありますが、その時はワッシャーを1枚先に入れてかさ上げをします。

 

現存カメラの露出計は感度が低下気味ですので、敢えて電圧変換はせず、1.5Vのままで使用した方が結果が良い場合もあります。自作される方は自己責任で。

 

#1178XXは外観の塗装も自然劣化のそれで、ボツボツのような劣化は無い良い個体です。

 

 

レンズは曇りはありますが軽微な部類。シャッターは全体的に遅く、1/8が止まります。(画像)ファインダーは曇りが大きい。

 

トップカバーを分離しようとネジをすべて外したのにカバーが外れない。やっと外してみると・・巻上げダイヤルカバーがコテコテに接着されています。取付けネジ部の両側が割れたためにボディーに接着をしてしまったということ。これは分離するとバラバラになってしまいます。しかし、古いモルトの除去と新しいモルトの接着がやりずらい・・

このコパルシャッターは弱いバネ1本で作動しているため、フリクションが大きくなると止まってしまいます。よって、極力フリクションを取り除く考え方で組んでいます。

 

製造されたままのシャッターはスローガバナーのガンギとアンクルの動きが悪く止まりの原因になります。

 

しかし、摩耗の少ない素性の良いシャッターでした。本体に組み込みます。

 

 

例のダイヤルカバーですが、接着勝利は良いとして、破断面が正確に密着しておらず、隙間が空いた状態でダイカスト本体に接着されています。これを分離すると二度と組めなくなるので、今回はそのままとします。決して私の仕業ではありません。中央部分にダイカスト本体との隙間が見えますね。正規の位置では隙間は空きません。

レンズを分離して清掃をしたファインダーを本体に取り付けます。

 

 

レンズは良い方です。状態の悪いものは画像の後玉が曇っています。PEN-Sに比べてPEN-Wの絞りのクリック感が弱いのはクリックを作り出す方法が異なるからです。PEN-Wは画像の板バネ式ですので板バネの曲がりが弱くなるとクリック感が弱くなります。今回はワッシャーを共締めすることによってクリック感を強くします。

なかなか良いコンデションのPEN-W #1176XXでした。昭和40年3月コパルにてシャッター製造、1965年3月本体製造。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


きれいなPEN-D2の巻

2022年08月19日 17時50分00秒 | ブログ

最近、PEN-D2が集まってくるなぁ。D3は露出計は作動している個体が多いですが、D2は不具合のある個体が多い印象です。この個体は#1072XXで、外観やレンズの状態は良いですが、シャッターはやっと動いている状態でメーターの動きに問題があります。

針があるところへ来ると「カツッ」と止まってしまい、戻らない時があります。

 

 

すでに過去の分解で2つの調整抵抗のうち1つを取り去られていました。針が正常に動かない原因は長期の不動状態によりコイルのピポット部の腐食や摩耗などにより、針の動きが重くなっていることがあります。今回はピポットの当たり調整をして改善させました。

きれいな個体ですがレンズの分解歴はあります。のスリ割りが痛んでいて、親の仇のように固く締まっていました。シャッターは未分解です。

 

ヘリコイドグリスが流化してベトベトの状態でした。ダイカスト本体側にも流れています。このようにグリスが流れることはD系では珍しいことです。

 

ダイカストとカバー類を完全に洗浄して脱脂してあります。

 

 

では、スプロケット軸、スプール軸(電池室)から組み立てて行きます。

 

 

シャッターも殆ど使われていないので摩耗はありません。

 

 

D2は荒れている個体が多い印象ですが、この個体は露出メーターを除いて素晴らしい状態を保っていて、持病の後玉の曇りもない状態でした。シャッターはどの個体もO/Hが必要ですので欠点にはなりません。よって特に書くことも無く画像も撮ってありません。まだまだ、こんな個体もあるのだなぁということです。シャッター製造 昭和39年8月 本体製造 1964年9月 (第18回東京オリンピック開催の前月)

 

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